廣澤精機製作所 総合力と汎用性であらゆる市場変化に適応
製造・流通・教育の3部門がダイナミックに融合し、飛躍を続ける複合企業体・広沢グループ。そのグループのはじまりである廣澤精機製作所は、1977年に現在の広沢グループの代表・廣澤清氏が社長に就任したのが発端だ。3代目社長の柴田清之氏が、地域と共栄しながら成長を続ける同社の姿を語った。
柴田 清之(株式会社廣澤精機製作所 代表取締役社長)
圧倒的な製品アイテム数で
日本のモノづくりを支える
廣澤精機製作所の特徴は、何といっても、その膨大な製品アイテム数だ。製品は、量産品に対応する精密金属プレス加工から、多品種少量生産に適した精密板金加工、精密金型設計製作、プラスチック射出成形部品、冷却用ファンモーターや高速道路の防音板・透光板、極薄肉溶接ステンレスパイプに至るまで、約1万種類に及ぶ。効率だけを考えれば、量産が見込まれる精密金属部品の製作においては、精密プレス加工、精密板金加工、切削加工、溶接加工、そして製品組立までの全工程を完結できる総合力に特化する選択肢もあるが、柴田氏は量産に依存することへのリスクを懸念する。

筑波研究学園都市に隣接する、同社最大の筑波工場の全景。敷地面積13万㎡
「十数年前、発注元が事業撤退したために、突然受託生産が打ち切られた経験があります。量産体制に依存しすぎることは、こうしたリスクも伴います。それならば、徹底的にリスク分散をさせるに越したことはありません」
確かに、時代の流れは「量産品から小ロットで多品種へ」という変化に始まり、ファブレス化や在庫数の軽減が浸透するなど、モノづくりの形態を変えつつある。
「金属加工の技術も大きく変化し、以前より高い技術や想像力が要求されるようになってきています。当社は、お客様から製品製作のニーズ、背景や課題をお聞きし、試作品の段階から、当社の設備に合った加工方法や工程の提案を行い、より精度の高いコスト競争力のある製品に仕上げるための技術提案を積極的に行っています。当社は、少量生産の板金加工と大量生産のプレス加工を組み合わせた、合理的な加工を得意としています。お客様から製品図面一枚をいただき、その図面を基に試作品・部品加工から組立、検査、梱包までの全工程を自社で行う一貫生産体制を構築しており、この手間要らずの便利さを提供できることが、私たちの強みと自負しています」

国内最大規模のプレス加工設備を誇る

最新鋭のレーザ複合加工機による板金加工
市場に変化が起こるほど、
受注拡大のチャンスに
試作品から製品へ、さらには組立、品質管理を経て梱包までを担う一貫生産の「総合力」を強みとする廣澤精機製作所には、もう一つの強みがある。それは、着々と広げてきたアイテム数の多さ、すなわち多分野・多業種への事業拡張によってもたらされたものだ。
「当社の最大の強みは総合力ですが、実は汎用性にも富んでいます。例えば、私たちは自動車用のマフラーも扱っていますが、クルマが全てEV(電気自動車)になってしまうと、ガソリンエンジンに特化した企業は事業を転換しなければ生き残ることができません。当社の場合はマフラーの受注がなくなっても、蓄電関連機器等の技術を転用させてEV用の部品を作れば良いので、問題になりません。むしろ変化が起こるほど、汎用性の高い当社にとっては受注拡大のチャンスとなります。かつては、選択と集中ということが言われていましたが、私たちの場合は苦い経験を踏まえた上で、設備と技術を特定分野に特化しなかったことが、あらゆる市場の変化に対応しやすい、持続性の高い事業展開につながったと思います」
ただし、「今後は多方面の市場の動向を見極めながら、計画的に設備を更新し、技術をさらに磨き続ける必要がある」と柴田氏は語る。EVの他にFCEV(燃料電池車)にも注目しなければならないし、産業用ロボットの小型化や、低価格化の傾向にも目が離せない。
「目先でみるならば、現在、海外市場は急激に回復してきています。特に工作機械や装置関係などの海外向けが順調です。一方、中国の政策転換や米中対立などが世界経済に及ぼす影響が不透明な中で、各メーカーが増産体制を敷いているため、在庫過多による失速も懸念されます。また、長期的には、日本からモノづくり企業がさらに少なくなるのではないか、と危惧しています」
地域とともに“家業”を育て、
共栄を持続させていく
廣澤精機製作所は、人材採用も地元採用を徹底している。その理由について、柴田氏はこう語る。
「当社が作る約1万種類の部品は、様々な機械装置に組み込まれ、世界中で使われています。従業員も約1100人まで増えましたが、私は当社を、地域とともに育ってきた“家業”だと思っています。この家業を継続、発展させ、従業員や環境を守っていくことが、地域全体の持続可能性を高めることだと確信しています」
現在、同社の次世代を担う入社18年目あたりの層は、地域出身の人が中核だ。地元の工業高等学校の生徒を対象としたインターンシップも実施している。また、毎年60名の新卒者を採用するほか、障がい者も積極雇用している。
「SDGsの目標の一つに『誰一人取り残さない社会の実現』がありますが、それを実現させるためにも、この地域で頑張りたいと思っています。ただ、卒業後に製造業に就職する学生は年々減少し、私たちのようなモノづくりの中小企業は、人材の確保が大変厳しい状況となっています。時代の変化とともに、人の性質も変化しているように感じますが、知識や学歴、見かけだけではなく、根本的な人間臭さ、言い換えれば素直な正直さを持ち合わせている人と出逢い、何十年も共に働き、最後に『この会社に勤めて良かった』と思ってもらいたい。それが、私の理想です」

左/筑西市にあるテーマパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」での感謝祭の様子 右/夏祭り「まつりつくば」に参加
広沢グループが理念に掲げるのは、「協力こそ共栄の道」だ。
「グループ内企業との協力、お客様との協力、そして地域との協力。この3つの協力によって、社会は共栄を持続できると思います。『共栄こそが、サステナビリティ』と思っております」
- 柴田 清之(しばた・きよゆき)
- 株式会社廣澤精機製作所 代表取締役社長