サーキュラーエコノミーの今 大阪府東大阪市の甲子化学工業が廃棄物を価値に変える挑戦
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年6月26日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

こんにちは、近畿経済産業局 環境・資源循環経済課です。
サーキュラーエコノミーの「いま」を知る ― Rethink Design Journalでは、現場の実践を通じ、サーキュラーエコノミー(CE)に関する取組を少しでも“自分ごと”として感じてもらえるような情報発信を目指しています。
Rethink Designとは、モノのつくり方や使い方を見直し(Rethink)、廃棄を前提としない形へと再設計(Design)することで、CEの実現を目指す考え方です。
本企画では、これまでに当局のホームページで紹介してきた実践事例におけるキーパーソンへのインタビューをお届けしています。今回は甲子化学工業株式会社 企画開発部部長 南原 徹也さんにお話を伺いました。
誕生秘話|取組はどこから始まったのか
同社は、もともとプラスチック製品の受託加工を主軸としてきた企業です。転機となったのは、新型コロナウイルス流行時の経験でした。医療現場で防護用品が不足するなか、自社で企画・設計から製品化、供給まで担ったことを通じて、「中小企業でも社会課題に向き合い、解決に貢献できる」という手応えを得たと言います。
一方で同時期、プラスチックは“環境負荷の象徴”として厳しい視線を向けられていました。社会を支えてきた素材が単純に否定される状況に違和感を抱くとともに、「このままでは、プラスチックの価値が正しく伝わらなくなってしまうのではないか」という危機感も芽生えました。そうした問題意識から、プラスチックの価値を改めて問い直し、共生のあり方を示したいという思いが生まれ、卵殻とプラスチックを組み合わせた素材開発など、SNSでプラスチックの魅力を投稿していました。「発信することで様々な人や情報とつながることができ、取組が生まれるきっかけになった」と南原さんは言います。
Rethink|何を見直したのか
従来、リサイクルされたプラスチックは、品質や見た目に対するネガティブな印象から用途が限られ、目立たない箇所で使われることが一般的でした。その結果、多くの廃プラスチックが焼却や埋立に回され、「廃棄物=価値が低いもの」という前提が固定化されていました。同社も当初はバイオプラスチックの活用を模索しましたが、コスト面から継続的な普及は難しいと判断し、「廃棄されたプラスチックを資源としてどう活かすか」という視点に立ち返ります。
さらに、SNSで得た情報をきっかけに北海道・猿払村を訪問し、山のように積み上がるホタテ貝殻を目の当たりにしました。再利用されていると思われていた資源が、現実には行き場を失っている。その光景は、プラスチックだけでなく、廃棄物全体の価値の見せ方を問い直す契機になりました。見直したのは、素材そのものだけでなく、「プラスチック=悪」、「リサイクル材は目立たない場所で使うもの」という社会的な常識でした。
Design|どう再設計したのか
その見直しを形にしたのが、廃プラスチックと廃棄ホタテ貝殻を組み合わせた新素材「SHELLTECH(シェルテック)」と、新素材を用いた防災・自転車用ヘルメット「HOTAMET(ホタメット)」です。SHELLTECHは、新品のプラスチックと比べて最大約36%のCO2排出量削減に寄与するとされています。ただし同社は、環境性能だけでは生活者に選ばれないと考えました。
そこで、素材開発にとどまらず、価値の伝え方そのものを再設計します。廃材を混ぜることで強度が下がる可能性や品質の安定化といった課題に対しては、試験環境を整備し、試作と検証を重ねることで対応しました。さらに、広告代理店やデザイン会社と企画段階から連携し、ホタテ貝を想起させる意匠や、素材の背景が伝わるストーリー設計を実装。「廃棄物由来だから選ばれにくい」ではなく、「背景ごと共感したくなる製品」へと転換した点に、この取組の特徴があります。
現在地|その後どう広がっているか
SHELLTECHやHOTAMETは、同社の事業構造にも変化をもたらしました。従来のBtoB中心の受託加工に加え、自社製品によるBtoC展開へと領域が広がっています。クラウドファンディングでの高い反響や問い合わせの増加は、認知度向上だけでなく収益機会の拡大にもつながりました。採用面でも応募者が大幅に増え、「共感を軸に人が集まる」という変化が起きています。さらに、大企業や異業種からも関心を集め、コンクリート用途など新たな分野への展開も進行中です。単なる取引関係にとどまらず、価値をともにつくる共創パートナーが広がっていることも、この実践の現在地といえます。
キーパーソンの想い
南原さんは、SHELLTECHやHOTAMETは単なる事業ではなく、自分にとってのライフワークだと語ります。原動力になっているのは、「中小企業でも社会課題に貢献できる」という実感と、挑戦のなかで生まれる面白さです。廃棄物だったものを組み合わせることで、新しい見た目や価値が生まれ、そこに共感した人たちとのつながりから、さらに次のアイデアが広がっていく。その連鎖自体が、この取組を続ける理由だと言います。今後も、相手にとっての利益も大切にしながら、共創を通じて社会課題に向き合っていく同社の挑戦は続きます。
まとめ|この取組が示すヒント
本事例が示しているのは、廃棄物の価値は素材そのものだけでなく、見せ方や伝え方によって変わるということです。CEの実践は、廃棄物を資源に変えるだけでなく、その価値を社会にどう届けるかまで含めて設計することで、事業機会として広がっていきます。
本事例が、CEを「自分ごと」として捉えるための、思考やアクションのヒントになれば幸いです。
○関連リンク
近畿経済産業局 CE実現に向けた取組 Rethink Designプロジェクト
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- 近畿経済産業局 公式note