多様化するプレーヤーと事業モデル PHRサービス参入のチャンス

生涯にわたる個人の健康・医療に関するデータ、PHR(パーソナルヘルスレコード)を活用したサービスにさまざまな業界からの新規参入が相次ぎ、ビジネスモデルも多様化している。2023年度には経済産業省の主導で業界団体が設立され、ガイドラインや自主ルール整備が行われる。

PHRサービスの新規参入が加速
ビジネスモデルも多様化

コロナ禍に伴う健康意識の高まりやスマートフォン・ウェアラブルデバイス等の普及により、デジタルヘルスへの注目が世界的に高まっている。デジタルヘルスの世界市場規模は2024年にかけて年率8%の成長が見込まれているが、中でも期待されているのがPHR(パーソナルヘルスレコード)を活用したサービスだ。

PHRとは、生涯にわたる個人の健康・医療に関するデータと、そのデータを管理し本人の意思のもと活用する仕組みのことを指す。PHRには健診・検診情報や予防接種歴、薬剤情報、検査結果等診療関連情報に加えて、個人が自ら日々測定するバイタル等も含まれる。

日本では、政府がPHR活用のための基盤整備を進めており、マイナポータルからさまざまな健康・医療情報が閲覧できるよう機能拡充が進められている。民間PHRサービスのさらなる活用に向けては検診・レセプト・電子カルテ(EHR)などの公的な医療・健康情報との連携が不可欠であるため、2021年4月には総務・厚労・経産の3省庁が「民間PHR事業者による健診等情報の取り扱いに関する基本指針」を策定した。同方針における工程表にもとづき、今後は官民が連携したより高いサービス水準を目指すガイドラインの策定や、当該ガイドラインの遵守状況を認定する仕組みの整備も行われる予定だ。

これを事業機会と捉え、製薬・医療やITだけでなく、健康食品やフィットネス、飲食、通信、流通小売、美容、保険、電力ガス、警備、銀行などの多くの業種・業態がPHRサービスへ参入している。健康管理や栄養・ダイエット、女性・妊婦向け体調管理などのほか、保険業界では健康増進活動による保険料の割引などの特典付与、流通小売では食事情報(購買履歴分析)による健康増進とマーケティングなどのPHRサービス事例がある。データの保管・表示だけでなく、疾病リスク等を分析・判断したり、受診勧奨や行動変容などをAI等がアドバイスする、医師等の専門家からアドバイスを受けられるなど、サービス内容も多様化している。

また、PHRサービスのビジネスモデルも、生活者を対象としたBtoCだけでなく、企業が健康経営推進のために導入するBtoBtoCモデルや、地方公共団体が住民の保健指導等のために導入するBtoGtoCモデルへと広がっている。多様な業種業界に、PHRサービスビジネスに関わる余地が生まれている。

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