苅部農園 地産地消を目指す都市農業を実践

横浜市の苅部農園は直売所「FRESCO(フレスコ)」で収穫した野菜や果物を当日中に販売し、地産地消を目指す都市農業を実践。さらにオリジナル品種の開発や「百姓塾」「農業塾」を通じ、大産地に負けないブランドづくりや、減少が続く就農者の育成にも取り組んでいる。

苅部 博之(苅部農園 代表)

江戸時代から続く農家の
13代目が直面した産地の壁

横浜市中央部の保土ケ谷区にある苅部農園は江戸時代から続く農家で、約3haの農地で多品種少量栽培をしている。年間の栽培品目は野菜が約100種類、果樹が約10種類に上る。苅部農園13代目である代表の苅部博之氏は「私自身は次男でしたか、小学校の頃から家業を継いで農業をやりたいという夢がありました」と振り返る。このため、大学は農学部に進学し、卒業後は住宅メーカー勤務を経て1996年に家業を継いだ。

横浜市保土ヶ谷区にある苅部農園

「苅部農園は元々キャベツをメインに、ネギやジャガイモなどを市場に出荷する農家でした。18年前に亡くなった父は市場で値付けの基準となる『値頭(ねがしら)』を務めるほど優秀な生産者で、父の野菜は鮮度も品質も良く、市場で信頼されていました。しかし、市場では大産地のブランド野菜と比べて、かなり安い価格でしか売れませんでした」

例えば、夏から秋のキャベツでは群馬県嬬恋村が全国一の出荷量を誇る大産地だ。このため、横浜産のキャベツは嬬恋村での出荷が終わる頃に出荷できるよう、時期をずらして栽培される。これによって時期が終わりに近づいた大産地のキャベツよりも鮮度が高く品質も良いものを出荷できるが、市場での価格は大産地のキャベツの半値にしかならなかった。

「横浜産の野菜には大産地のようなブランド力がないだけでなく、生産量が少なく安定供給しにくいというデメリットもあります。横浜という地名は全国的に有名でも農業や野菜では知名度が低いので負けてしまうのです。ですから、横浜でトップ農家になっても大産地と同じことをやっていては勝てないと思い、何か違うやり方ができないかと考えました」

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