NTTと東京都立大 世界初、イネ4品種を同時に交雑する「多品種交雑技術」確立

NTTと東京都立大学大学院理学研究科の岡本龍史教授の共同研究グループは2026年8月20日、三大穀物の1つであるイネを対象に4つの品種を同時交雑する技術を世界で初めて確立したと発表した。これにより、従来法では困難だった4品種の特性を一度に組み合わせたイネの育成を実現した。将来的には農作物の収量や機能性などの向上が可能となり、農業における生産量の増強や安定化、環境負荷の低減への貢献が期待される。この成果は、2026年8月20日に英科学誌「New Phytologist」に掲載された。


研究の概要図

作物の育種では、複数の品種を掛け合わせる交雑と、ゲノムを倍加させる倍数化がいずれも有効な手法として知られる。ただし従来の方法では、複数の親に由来するゲノムを組み合わせながら同時に倍数化することが難しく、両方の利点を併せ持つ個体を得るのは困難だった。

今回、両者は顕微授精法(IVF法)を活用し、日本晴、台中65号、カサラス、IR26の4品種からそれぞれ単離した卵細胞と精細胞を電気刺激で融合させた。4品種のゲノムを併せ持つ受精卵を作出し、複数の培地で培養してカルスを経た植物体を取得した。

得られた個体「Quad」は、玄米十粒重が4つの親品種の平均値の約1.7倍に達した。草丈と止葉の長さは最も大きい親品種と同等かそれを上回り、種子の長さ・幅・厚みはすべての親品種を上回った。親品種のいずれにも認められない赤色の芒も観察された。同一品種の倍数化では稔性の低下が課題となるが、異なるゲノムを組み合わせた今回の四倍体では、この問題を克服できる可能性が示された。

研究チームは今後、野外フィールドで収量性や環境ストレス耐性、品質を詳細に解析し、実用品種としての有用性の実証を目指す。IVF法が確立された他の植物種への応用も視野に入れ、環境負荷の低い農業の実現と食料安全保障の確保につなげる考えだ。