北海道札幌市の農業資材老舗がDX支援へ スマート農業で100億円企業目前と環境再生型農業
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年6月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
農薬など農業資材の専門商社として創業109年を迎えた「サングリン太陽園」は、物販とコト売りの高付加価値化を目指し、ソリューション中心の営業展開を進めている。36年の実績を積み重ねた農業用ドローンの活用などスマート農業の現場実装を進めている。
北浜宏一社長は「私たちの歩みは常に北海道とともにある」と語り、DX推進を重視することで北海道農業が抱える高齢化や人手不足という課題に挑む。温室効果ガスの排出を抑えるJ-クレジットの普及支援などを通じ、経営ビジョンに掲げた「環境再生型農業」を推進する構えだ。中小企業庁の「100億円宣言」企業として、2026年12月期には売上高100億円の目標を達成できる見通しとなっており、持続的な成長を見据えている。
太陽と水と土は農業の基礎 社名に盛り込む
サングリン太陽園は1917年(大正6年)、北浜社長の祖父にあたる創業者が小樽市で医薬品・工業用薬品の営業を開始した。1927年に商号を「北斗農薬」と定めて農薬・防除器具の販売を始め、道内各地に出張所を開設して農業振興に取り組んだ。1967年に「太陽園農材株式会社」を設立し、1991年には現在の「株式会社サングリン太陽園」に改称した。併せてCI(企業イメージ確立戦略)の一環で、企業理念や行動指針を定めたという。
北浜社長は「それまでの理念と言えば五穀豊穣祈念ぐらい。社名の由来にもなった太陽と水と土は農業の基礎であり、この三つの要素を創業の精神として大事にしてきた」と振り返る。ロゴマークは、事業が深く根ざしている農業のイメージを「植物の種子」によって象徴的に表現した三つの円からなる。コーポレートカラーは青みを帯びた緑。「植物」「成長」「生命」を表現すると同時に、青の持つ「清澄」「空と水」「地球」といったイメージも併せ持つという。1982年に創刊した技術情報誌「太陽と水と土」は、現在年2回発行している。創刊から44年となり、すでに107号を数えた。
無人ヘリをいち早く扱う ドローンへ需要拡大
サングリン太陽園の事業は、農業用の資材供給(Supply)、営農支援(Support)、課題解決(Solution)が三本柱。資材供給には農薬、肥料、種子などがあり、営農支援では土壌分析、農業用フィルム加工などを手がける。課題解決においては、栽培試験、センサーによるデータ集積・活用、センシング技術の実証などが挙げられる。特にサングリン太陽園は1989年に北海道で初めて産業用無人ヘリコプターの販売を始めており、機体販売のほかに子会社「北日本スカイテック株式会社」による操縦者(オペレーター)の養成と機体整備を行ってきた。
また、道内各地で展開している無人航空機を使用した請負防除では、専門技術を持つオペレーターが圃場まで駆けつけている。水稲、畑作、果樹の薬剤散布だけでなく、種まきや施肥などにも用途が広がっており、農業現場におけるドローンの活用のニーズは着実に広がりを見せているという。
北浜社長は創業3代目にあたり、先代から1994年に社長職を引き継いだ。創業100年でグループ合算のグロス売上高100億円を目指そうと、中期経営計画「1002計画(2013~16年)」を掲げて達成した。引き続き「Fly to Future(2017~20年)」、「NEXT MORE(2021~24年)」を経て、現在進行中の「もっと一緒にRooted in Community(2025~27年)」と銘打った中期計画のもとで、北海道農業に根ざした事業拡大を続けている。
2020年に経済産業省の「地域未来牽引企業」に選定され、2025年には中小企業庁が主導する「100億宣言」企業に採択された。100億宣言とは、中小企業が飛躍的成長を遂げるために自ら「売上高100億円」という目標に取り組むことを宣言するものだ。サングリン太陽園の2025年12月期決算は、単体での売上高99億6300万円を計上。5年連続で増収を果たしており、2026年12月期には目標の100億円に達する見通しだ。
人手不足や気候変動……課題深刻、DXで突破を
国内最大の食料供給基地として、北海道では大規模かつ専業的な農業経営が展開されている。農林水産省が2026年3月にまとめた「北海道農業をめぐる事情」によると、北海道の耕地面積は全国の4分の1以上を占め、1経営体あたりの経営耕地面積は34.5ha(都府県の13.3倍)に上る。
農業経営体のうち法人の割合は14.5%(都府県は3.6%)と法人化が進んでおり、個人経営体のうち主業経営体の割合も61.8%(都府県は 21.3%)と専業化も際立っている。北海道の農業産出額は1兆3478億円で、全国で最も多い14.1%を占める。生産量についても生乳、たまねぎ、ばれいしょ、てんさい、小麦など多くの品目が1位。カロリーベースの食料自給率は213%(全国1位)と、日本の食料安全保障に重要な役割を担っている。
サングリン太陽園は、北海道農業の発展を願い、持続的な農業への貢献を使命としている。北浜社長は「規模拡大が進む北海道農業では、生産者の高齢化と人手不足はとりわけ深刻な課題。それに加えて、肥料や燃料など生産資材価格の高騰、気候変動による収量低下と品質リスクの増大など、農業を取り巻く変化は加速している」とみている。一方で、「近年の環境変化を単なる逆風ではなく、次の時代の農業を進めるための重要な転換点ととらえている」として、こうした課題を突破する手段として、DX実現による強靭な経営体質を構築する考えを示す。
2026年2月にはDX推進戦略(2026~28年)をまとめた。現在の経営ビジョンは「私たちはWell-beingな社会の形成に向け、環境再生型農業を推進します」。それを実現するためのDXビジョンとして、「デジタルで農業と地域をつなぎ、Well-beingな社会を共創する」としている。
環境再生型農業も推進 水田のメタン抑制を支援
北海道でスマート農業の推進を図る「スマート農業共同体(Smart Agri consortium 通称・SAc)」が2018年に設立され、サングリン太陽園は事務局として運営を担う。SAcは2025年に一般社団法人化され、参加法人は122社・団体、生産者は2030人に上る。担い手の減少と1戸あたりの生産面積が急速に拡大しており、スマート農業の現場実装への期待がますます高まる一方、農業による環境負荷の軽減も大きな課題となっている。
サングリン太陽園が経営ビジョンに掲げる環境再生型農業。一例として、国が運営する「J-クレジット」の申請を支援するための取り組みが挙げられる。具体的には水稲栽培において温室効果ガスのメタンの発生量を抑える「中干し期間の延長」だ。田んぼの水を抜く期間を従来より7日間長くすると水田から排出されるメタンが3割程度削減できることが確認され、J-クレジットの対象となった。
ただ、水位の記録や申請データの作成など手続きが煩雑だったため、新サービス「Greet(グリット)」を導入。水田に設置するセンサーによって測定されたデータを専用のスマートフォンアプリに連携させることで、申請書類が自動作成される。加えてSAcへの加入により、J-クレジット申請に関する各種サポートを受けられる体制を整えている。
「DX認定事業者」に 知名度やイメージ向上に期待
サングリン太陽園では、従業員のWell-beingを重視した働きやすい職場環境づくりにも取り組んでいる。物価上昇に負けない賃金水準を維持するため、過去2年間に年収ベースで約15%の賃上げを実施し、資格取得補助を通じて社員のスキルアップも支援している。業績という結果だけでなく、日々の業務プロセスや行動を数値化して評価する「行動評価」の導入を目指している。「誰に何回会って何をしたか」「キーマンへの接触回数」などについても日報データを基に可視化し、すぐに成果が出にくいスマート農業などへの取り組みを適切に評価し、やりがいにつなげる仕組みにする構想だ。
サングリン太陽園は2026年5月、経済産業省から「DX認定事業者」に認められた。認定企業は「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」とされ、公的な支援措置を受けられる。お墨付きが得られたことについて、北浜社長は「知名度やイメージの向上は企業PRになる。DX推進が優秀な人材の確保や育成にもつながればいい」と期待を込めている。
【企業情報】
▽公式サイト=https://sun-green.co.jp/ ▽代表者=北浜宏一社長 ▽従業員数=134名(2025年8月現在)▽資本金=8000万円 ▽創業=1917年(大正6年)
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