限りある資源を守り、未来を創る―。サーキュラーエコノミーの「輪」に加わろう

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年7月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

使い終わったものをゴミにせず、別のものに生まれ変わらせてグルグルと循環させていく――。「サーキュラーエコノミー(循環経済)」(CE)という新しい経済のしくみが、広がりつつあります。

CEを実現するためには、製品やサービスを提供する企業側の努力と共に、私たち生活者一人ひとりができることに取り組んでいくことが、重要なカギを握ります。今回は、地球環境への貢献だけでなく、産業のイノベーションや新しい価値を創り出す可能性を秘めるCEについて考えます。

サーキュラーエコノミーのイメージ

モノの流れを「一方通行」から「循環」へ

CEとは資源を効率的に循環させて、持続可能な社会の実現と経済成長を同時に目指すものです。わかりやすく言うと、製品を設計・生産する段階ではゴミを出さないようにして、使用後も回収・再利用・再資源化を進めることで、地球の資源を有効に使い続ける仕組みです。

では、これまでの経済の仕組みと何がどう違うのでしょうか。

原材料から製品を作り、利用して廃棄する――。こうしたかつての一方通行の仕組みは「リニアエコノミー(線型経済)」(LE)と呼ばれています。CEとLE。その違いを簡単に説明すると、次のように言えるでしょう。

【リニアエコノミー(LE)】

  • 原材料から製品を作り、利用して廃棄する
  • 「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」が前提

→地球の資源がいつかなくなり、ゴミが増え続ける

【サーキュラーエコノミー(CE)】

    • 新品の資源の投入量をできるだけ抑える
    • 再利用や再資源化によって価値を生み出す

    →資源を大切にでき、地球にも優しい

    「環境にも、くらしにもいい」しくみ

    「ゴミを再利用するなら、いままでのリサイクルと同じでは?」と思うかもしれません。

    資源を大切に使っていこうという考え方としては、「リデュース(Reduce、使用量を減らす)」「リユース(Reuse、製品などの再利用)」「リサイクル(Recycle、原材料として再利用)」の三つからなる「3R」がよく知られています。

    これまでの3Rは、ゴミとなる使い終わったものをどう減らすかに重点が置かれてきました。一方で、CEは、ものをつくる段階から使った後までを一体で考えることで、資源を循環させて新たな価値を生み出しながら、ゴミの排出を抑えることができます。

    「作る→使う→捨てる」の直線ではなく、「作る→使う→別のものに変身させる」という「輪」をつくっていくことをめざしているのです。

    また、「3R」は廃棄物対策、環境対策として企業や一般の人たちに行動を改めるよう促してきたのに対し、CEは、製品やサービスが、その「輪」の中で生産されること自体が価値を持ち、人々の幸福と経済成長を同時に達成することを目指しています。

    産学官の連携、法整備…。政府も推進

    政府もCEを推進していこうと、様々な政策を打ち出しています。CEに積極的に取り組む企業や大学などと国や地方自治体が連携していくため「サーキュラーパートナーズ」を設立。CEの実現にむけた事業に対して補助金を出すなどしています。

    2026年4月には、改正資源有効利用促進法が施行され、事業者に対する再生資源の利用計画策定・定期的な報告の義務づけや、シェアリングやものをくり返し使うサービス(CEコマース)についても、ルールづくりが進められています。

    プラスチック資源の循環目指す「ライオン」

    CEの実現に力を入れている企業の一つに、大手日用品メーカーの「ライオン」(本社:東京都台東区)があります。

    ライオンの国内ビジネスユニット戦略統括部の藤巻遥さんは、「ライオンの経営戦略にとって、CEは、持続的な企業価値の向上を実現するための中核的な戦略の一つとして位置づけられています」と話します。

    力を入れている取り組みが、プラスチックの資源循環です。2022年5月には「プラスチック環境宣言」を発表し、(1)使用するプラスチックを最小限にする(2)使用したプラスチックは全て回収して再生する――という二つの目標を達成することで、2050年に「循環し続けるプラスチック利用」を実現することを目指しています。

    具体的には、自社商品のパッケージに再生プラスチックを利用したり、詰め替えのできる製品を拡大することでプラスチックの使用量を減らしたり、リサイクルしやすい包装材料をつくるために、他社と連携して技術開発などを進めたりといったことに、取り組んでいます。

    こうした直接的な貢献と並行して進めているのが、自治体や同業あるいは異業種の企業とともに、生活者を巻き込んで展開している様々なリサイクル活動です。

    「ライオンの経営戦略において、CEは、持続的な企業価値の向上を実現するための中核的な戦略のうちの一つ」と話す藤巻さん
    「ライオンの経営戦略において、CEは、持続的な企業価値の向上を実現するための中核的な戦略のうちの一つ」と話す藤巻さん

    歯ブラシが定規やブロック、プランターに

    例えば、ライオンの主力商品の一つ歯ブラシ――。

    ライオンは事業所のある台東区、兵庫県明石市と共に、使い終わった歯ブラシを回収し、定規やプランター、玩具用ブロックなどに生まれ変わらせています。回収ボックスの側には、歯ブラシから生まれ変わったプランターに植えられた花々が置かれ、特に子どもたちが、リサイクルを進め、CEを実現することの意義を、一目で理解できるよう工夫されています。

    また、明石市では市内の「子育て支援センター」に、歯ブラシを再利用したブロック玩具が置かれ、子どもたちが楽しみながらCEを体感することができます。台東区では福祉施設に一部作業を委託、「回収ボックスから歯ブラシ以外の異物を取り除く作業を施設利用者の方にお願いしている」(藤巻さん)といいます。

    「経済価値と社会価値の両輪をしっかりと創出していきたい。歯ブラシをつくって終わりではなく、その先どうなるのかを意識して商品をつくっていく必要があります。また、サステナブルな商品の需要が拡大することで生まれる新たな市場の獲得も目指しています」

    ライオンの取り組みの意図について、藤巻さんはこう話します。

    上野動物園で開催された東京都歯科医師会主催のイベント、台東区役所に設置されている回収箱、UNIQLO浅草店内の回収コーナー
    左:上野動物園で開催された東京都歯科医師会主催のイベント、中央:台東区役所に設置されている回収箱、右:UNIQLO浅草店内の回収コーナー

    カギを握る「生活者」の参加

    CEを実現するには様々なハードルを乗り越えなければなりません。

    リサイクルの仕組みを整えても、回収に参加する人が少なくては意味がありません。CEの実現は、企業や自治体などの公的機関による取り組みだけでは不十分。生活者が主体的に参画することで初めて持続可能な仕組みとして成立するのです。そのためには、「プラスチックはリサイクルできる」ということをより多くの人々に知ってもらい、活動に参加してもらうことが大切になってきます。

    藤巻さんは、「社会全体で自然と参加できるような流れをつくるための意識づけが必要になる」と話します。

    まずは、身の回りの小さな取り組みから

    「日常の中でCEを体感する機会をつくることで、子どもたちに『自分たちは社会の一員なんだ』という意識を持ってほしい」と藤巻さんは話します。

    例えば、親子で外出する際には、必ずエコバッグを持参する。そして、買い物した商品は、一緒にエコバッグで持ち帰る。プラスチックはどんなものに使われていて、何曜日に捨てればいいのか、地元自治体のゴミ出しルールを、子どもたちと一緒に確認し、ルールに沿ったゴミ出しを実践する……。

    「プラスチックは私たちの生活にはなくてはならないもの。だからこそ、大切に使い、使い終わったら回収し、新しい製品に生まれ変わらせる工夫が大事です。そのためには、親子で一緒に考える機会を持ってほしいと思います」

    藤巻さんは、このように強調します。

    もうすぐ夏休み――。この夏は身の回りの小さな製品や当たり前と思っていた習慣に今一度スポットライトを当て、地球環境や資源、私たちの未来について、身の回りの小さな取り組みを通じて、親子で考えてみてはいかがでしょうか。経産省は「サーキュラーエコノミーをわかりやすく、行動しやすくするサイト」で一般の方に向けたCEに関する情報発信を行っています。

    【関連情報】
    サーキュラーエコノミー 経済産業省課長に聞く国家戦略と推進への取り組み

    ミエティ「今回のまとめ」vol.4
    ミエティとは

    元記事へのリンクはこちら

    METI Journal オンライン
    METI Journal オンライン