「女性のライフステージを応援」手のぬくもりが伝わるサービスで社会課題を解決
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年7月15日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
女性の社会進出が進んだことを背景に、「女性のライフステージを応援する」との理念を掲げ、1999年に創業した福岡市の「テノ.コーポレーション」。ベビーシッターの派遣業から始まった同社は、全国で300か所以上の保育施設を運営する企業に成長した。創業者の池内比呂子社長は、「社会のニーズの変化に対応することで成長してきた」と振り返る。今後も女性の活躍を後押しする幅広いサービスを展開し、社会課題解決と企業の成長につなげる意欲を見せている。
お母さんが穏やかでいられるように
「おかえりなさい。きょうはおさんぽでたくさん歩いて、当番も頑張っていましたよ」。7月上旬の夕方、同社が運営する企業主導型保育園「テトテひらお」(福岡市)。お迎えに来た母親に、保育士が一日の様子を伝える。「よく歩いたんだね、えらいね」。母親も優しい笑顔で子どもに声をかけ、ベビーカーを押して帰路についた。
同社は運営する多くの保育所で、子どもが使う布団の持ち帰りと洗濯が不要になる「スタッキングベッド」や、おむつのサブスクリプションサービスの導入、保護者が保育士と語り合えるサロンの設置など、保護者の負担軽減を念頭に置いた取り組みを行っている。根底にあるのは、母親らが家庭でもストレスなく穏やかな気持ちで子どもに向き合えるようにする「24時間保育」の考え方だ。
池内社長は長崎県大村市出身。福岡県北九州市の短大を卒業後、輸入品販売会社に就職した。26歳で結婚し、子どもを授かることを望んで30歳で退社。数年間は専業主婦として過ごし、友人たちと故郷の郷土料理「大村寿司」を販売する弁当販売会社を設立した。1個380円の弁当を福岡空港の売店や工事現場に卸す日々を、「自分で作ったもので人を喜ばせることができる事業の面白さを知った」と振り返る。
起業から5年後、弁当販売で得た収益を元手に新しい事業を始めることを決めた。ヒントになったのは、会社勤めをしていた頃に見てきた結婚や妊娠を機に辞めていく同僚たちの姿。「女性であることの強みを生かして、女性を応援しよう」と、ベビーシッターの派遣や家事代行を手がける有限会社ドゥイットを1999年に創業した。
当時、ベビーシッターや家事代行を頼む人は経済的に余裕のある人に限られ、売上は伸び悩んだ。営業に出向いた幼稚園で、「園が終わった後の預かり保育はできないか」との相談を受けたことをきっかけに、預かり保育や保育所への保育士の派遣事業を開始し、2001年には自社運営の認可外保育施設も開設した。
ニーズの変化を捉えて全国展開
2000年代初頭、増え続ける保育ニーズに認可保育所だけでは応えきれないとして、東京都が、民間企業が開設する保育所に補助金を出す「認証保育所制度」を開始した。民間企業にも門戸が開かれるようになると、福岡県内でも企業内保育所や国立大学病院の院内保育所のニーズが高まり、運営を次々と受託した。2005年には「手のぬくもり」「手の愛情」を大切にしたいとの思いを込め、社名を「テノ.コーポレーション」に変更した。
保育所運営以外にも、学童保育の運営や保育士を育成する「テノ.スクール」、家事代行のハウスサービスなど事業を拡大して、10年には東京、15年には大阪に進出した。26年6月現在、同社が運営する保育所や学童保育などの施設は全国334か所に及ぶ。ほとんどの施設で保護者の負担軽減を最優先にした様々な取り組みを行う。「女性の支援」に重きを置いたトップの哲学は、子どもの視点を重視してきた現場の保育士らからは当初、戸惑いの声も上がったというが、池内社長は「徐々に共感が広がってきた」と手応えを感じている。
15年には純粋持ち株会社として「テノ.ホールディングス」を設立し、18年に上場を果たすと、親の介護に直面する女性にも支援の手を広げるため、M&Aなどを通じて介護施設の運営にも乗り出すなど、経営の多角化をさらに進めている。
もともと女性が多い職場であるため、男性従業員にも、育休取得や家庭参加を職場内で後押しする企業風土が定着しているという。池内社長は「女性を応援する企業が、男性従業員に『家庭を理由に早く帰るな』とは言えない」と笑う。
コンパクトシティ福岡から挑む「2030年目標」
テノ.コーポレーションは創業以来26期連続で増収を続けており、公表した長期計画「teno VISION 2030」では、2030年の連結売上高の目標を、24年のほぼ倍となる300億円に設定した。一方で、全国展開を進めつつも、足場は創業の地・福岡市に置く。「九州が好きだという思いもあるが、コンパクトシティである福岡市には、全国に共通する課題がある。課題解決につながるビジネスモデルをここで作り上げ、全国に展開していきたい」と力を込める。少子化が進む一方で、国のこども未来戦略によって行政の子育て支援策が手厚くなっていることを踏まえ、保育の質を高めるための英語や体操、食育の導入や、障害のある子どもに向けた放課後デイサービスなど、多様化するニーズを鋭く捉え、サービスの展開を続ける考えだ。
AI(人工知能)が業務効率化に資すると叫ばれる中、会社が抱えるのは機械には代えられないエッセンシャルワーカーたちだ。だからこそ、池内社長は従業員が自分の仕事に誇りを持ち、世の中から尊敬されることの重要性を実感しているという。座右の銘の「育つ育む」を胸に、企業のリーダーとしてまだまだ成長し、社員を育てていく。その先に見据えるのは「100年企業」だ。
【企業情報】
▽公式サイト https://www.teno.co.jp/ja/index.html▽代表者=代表取締役 池内比呂子▽従業員数=1764名(臨時雇用者数1278名(月平均))(2025年12月末時点)▽事業内容 認可保育施設の運営、認可外保育施設の運営および受託、放課後児童クラブの運営、児童発達支援、放課後などデイサービスの運営、企業主導型保育施設の運営▽創業=1999年7月
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