3社体制への移行で描く、スピード重視の生存戦略
従来のDXに潜む構造的な課題を打破し、10年かかる企業変革を1〜2年に圧縮する。2026年6月1日、株式会社Algomaticは3社体制へ移行した。同日、代表取締役CEOに就任した鴨居啓人氏は、体制移行の狙いを明かすとともに、大企業ほど時間を要する根本的な組織変革を、短期間で実現するための「ネオ組織」構想について語った。

従来型DXのスピード不足に対する危機感
株式会社Algomaticは、2023年4月に創業のスタートアップ企業だ。「AI革命で日本社会を変える」をビジョンに掲げ、大規模言語モデルをはじめとする生成AI技術を活用したサービス開発・提供を通じて、企業の「業務・組織・システム」の変革を支援。AI時代の新たな「企業OS」の構築を目指している。
大学では機械学習を研究し、技術がビジネスを変える瞬間に関心を持ち続けてきた鴨居氏。前職のアクセンチュアでは、データサイエンティストとして大企業の業務・組織改革を多く手がけるなかで、日本企業のDXが抱える構造的な課題への危機感を募らせていったという。
「大手企業であるほど、どうしても変革のスピードがゆっくりだと感じていました。毎年10%ずつの業務改善を積み重ねることはできても、企業そのものを抜本的に作り変えるような変革には至っていません」。
鴨居氏は、従来の日本企業におけるDXは、多額の予算を投じながらも変革スピードが緩やかであると指摘する。多くの企業がテクノロジーの導入を進める一方で、既存の組織体制には手をつけられず、部分最適な業務効率化の積み重ねに留まっているという。
その背景には、IT市場の構造的な課題がある、と鴨居氏は分析する。事業者にとっては、プロジェクトが長期化するほど、稼働ベースの報酬が積み重なり、安定した収益につながる。一方で、大企業側にも従来の業務慣行や組織構造を大きく変えたくないという本音がある。こうした両者の利害が暗黙のうちに一致していることこそが、本質的な変革を阻む最大の原因だという。こうしたもたれ合いを打破し、企業の変革を短期間で実現するパートナーとして、同社は挑戦をスタートさせた。
段階的な改善を積み重ねるだけでは、グローバル競争が加速する時代に日本企業は取り残されかねない。さらに鴨居氏は、生成AIの普及には「変革を実現するためのタイムリミットが存在する」と指摘する。当時の見立てについて、次のように語った。
「現在のAIブームの本質的な期間は、2024年あたりを起点とした5年程度だと考えています。それ以降は、AIと働くことが当たり前の世界になりますから」。
生成AIという「10年に一度の技術革新」が起きている今、10年かけてゆっくりと組織を変えている時間的な余裕はない。いかに変革期間を1〜2年へと圧縮し、実行に移せるか。そのスピードこそが、これからの企業の競争力、ひいては命運を左右すると鴨居氏は考えている。
3社体制への再編で挑む、BtoB戦略
生成AIの進化は、プロダクトのライセンスを販売する、従来のSaaSモデルの前提を揺るがしている。人工知能(AI)を活用してソフトウェア開発の各工程を効率化・自動化する新しい開発スタイルの台頭により、開発プロセスが劇的に高速化し、プロダクト自体の開発ハードルが下がったことで、ツール単体では差別化が困難なコモディティ化の時代が到来したからだ。
こうした変化を受け、同社は2026年6月に3社体制への移行を決断した。目指すのは、単に便利なツールを提供するベンダーではなく、企業の業務・組織・システムを一気通貫で変革する「企業OS」となること。その実現には、標準化されたプロダクトを提供するだけでなく、大企業が抱える経営課題に深く入り込むプロジェクト支援と、AIを融合させる体制が不可欠だという。
開発スピードが加速度的に高まる時代においては、プロダクトの機能そのものよりも、企業の業務に組み込み、利益へとつなげる「実装力」が競争優位性になると、鴨居氏は語る。
「多くの企業がAI活用に巨額の投資を行っていますが、肝心のPL(損益計算書)のコスト構造や人員配置は変わっていません。そのため、『AIに投資しているけれど利益は全然変わっていない。むしろコストが増えた』という問題が、この2〜3年で一気に表面化すると予測しています」。
同社の強みは、部分最適な効率化によって生じた人材をリスキリングし、より付加価値の高い領域へ再配置するグランドデザインを、プロダクトとコンサルティングを組み合わせて一貫して支援できる点にある。
「これからの時代に価値を生み出せるのは、プロダクト単体を提供する従来のSaaSモデルではなく、プロダクトと人による支援をスピード感を持って組み合わせるモデルです」と鴨居氏。
3社体制への再編は、そうした考えを実現するための組織戦略でもある。スピードを最大化し、クライアント企業の組織変革を本質的なレベルで支援する。「AI時代の企業OSをつくる」というビジョンの実現に向けた、大きな一歩となった。
次世代の組織モデルを体現する、「ネオ組織」戦略
一方で、「業務・組織・システム」のすべてを一度に変えようとすれば、現場からの反発は避けられない。こうした変革のボトルネックを突破するために同社が提唱するのが、既存組織の隣に、AIを前提とした数人規模の「ネオ組織」を立ち上げるという戦略である。
「もし今、事業をゼロから立ち上げるとしたら、どのような組織にするか。その問いに対する答えを、『ネオ組織』の中で純粋に形にしていくわけです」。
まずは小規模な組織でトライアンドエラーを繰り返し、リスクを抑えながら成功パターンを確立する。その上で、既存組織から徐々に人材を移行させたり、その仕組みを組織全体へ展開したりすることで、変革を着実に広げていくというアプローチだ。

このように企業の変革を支援する立場だからこそ、自らが次世代の組織モデルを体現していなければならない、と鴨居氏は考えている。自動化によって生まれた余力を、社内の変化に合わせてリスキリングし、成長領域へ戦略的に配置していく。そのモデルを自社で実践することが不可欠だという。AI業界の第一線を走る企業として、Algomaticは社内でもAIを積極的に活用し、社員一人ひとりの生産性を最大化する組織づくりを追求している。
「規模拡大に伴って単純に人を線形に増やしていくのではなく、1人当たりの売上にしっかりレバレッジを効かせられる組織を目指しています」と鴨居氏は力を込める。
さらに、クライアント企業の組織変革を支えるため、同社では「全員が変革のリーダーであること」を採用の軸に据える。AI時代は、昨日までの最先端が明日には古くなる世界だ。特定の技術や手法に固執するのではなく、「何を実現したいのか」という目的から逆算し、その時代に最適な手段を柔軟に選択し続ける。そして、自らも変化し続ける。そうしたマインドセットが欠かせないという。
「自分たち自身が変革できると信じていなければ、他社を変えることはできません」と鴨居氏は述べる。企業の変革を支援するだけでなく、自らも変わり続ける。その姿勢こそが、同社の考える「AI時代の企業OS」のあり方であり、未来の働き方のスタンダードを切り拓く原動力となっている。