ラストワンマイルの課題解決 買物お届けから狭商圏共同物流を実現

物流業界におけるドライバー不足は今後さらに深刻になると見られ、生産性の向上が必須になっている。ウィルポートは、複数の事業者がドライバーをシェアする「狭商圏共同物流」を実現するプラットフォームを開発。消費者、店舗、ドライバーの三方にメリットがある仕組みを作ろうとしている。

藤原 康則(ウィルポート 代表取締役社長)

ウィルポートは、地域に根ざした配送サービスを提供する物流企業として広島で創業した。荷主から預かった荷物を配達する仕事、中でもスーパーやドラッグストアで顧客が購入した商品を、自宅まで即日配送するサービスで、利用者を増やしてきた。その効率化に向け、再配達を不要にする宅配ボックスなども開発した。そして2023年1月には、ドライバーが荷物を効率的に配送するためのITプラットフォームの提供を始めている。

多種多様な荷物の
集荷・配送情報を一元管理

「ウィルポートは荷物を各家庭にお届けする、ラストワンマイルの配送事業に特化してきました。しかしドライバー不足などの課題が放置されたままでは、『家までものが届く』という現在の環境が脅かされることは目に見えており、業界をDXによって変革していくしかないと考えました」と同社社長の藤原康則氏は語る。

キーワードは狭商圏共同配送だ。日々、地域で多種多様な荷物が行きかう中で、荷主がそれぞれ専属のドライバーを抱え込んでいては効率が悪い。一定のエリアにおける様々な荷物の情報をひとまとめにすれば、ドライバーが仕事を分担して、無駄なく荷物を運べるのではないか、という発想だ。

これを形にしたのが、配送システムをITで一元管理する、独自のオープン型ラストワンマイル配送プラットフォーム「Polaris Navi」。地域の物流センターやスーパーマーケット、クリーニング店などの荷主はそれぞれ異なるシステム、ルールで荷物の集荷・配送情報を運用している。これを、ウィルポートのプラットフォームは一元的に受け入れられる。その情報をもとに、エリア内で荷物を運ぶドライバーに集荷・配送を割り当て、複数のポイントを短時間で効率よく回れる最適ルートも提示する。

「Polaris Navi」では最適化した配送経路をドライバーに提示。 一定エリアでの集配を集中的に行い、生産性向上を目指す

当日に購入され、即日配送する荷物の情報も逐一プラットフォームで受け入れ、そのつどドライバーに追加で情報を渡す。ドライバーは手持ちのスマホのアプリ上でそれらの情報を把握し、集荷、配送などを終えるたびにチェックボタンを押すことから、進捗状況もセンターで管理できるようになっている。

ドライバーの収益改善、売上の安定にも寄与

狭商圏共同配送は、都心部などの人口密集地であれば約5万世帯が暮らす地域を1エリアとするイメージだ。そこで発生する集荷・配送荷物の量に応じて、中小規模運送事業者、もしくは個人事業主のドライバーを割り当てる。郊外や地方については、人口密度と物量に合わせてエリアを決めていく。「当社のプラットフォームの強みは、異なる仕組みで動いている情報を一元的に管理できることに加え、自身が運送現場に入り配送を経験してきたエンジニアが自社開発をしたシステム。ドライバーの視線に立った使いやすさを実現しています」と藤原氏は語る。

現場のノウハウを最大限に生かすための機能については、各分野に強みを持つ他業種のパートナーとの連携も進めている。例えば、豊田通商がMaaSの実現に向け開発しているコネクティッドサービスと、パイオニアがカーナビで蓄積した知見を活かして構築したAIルート探索機能を掛け合わせた最適配送計画サービスもその1つ。リアルタイムの交通渋滞情報も考慮に入れることが可能で、ドライバーの走行距離・時間を削減し、配送プロセスの効率化や省人化が可能になる。2022年11月よりサービスを開始したところ、配達指定時間に対する正確性は94%以上で、総配送時間は約12%短縮、総配送距離は約20%削減することが確認できた。

重い荷物を持てない高齢者や、夫婦共働きで日中ゆっくり買い物に行けない若い世代も増えている。「Polaris Navi」は、そうした社会の変化により増える新たな宅配ニーズに応える一方で、ドライバーにとってのメリットも大きい。高密度・高効率で集荷・配送できるため時間単価が上がり、収益の安定化にも寄与する。「若い世代のドライバーが少ないことで将来のドライバー不足がさらに懸念されていますが、待遇が改善されれば、なりたいという人が増えていくと期待しています。ドライバー不足という社会課題にも向き合っていきたい」。

今後の「Polaris Navi」の進化の方向性の1つが需要予測だ。「1つのエリアに必要な運送車両の台数は気候の変化1つでも変動します。精度の高い予測をしたうえで何台のトラックを配置するのかを決められる仕組みを取り入れたいと思っています。いずれはその手前で、ドライバーの能力値も加味したうえで、どのエリアにどのドライバーを配置するかまでも決められるようにしたいと思っています」。

海外からのドライバー人材を受け入れるために多言語対応も検討中だ。それは近い将来Polaris Naviを海外展開していくための布石にもなる。今後実現するであろうドローン配送やロボット配送なども、Polaris Naviの中に取り込んでいく。

物流市場における
新たなビジネスの可能性

藤原氏は、物流市場における今後のビジネスチャンスについて、「物を動かすための情報をいかに扱うかというところで新規事業のチャンスがある」と考えている。例えば、どのエリアでどのような時期にどのようなものが売れるのか、サブスクリプションサービスやポイントサービスがどれほど活用されているかといった情報を把握することができれば、それに伴ってどれだけモノが動いていくのかがわかる。また、運送を担うドライバーの不足についても、例えばスーパーマーケットに車を用意しておき、副業として配送できる仕組みを作っておけば、周辺に住む主婦などを物流の新たな戦力にできるとみる。

他にも、高層マンションにおける宅配ボックス不足や、オートロックと「置き配」の共存など、ラストワンマイルの宅配では新しい課題も次々と生まれており、解決策が待たれている。

「物流業界ではこれまで、他社と共創することがほとんどありませんでした。2024年問題を目前にして、協力しないと乗り超えられないところに来ています。多くの配送業者が連携していく為のプラットフォームの提供を通じて、社会貢献と事業拡大を実現していきたい」と藤原氏は話した。