精神発達障がい者の定着率、業界平均の2倍 レバレジーズが示す画一的雇用からの転換

障がい者雇用において「雇用して終わり」ではなく、真の戦力化と持続的な成長を実現するレバレジーズ株式会社ワークリア事業部。精神・発達障がい者150名規模を自社雇用し、2年で組織規模を180%に拡大しながら定着率90%を達成。即戦力人材として育成しながら、サテライトオフィスという「環境が変わらない」仕組みで障がい者雇用の段階的な社会適応という新たなスタンダードを構築している。障がい者雇用の新たな形と、その先に見る障がい者雇用のあるべき姿について、ワークリア事業部の事業責任者である津留有希子氏が語る、構想の核心に迫る。

障がい者雇用の「レッテル」を剥がす

「障がい者という言葉を聞いただけで敬遠してしまう企業がまだ多いです。この偏見が蔓延る現状を課題と捉え、障がい者という枠ではなく、『一人ひとりの個性や能力に向き合う』雇用が一般化することを目標として事業を営んでいます」。

レバレジーズ株式会社ワークリア事業部の事業責任者・津留有希子氏は、現在の障がい者雇用の根本的な問題をこう指摘する。

1980年代後半から継続的に上がり続けている民間企業の障がい者法定雇用率は、2024年6月の障がい者雇用促進法改正により、2.3%から2.5%へ引き上げられ、さらに2026年には2.7%への引き上げが予定されている。しかし法規制だけでは十分ではないという。

「実際に法定雇用率を達成している企業は全体の約46%に留まります。多くの企業が雇用率未達成分の納付金を支払いながら雇用を躊躇している現実があります。その背景には、障がい者への根深い先入観と、そこから生じる雇用リスクに対する懸念があると考えています。」

ワークリアが目指すのは、この構造を根本から変えることだ。

「障がい者は特に、一定の突出した能力を持つ傾向が強いです。そのため、業務内容によっては健常者より高い能力を有する方も多くいます。また障がいは、先天的なものもあれば、精神障がいのような後天的な障がいもあります。「障害があるから組織の戦力にはなれない」という固定概念を取り払い、積極的に採用や雇用を進められている企業が、あまりにも少なすぎるのが現状です。働きながら育児をする母親・父親のために整備される環境があるように、障がい者のために整備される環境があればその分だけ力を発揮し、貢献してくれますこれを企業に周知し、障がい者も働きやすく企業も雇用しやすい障がい者雇用システムを構築していくことこそが、ワークリアの社会的意義であると捉えています」。

障がい者雇用の固定観念を瓦解させ、企業と障がい者がwin-winとなるような仕組みを創出するため、ワークリアは独自性あるビジネスモデルを持つ。レバ様子

ワークリアでの業務風景

自社雇用から段階的な環境適応へ 障がい者定着「Step」モデル

ワークリアの最大の特徴は、障がい者雇用を語る前に、自ら150名規模の精神・発達障がい者を雇用し、レバレジーズグループ内のBPO組織として機能させている点だ。「まず自分たちが障がい者を戦力として雇用し、そこで得たノウハウや個々の特性データを企業に提供しています。机上の空論ではなく、自社で実証済みの仕組みとして企業への障がい者雇用浸透のきっかけを作っています」。

ワークリアでは、個人の特性や成長段階に応じた最適なキャリア形成を支援するため、段階的なサポートを提供している。
まず基本となるのが、ワークリアでの直接雇用を通じた育成だ。未経験者を採用し、PCスキルやビジネスマナーなど基礎的なスキルから教育する。
次に、この基礎を土台とした、2024年12月にリリースした「ワークリアstep」である。これは、企業のサテライトオフィスとして機能し、ワークリアの管理下で自社内外の業務を遂行する。さらに、ワークリアstepでの勤務を通じて業務遂行能力や環境適応力が十分に向上し、雇用元企業と障がい者社員双方の意図が合致した場合、雇用元企業の本社など通常のオフィスへと勤務場所をスムーズに移行できるよう、定着まで含めた支援も行っている。

この段階的アプローチの背景には、精神障がい者雇用の     1年後定着率50%未満という厳しい現実がある。

「精神障がい者は、環境変化への適応が難しい方が多いです。だからこそ環境を急激に変えないために、サテライトオフィスという形態をとりました。」

働く場所も、管理者も、一緒に働く仲間も変わらない中で、企業の業務を請け負いながら徐々に企業文化に慣れていく。この『step』という名称は、急激な変化を避け、段階的に成長していくという考えに由来している。

「ワークリアstep」が実現する企業と障がい者の新たな関係

「ワークリアstep」の革新性は、企業と障がい者の間に「緩衝材」を置いたことにある。企業は障がい者を直接雇用する前に、サテライトオフィスで実際の業務遂行能力を確認できる。一方、障がい者側も安心できる環境で新しい業務に挑戦できる。

重要なのは、専門スタッフによる伴走支援だという。

「ジョブコーチ資格を持つスタッフが常駐し、『この方はこういう時に落ち込みやすい』『この業務でつまずきやすい』といった特性を企業に事前に伝えられます。この丁寧なフォローが功を奏し、昨年の12月のリリースから未だ退職者は1名も出ていません。さらに、活躍を評価され、正社員登用された方もいます」。

さらに同社は、120種類以上の業務を切り出し、個々の特性に合わせた業務アサインを実現している。データ入力、資料作成といった定型業務から、最近ではAI関連業務やDX推進プロジェクトまで業務領域を拡大。「障がい者だから簡単な仕事しかできない、という固定観念を覆したい」という強い意志が感じられる。【WL】企業説明会資料 (2)

ワークリアでできるレバレジーズグループ業務120種

レバレジーズグループのシナジーが生む競争優位

ワークリアの競争優位は、レバレジーズグループの総合力にある。グループ全体で年間600名規模の新卒を採用し、レバテックやレバウェルなど多様な人材サービスを展開する同社には、豊富な採用・育成ノウハウが蓄積されている。

「障がい者業務としてグループ内のBPO業務が安定的に供給されることで、障がい者に継続的な実務経験を提供できるようになっています。グループノウハウにより社内における戦力となる活躍人材の育成が実現でき、収益性ある持続的な障がい者雇用システムの構築を可能としています」。

障害特性を「強み」に変える人材戦略

ワークリアが注目するのは、障害特性を弱みではなく強みとして活かす戦略だ。

「例えばASDやADHDの方は構造的思考や集中力が高く、AI・プログラミングに強い興味を持つ方が多いです。一方、うつ病や双極性障害の方は、自身の経験から他者の感情を敏感に察知でき、対人サービスで力を発揮する傾向にあります。さらに個々人によって得意領域は様々です。これをデータとして管理し、個別最適なアプローチをすることで、能力を最大限活かせる環境を創っています」。

同様のアプローチにより、障がい者手帳を持つには至っていない、「グレーゾーン」の実習の受け入れも可能となり、一般雇用と障がい者雇用の狭間で苦しむ層への支援も拡大している。

「私たちが重視しているのは、障がい者手帳の有無ではなく、その人が持つ可能性そのものです。一人ひとりの強みを最大限に活かせる環境こそが、組織全体の成長に繋がると信じています。その意味で、障がい者雇用も一般の雇用も、私たちにとっては等しく重要な人材戦略です」。

障がい者雇用を通し、雇用・育成の本質を表す核心的な考えを示す。

障がい者雇用の支援の枠を超え、働き方の未来を創る事業構想

ワークリアが描く5年後、10年後の構想はその持続可能性・社会的影響力を担保すべく、野心的な一面もありつつ、常に公益性にも目を向けたものである。

「3年以内に『障がい者雇用といえばワークリア』というポジションを確立したいと考えています。そのためには既に障がいのある方々が直面している課題に向き合い、解決のために尽力します。尤もその先では、『障害予防』による事前施策にも注力したいと考えています。うつ病など後天的な精神障がい者については、社会の在り方次第で『ならなくてよかった』人も多いと考えています。まずは食事、運動、睡眠といった基礎的な生活習慣、職場での考え方や人間関係について、ワークリアとして支援できる部分から障がい者と社会を繋いでいきます。長期的には、より根本的な障がい者発生の社会要因にアプローチし、障がい者になる人自体を減らす社会変革事業として、障がい者雇用の未来を創出していきたいと考えています」。

この予防的アプローチは、単なる理想論ではない。150名の障がい者と日々接する中で見えてきた、社会システムの歪みへの処方箋だ。なったとしても大丈夫という安心感と、ならないための予防的な仕組み、両輪で進めることで、本当の意味での共生社会が実現できる。レバレジーズワークリアの挑戦は、障がい者雇用の枠を超えて、日本の働き方そのものを問い直している。レバ津留さん写真

津留 有希子(つる・ゆきこ)

中途採用事業本部 ワークリア事業責任者

立教大学コミュニティ福祉学部(社会福祉士取得)卒業後、2020年レバレジーズ新卒入社。若年層領域に特化したハタラクティブの法人営業に従事し、2年目には名古屋支店の拠点長を歴任。同年に全社のベストセールス賞を受賞。2023年よりワークリア事業部サービス責任者に。就任後2年間で組織を180%拡大、従業員定着率90.7%を達成。

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