IoT機器のセキュリティ、JC-STARラベリング制度の「★」の数で見える化

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年7月10日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

外出先からスマートフォンで自宅のエアコンや洗濯機の電源を入れたり、ドアホンを押した来訪者のカメラ映像を確認したり──。インターネットに接続し、離れた場所からの操作や監視、データのやり取りなどを可能にするIoT(Internet of Things)機器は、生活を便利にするだけでなく、新しいサービスの創出や業務の効率化にもつながっている。その一方で、脆弱性を狙ったサイバー攻撃が増加傾向にあり、対策の強化や使う側のセキュリティ意識の向上が急務だ。

そこで、「どのIoT機器が安全か」を一目で判断できるよう、経済産業省が主導して2025年3月に設けられたのが「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」だ。セキュリティ水準に応じた要件(適合基準)への適合状況を、IoT製品に貼付されるラベルに表示された「★」の数で可視化する。デジタル政策と社会との関係について考えてきた政策特集の最終回は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、メーカーや家電流通の業界団体も普及を後押ししているこの制度について解説する。

JC-STAR制度のロゴマークと適合ラベルのイメージ
(JC-STAR制度のロゴマークと適合ラベルのイメージ)

増加するIoT機器とセキュリティ上の課題

IoT機器はルーターやカメラ、スマート家電、制御システムなど様々なものがある。家庭向けにとどまらず、デジタル化が進む医療現場や工場、物流の現場などでも、その数は大きく伸びると見込まれている。

<IoT機器のイメージ>
<IoT機器のイメージ>(IPAの資料から)

一方で、総務省の情報通信白書によると、IoT機器を狙ったサイバー攻撃は近年、増加傾向にある。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が運用するサイバー攻撃観測網(NICTER)が2024年に観測したサイバー攻撃関連の通信では、IoT機器を標的としたものが全体の約3割を占めていた。また、これまでにも、パスワード設定に不備があったネットワーク接続カメラで不正アクセスが発生したなどの事例が報道されている。

IoT機器のセキュリティを巡っては、購入・調達する側の意識、メーカー側の取り組み姿勢の双方に問題があった。購入・調達側は、価格の安さやネットワーク接続の簡便性、デザイン性などを重視するものの、セキュリティ対策への関心は比較的低い。一方、メーカー側が供給するIoT製品には、インターネットに繋ぐことのリスクを重く見てコストをかけてでもセキュリティ対策を充実させた製品もあれば、コストや機能を重視してセキュリティ対策が二の次になりがちな製品もある。そのため、IoT機器の見た目や仕様から適切なセキュリティ対策の有無を判断するのは難しく、公的な評価制度の創設が求められていた。

ラベルの「★」の数が示す適合状況

JC-STAR制度は、購入・調達する側に専門的な知識がなくてもセキュリティ対策が講じられた製品を選べるよう、製品に貼付されるラベルの「★」の数で適合基準への適合状況を可視化している。ラベルに記載された二次元バーコードを読み込めば、サポート期間や問い合わせ先などのセキュリティに関連した情報も取得できる。「JC-STAR」は、制度の英語表記「Labeling Scheme based on Japan Cyber-Security Technical Assessment Requirements」の略称だ。

<適合ラベルの例>
<適合ラベルの例>(IPAの資料から。クリックで拡大)

適合基準は4段階。「★1(レベル1)」は全てのIoT機器が満たすべき最低限の統一基準で、パスワードの初回利用時強制変更や類推されやすい文字列の使用禁止、脆弱性が発覚した場合などに備えてソフトウェアを更新できる機能を実装することなどが求められている。「★2(レベル2)」は主に一般消費者向けの機器が対象で、レベル1の内容に加え、スマート家電など製品分野の特性に応じた対策が講じられていることが要件となる。「★3~4(レベル3~4)」は、政府機関や地方自治体、重要なインフラ事業者などで利用される機器を想定し、独立した評価機関が検証することで高い安全性を保証する。IPAによると2026年7月現在、レベル1に適合した製品型番の数は1500以上となっている。

<JC-STAR制度の概要>
<JC-STAR制度の概要>

基準に適合することは、メーカーにもメリットがある。JC-STAR制度は既に政府機関や自治体の調達基準に反映されており、今後は重要度が低いシステムであっても、レベル1を取得した製品が広く活用される見込みだからだ。また、海外の同様の制度との相互承認が進められており、海外輸出時の再検査費用の削減につながるという。

「安心」を家電選びの新基準に…業界団体も普及を後押し

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は2026年2月、東京・池袋で、JC-STAR制度の普及啓発イベントを一般社団法人大手家電流通協会(CED)と共催で開催した。家電に詳しい男性タレントが、スマート家電がもたらす便利な暮らしとセキュリティ対策の必要性などについて話したほか、家電量販店に設けられた特設会場でレベル1に適合しているエアコンや洗濯機、電子レンジなどの展示が行われた=写真、JEITA 提供=。

家電量販店に設けられた特設会場

JEITAは、電子部品や電子機器、ソリューションなど、デジタル産業に関連する企業の業界団体で、大手電機メーカーなど2026年7月現在で384の企業・団体が会員だ。CEDは、家電量販店7社で構成する。今回のイベントについて、JEITAスマートホーム部会サイバーセキュリティワーキンググループで主査を務めるパナソニックの山本雅哉シニア・エキスパートは、「メーカーやベンダーでは消費者へのリーチに限界があり、家電量販店とタッグを組むことには大きな意義がある」と強調。CEDの常任委員で、CEDの事務局を担う家電量販店エディオンの岡嶋正幸執行役員は、「JC-STAR制度に適合した商品が家電量販店で扱われていることをお客様に認知していただくよい機会になったのではないか」と話す。

パナソニックの山本雅哉シニア・エキスパート(左)とエディオンの岡嶋正幸執行役員
パナソニックの山本雅哉シニア・エキスパート(左)とエディオンの岡嶋正幸執行役員

JC-STAR制度はまた、それぞれの業界にもよい影響をもたらしている。JEITA側の山本シニア・エキスパートは、「セキュリティという目に見えない価値がJC-STAR制度で可視化され、メーカーやベンダーの内部においても、対策に取り組む重要性への理解がより一層進んだ」と語る。CED側の岡嶋執行役員は、「公的で統一された基準でセキュリティ対策が担保されているため、量販店の販売員も商品をお客様に提案しやすく、自信を持って勧めることができるようになった。お客様も安心して購入できる」とメリットを説明する。JEITAが製作した、JC-STAR制度をマンガ形式でわかりやすく説明する冊子=写真=を活用している販売現場もあるという。

JC-STAR制度をマンガ形式でわかりやすく説明する冊子

JC-STAR制度の運用開始から1年余り。今後、レベル2以降の申請受付も始まる予定で、両者はIPAなどと連携しながら普及啓発に取り組み、消費者らの認知を高めていく方針だ。

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