近江鉄道 民間鉄道初の「上下分離」で事業再生を目指す

多くの地域で交通インフラの継続が課題になっている。インフラの維持・管理、運転手不足など、少子高齢化を背景にさまざまな問題が絡みあい、複雑化している。そのなかで近江鉄道は民間鉄道初の公有民営「上下分離」に踏み切った。実施から2か月が経過した現状と、今後の展望を聞く。

飯田 則昭(近江鉄道株式会社 代表取締役社長)

廃止の危機を乗り越え
事業再生の道へ

滋賀県東部を南北に走る延長約60キロメートルの鉄道線「近江鉄道」。1898年(明治31年)の開業以来、地元民からは走行音に由来する「ガチャコン電車」の愛称で親しまれてきた。

利用者数のピークは1967年度の1126万人。以降、道路網の整備と自家用車の普及などにより減少し、1980年代は500万人を下回り、2002年度には369万人にまで落ち込んだ。1994年からは営業赤字を計上し、存続の危機を迎えるなかで、国や自治体からの財政支援を受けるなどして、再生に取り組んできた。

だが、根本的な解決には至らず、2016年に近江鉄道は県に対して「鉄道事業の継続が困難」と協議を要請。その後、県と沿線10市町により「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会(以下、法定協議会)」が設置され、廃止も含めた議論の末、2020年に存続が決定する。

存続のために法定協議会は2023年に「一般社団法人近江鉄道線管理機構(以下、管理機構)」を設立し、「鉄道事業再構築実施計画」を策定。期間は2034年3月末までの10年間で、内容は公有民営による「上下分離」や、インフラの修繕計画などが盛り込まれた。

上下分離とは、鉄道の運行を担う主体と、鉄道インフラの維持管理を担う主体を別の者とする仕組みを指す。近江鉄道のケースでは、同社が運行を担い、管理機構がインフラの維持管理を担当する。今年4月からいよいよ民間鉄道会社にとって初となる上下分離による運営がスタートした。

新生近江鉄道へ向けて、4月6日に行われた「出発式典」

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