時事テーマから斬る自治体経営 「空き家利活用」の注意点
人口減少に伴って空き家が増加し、2023年時点での全国の空き家は約900万戸にのぼる。各自治体は空き家対策に頭を痛めており、その整備・活用のために条例を定めたり、空き家を移住・定住人口増加に活かせないか検討するなど、様々な対策を進めている。空き家利活用における注意点とは何だろうか。
移住・定住の取組を進めようとすると、自治体職員から「空き家を利活用して定住人口を増やす」という発言がある。あるいは、地域活性化を検討する際に「空き店舗を使うことで交流人口の創出を目指す」という指摘も聞かれる。個人的には、私有財産の空き家や空き店舗を勝手に利活用しようとするところに(あるいは利活用できると思っているところに)、自治体の傲慢さや独善性を感じてしまう(言い過ぎかもしれない)。
筆者は、以前の職場で「空き家」を対象とし、調査や実践的な活動に取り組んだ。しかし、筆者の能力のなさのため、成果をあげることはできなかった。今回は、筆者の経験を踏まえて、空き家利活用の注意点に言及する(空き店舗を対象とした実践活動の経験はない。本稿は空き家が中心である)。
空き家の実態
簡単に空き家の総数を確認する。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で空き家は約900万戸となっている。前回(2018年)調査が約849万戸であったため、51万戸増加したことになる。2023年の総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%である。1993年から2023年までの30年間で約2倍に増加し、単純に計算すると、7.2戸に1戸が空き家となる。
筆者は都心郊外で生活しているが、駅近に住んでいる。大型開発が進んでおり、空き家は見られない(見つけられていない)。筆者の実家は、同駅から15分程度の位置にある。そこでは空き家が見られる。筆者の住む駅周辺は人口が増加傾向にある。それでも少し歩くと空き家が散見される。先に「7.2戸に1戸が空き家」と記したが、感覚的に実感している。筆者が住む地域は、たまたま大型マンション等の開発があるが、地方都市は共同住宅の建築は少ない。そうなると、空き家に住民が入ってくれなければ、人口が増えることはない。
自治体は空き家を放置しているのではなく、多様な事業を展開してきた(表)。表以外にも、空き家に関する支援制度や相談窓口などを集約したポータルサイトを開設した自治体も多い。また、空き家を利活用し、無料で滞在できるお試し移住体験事業を実施する自治体も見られる。
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