テクノロジーの力で自治体業務改革を進める2つの企業
人口減少、少子高齢化の進行する日本では、資金・人材不足などの地方課題を解決するDX推進が急務。ふるさと納税事業を基盤に地域創生に挑むチェンジHD、早くから民間・公共DXを手がけてきたアイネスの動向を見る。
人口減少、少子高齢化の進行とともに、地方自治体では資金・人材不足などの課題が深刻化し、DXによる業務改革と効率・生産性向上は喫緊の課題だ。早くから自治体DXに携わる二つの企業、チェンジホールディングスとアイネスは今、そのような戦略を立てているのか。
チェンジホールディングスは、2003年、ITプロジェクト等のコンサルティングやIT人材育成研修ビジネスからスタート。「生産性をCHANGEする」というビジョンのもと、人と組織の変革を目指す。2018年に、ふるさと納税ポータル「ふるさとチョイス」運営のトラストバンクを子会社化して、テクノロジーで行政課題解決を図る「パブリテック」事業に乗り出して以降、2020年に、フィンテックを手がけるOrbを子会社化、公共DXや情報セキュリティ分野における自治体の様々な課題解決に向けてアップクロースを設立するなど、積極的なM&Aによる多面的アプローチから地方創生を推進してきた。
このパブリテックと並んで二大事業領域を成すのが「NEW-ITトランスフォーメーション」。テクノロジーやデジタル人材育成を通じて業務・ビジネスモデル変革、生産性・付加価値向上を目指す民間DXサービス事業だ。ここでも、自治体DX強化に向けたガバメイツ設立(2022年)、公共向けSaaSに強いガバメントテクノロジー子会社化(2023年)など、旺盛なM&Aによって体制づくりを進めてきた。中期経営計画「Digitize & Digitalize Japan」は現在「Phase 3」段階にあり、NEW-IT分野で事業承継を加速する他、パブリテック分野でも自治体向けチャットツール「LoGoチャット」が導入1,500件を超えるなど、着々と事業拡大、連携先拡大の成果をあげている。
一方、アイネスは、1964年に旧・協栄生命保険から独立した「協栄計算センター」を母体とし、1968年に民間計算センター初の自治体向け住民記録システムを開発、1973年には旧・大蔵省から運用管理システムを受託するなど、早くから行政業務変革における実績を重ねてきた。現在、情報関連サービスの調査・研究、システム関連人材派遣・業務請負、民間・自治体向けソフトウェア開発などを中心に、ITコンサルティングからシステム設計・開発と運用保守、評価まで幅広く手がけるシステムインテグレーターとして高度なソリューションを提供する。
中でも、2000年に発表されたWeb型総合行政システム「WebRings」は、日本初の自治体向け基幹業務システムで、スピーディーな導入、サービス多様化や法改正への迅速な対応といった特性から全国の市町村に豊富な導入実績がある。2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画では、自治体のシステム標準化対応、次世代ソリューションの開発、事業基盤拡充の3つの戦略を進めているが、次世代ソリューション開発では、このWebRIngsをさらに進化させ、「AI×DX」によって、自治体内部、民間・外部、住民の安心・安全に「つながる」ことをコンセプトに付加価値の高い機能を組み込む計画だ。また、2018年に業務資本提携を結んだ三菱総合研究所との協業によるAIを活用した新サービスも展開、地域課題を解決する「地域共創DX」を目指す。
自治体の業務改革は徐々に進んでいるが、IT、AI活用の余地はまだまだ多く、むしろこれから本格化の時代を迎える。それだけに、自治体DXを強力に推進するこうした企業には大きな期待がかかる。
両社の概要
チェンジホールディングス
| 設立 | 2003年(チェンジ 設立) | 
|---|---|
| 本社 | 東京都港区 | 
| 代表 | 福留 大士(代表取締役兼執行役員社長) | 
| 資本金 | 10億4,200万円 | 
| 従業員数 | 1,448名(連結) | 
| 主な 事業内容と グループ 会社 | ●NEW-ITトランスフォーメーション事業 - 民間DX、M&A: チェンジ、fundbook、DFA Robotics、ビーキャップ - サイバーセキュリティ: サイリーグHD、 イー・ガーディアン 他 ●パブリテック事業 - 地方創生(ふるさと納税など): トラストバンク、トラベルジップ 他 - 公共DX: アップクロース、ガバメイツ、ガバナンステクノロジーズ 他 | 
出典:ホームページ(会社概要)、有価証券報告書
アイネス
| 創業 | 1964年(協栄計算センター 設立) | 
|---|---|
| 本社 | 東京都中央区 | 
| 代表 | 服部 修治(代表取締役社長) | 
| 資本金 | 150億円 | 
| 従業員数 | 1,247名(連結) | 
| 主な 事業内容と グループ 会社 | ●情報処理・通信サービス、ソフトウェア開発、 システム提供、その他 - 情報サービス関連の調査、研究、 事業開発等: アイネス総合研究所 - システム関連人材派遣、業務請負、 民間・自治体向けソフトウェア 開発等: アイネスリレーションズ - システム運用監視・保守、 クラウドサービス等:アイネステクノロジーズ - グループ総務・人事等: アイネス総合サービス | 
出典:ホームページ(会社概要)、有価証券報告書
沿革
チェンジホールディングス
| 2003年 | チェンジ設立(IT 関連コンサルティング/人材育成事業開始) | 
|---|---|
| 2018年 | トラストバンク(ふるさとチョイス運営)子会社化し パブリテック事業開始 | 
| 2020年 | Orb(フィンテック)子会社化 | 
| 2021年 | ●KDDIと共同でディジタルグロースアカデミア設立 (人材育成) ●ビーキャップ(ワークプレイス可視化)子会社化 | 
| 2022年 | ●ガバメイツ(自治体DX)設立、SBI HDと資本業務提携 ●DFA Robotics(サービスロボット)子会社化 | 
| 2023年 | ●トラベルジップ(観光)子会社化 ●現社名に変更 ●ガバナンステクノロジーズ(SaaS等)、 イー・ガーディアン(ネットセキュリティ)子会社化 ●アップクロース(DX、情報セキュリティ)設立 ●サイリーグHD設立 (サイバーセキュリティ業界再編目的の中間持株会社) | 
| 2024年 | ●アイディルートコンサルティング(DX/セキュリティ) 子会社化 ●fundbook(M&A)、東光コンピュータ・サービス (業務システム) 子会社化 | 
出典:有価証券報告書
アイネス
| 設立~ 1980年代 | ●協栄計算センターとして設立 (64 旧・協栄生命保険より独立) ●自治体向け住民記録システム開発 (68 民間計算センター初) ●旧・大蔵省より運用管理システム受託(73) ●全国68都市を結ぶ 独自ネットワーク「KICNET」構築(83) ●アイネスに商号変更(84) | 
|---|---|
| 1990~ 2000年代 | ●総合研究所開設(91) ●早稲田大学と国際電子メールシステムの研究開始(92) ●Web型総合行政システム「WebRings」発表(00) ●SKサポートサービス(現アイネステクノロジーズ) グループ会社化(04) ●銀行向け資産管理システム「InsAsset」発表、 自動車部品製造 向けERPの「Aerps」提供開始(07) ●シンガポール支店開設(09) | 
| 2010~ 2020年代 | ●上海に現地法人設立(11) ●香港に現地法人設立(12) ●「WebRings」マイナンバー制度対応開始(13) ●アイネス総合研究所設立(17) ●アイネス総合サービス設立(19) ●三菱総研と共同で自治体相談業務支援 「AI相談パートナー」本格提供開始(21) | 
出典:ホームページ(沿革)
業績の推移
チェンジホールディングス

出典:業績ハイライト
アイネス

出典:業績ハイライト
セグメント別業績
チェンジホールディングス

出典:決算説明資料
アイネス

出典:有価証券報告書
今後の経営戦略
チェンジホールディングス

※ BPO:業務プロセス一括委託 ※ BPR:業務改革支援
出典:中期経営計画資料
アイネス

出典:有価証券報告書、決算発表資料
注目のトピックス
チェンジホールディングス

出典:ホームページ(プレスリリース)
アイネス

出典:ホームページ(ニュース)
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