受注処理時間を2時間から45分へ 現場起点の業務改善で実現したEC運営改革
(※本記事は「協働日本」に2026年7月9日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。
本連載では、協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのように意思決定し、プロジェクトを推進しているのかをインタビューを通じて伺っていきます。
記事サマリー
奈良県香芝市で名入れ・オリジナルガラス製品を手がける株式会社C’sが抱えていたのは、EC受注の増加に伴い、注文書処理が属人的かつ煩雑になっているという課題でした。名入れギフトならではの細かな注文情報を、事務担当が蛍光ペンや手書きメモで補いながら制作・出荷へつなぐ日々。協働プロとともに現場の業務フローを見直し、事務・制作・出荷それぞれが必要な情報を一目で確認できる帳票と発注管理アプリを整備したことで、事務処理時間は2時間から45分へ短縮されました。変わったのは作業時間だけではありません。空いた時間を顧客管理やEC改善、新たな商品開発に振り向けることで、“小さくても強い会社”を目指すための成長余地が広がり始めています。
この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。
今回は、名入れ・オリジナルガラス製品の制作・販売を手がける株式会社C’s 代表の尾野貴昭氏にお話を伺いました。
同社は、奈良県香芝市で「ガラス彫刻工房ONO」を運営し、記念日ギフトやウェディングギフト、送別・還暦祝いなど、人生の節目に寄り添う商品を届けてきました。近年では、プロ野球球団や人気アニメ・ゲーム作品との公式コラボグッズ、WBC公式グッズなども手がけ、少人数ながら全国に届くものづくりを続けています。
一方で、事業が広がるほどに、現場では名入れ商品ならではの複雑な受注業務が大きな負荷になっていました。商品名、色、彫刻する名前、メッセージ、記念日、包装、掛け紙、シール、配送情報。お客様ごとに異なる情報を正しく読み取り、制作・出荷へつなぐために、蛍光ペンや手書きメモに頼った運用が続いていたのです。
協働日本との取り組みで目指したのは、単にデジタルツールを入れることではありません。現場を見て、働く人の声を聞き、事務・制作・出荷それぞれに必要な情報を整理し、誰が見てもわかり、迷わず確認できる帳票と業務フローをつくることでした。
「AIだけでは、ここまで自社に合う仕組みにはならなかった」と尾野氏は語ります。その言葉には、現場に入り込み、対話を重ねながら、会社ごとの事情に合わせて一緒につくっていく“伴走”への実感が込められていました。
なぜ協働日本と取り組むことを決めたのか。現場にはどのような変化が生まれたのか。そして、これからどのような会社を目指していくのか。尾野氏に率直に語っていただきました。
(取材・文=郡司弘明)

名入れガラスギフトから公式コラボグッズまで。社員の「好き」を力に変える工房
──本日はよろしくお願いいたします。まずは、株式会社C’sさんの沿革と現在の事業について教えてください。
尾野貴昭氏(以下、尾野):よろしくお願いします。私たちは奈良県香芝市で、名入れやオリジナルのガラス製品を制作・販売している会社です。2012年7月に「ガラス彫刻工房ONO」として創業し、2017年3月に株式会社C’sを設立しました。
もともとは個人事業主として始めたのですが、転機になったのは阪神タイガースさんとのお仕事でした。阪神タイガースの承認グッズを扱うにあたって、個人事業主では取引が難しかったため、会社化することになりました。2017年5月から阪神タイガース承認グッズの販売を開始しています。
現在は、店舗、自社EC、楽天、Yahoo!、au PAYなどで販売しており、記念日やウェディング、送別、還暦祝いなどのギフト商品を中心に展開しています。加えて、プロ野球球団やアニメ、ゲーム作品とのコラボグッズ、WBC公式グッズ、豊臣兄弟の公式グッズなども制作してきました。
──公式グッズやコラボ商品も幅広く手がけていらっしゃいますね。
尾野:そうですね。これまでに、ゲームやアニメなどの人気コンテンツとのコラボ商品の制作や、公式ライセンスグッズの企画・製造を数多く手がけてきました。信楽焼フリーカップや珪藻土コースターをはじめ、記念グッズなど幅広い商品を展開してきました。
こうした仕事は、私がすべて企画しているというより、社員からの発案で始まることも多いんです。私は、社員が「やりたい」と言ったことは、できるだけやらせてあげたいと思っています。
たとえば、ある作品が好きな社員が「こういうグッズをつくりたい」と提案してくる。その人は作品への知識も深いし、何よりモチベーションが高い。私は技術的に作れるかどうかを判断しますが、作品の中身やファンが喜ぶポイントは、好きな社員の方が詳しいんです。
──社員の「好き」や「詳しさ」が、商品企画の力になっているのですね。
尾野:そう思います。発案した本人がやる気を持って進めるので、いい商品になりやすいんです。自分が好きなコンテンツを選んで、仕事を取ってきて、売上をつくる。成果が出れば評価にもつながる。そういう職場にしたいと思っています。
うちはパートさんも多く、スタッフは11名ほどです。子育て中の方も多く、午前中だけ働く方、午後から入る方、学校行事や家庭の事情で働き方が変わる方もいます。だからこそ、誰か一人にしかわからない仕事を減らし、引き継ぎしやすい仕組みにすることが大事だと感じていました。

“わかる人が見ればわかる注文書”に、成長の限界を感じていた
──今回、協働日本と一緒に取り組むことを決めたきっかけを教えてください。
尾野:一番大きかったのは、事務の業務効率化に課題を感じていたことです。
私はもともと技術屋なので、制作現場には口を出せます。作り方や品質については、自分でも改善案を出せるんです。でも、事務作業になると、「効率が悪い」「見にくい」とは言えても、ではどうすればいいのかという具体的な答えが自分の中にありませんでした。
制作現場には自分の経験や勘で踏み込める。一方で、受注処理や帳票の整理、事務から制作・出荷への情報の渡し方となると、自分だけでは最適な形が見えていなかったんです。そこは、ずっと気になっていました。
──奈良県の事業がきっかけだったとも伺っています。
尾野:はい。協働日本さんが受託した奈良県の事業について、様々な方からお声をかけていただいたことがきっかけです。実は、金融機関や商工団体などから複数お声がけをいただいていました。ただ、当時は忙しさもあり、最初の2件ほどはお断りしていたんです。
でも、締め切りの1週間ほど前に、もう一度声をかけてもらいました。そのときに、「これはやれということなのかな」と思いました。ちょうど、事務の業務効率化をどうにかしないといけないという思いがありましたし、タイミング的にも参加できそうな見通しが立った。そこで、応募することにしました。
──最初の相談では、どのような課題を伝えられたのでしょうか。
尾野:かなり赤裸々に、「うちは今こういう現状で困っています」と話しました。実際に工房にも来てもらって、当時使っていた受注書を見てもらいました。
当時の注文書は、わかっている人が見ればわかる資料でした。でも、新人が入ると一から教えなければいけない。制作担当、出荷担当、事務担当が、それぞれ必要な情報を探しながら仕事をしている状態でした。
たとえば、制作担当が必要なのは「何色の商品に、何を彫るのか」という情報です。出荷担当が必要なのは「誰に、いつ、どの包装で送るのか」という情報です。でも、その情報が住所や配送情報、注文者情報、名入れ内容などと一緒に、細かい文字で一枚の注文書に詰め込まれていました。
だから、事務担当が蛍光ペンで線を引き、手書きメモを加えて、制作や出荷へ回していたんです。これでは、慣れている人はできても、新人や別の担当者にはわかりにくい。誰が見てもわかる資料にしたい、ということを伝えました。
──その時点で、協働日本との取り組みに手応えはありましたか。
尾野:ありました。最初に話したときから、こちらの課題を理解する力が高いと感じました。
こちらが「こういうことで困っています」と話すと、その場で「それなら、こう整理できそうですね」「こういう形なら対応できるかもしれません」と、具体的な方向性を返してくれるんです。単に話を聞いて終わりではなく、目の前で一緒に解きほぐしてくれる感覚がありました。
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