長門湯本温泉まち 官民で取り組む持続可能な温泉地づくり

約600年の歴史を持つ、山口県最古の長門湯本温泉。宿泊者数がピーク時より半減するなど近年衰退していたが、2016年から長門市と星野リゾート、地域が一体となり、官民挙げての温泉街再生プロジェクトが始動した。再生へ向けた歩みと今後のビジョンを、長門湯本温泉まちの木村隼斗氏に聞いた。

木村 隼斗(長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー)

約600年の歴史を誇る
山口県最古の長門湯本温泉

長門湯本温泉は、室町時代の1427年に大寧寺の定庵禅師が住吉大明神からのお告げによって発見したと伝わる、岩盤から湧く神授の湯「恩湯」を起源とする山口県最古の温泉街だ。昭和末のピーク時には、年間約40万人の宿泊客が訪れる人気の温泉地だった。しかし、その後、宿泊者数は右肩下がりに減少し、2014年には年間約18万人に半減していた。

「2014年に、温泉街の中央にあったシンボル的な老舗ホテルが廃業するという、危機的状況に陥りました。衰退の大きな要因の一つに、時代の流れの中で、団体旅行から個人旅行へという旅行の大きなトレンドの変化があったにも関わらず、受け入れる温泉地が団体仕様のままだったことがあげられます。また同時に、団体ニーズに応え続けた結果として、この地域らしい特色を失っていったということも大きいと思います」と長門湯本温泉まちでエリアマネージャーを務める木村隼斗氏は語る。

木村氏は2007年に経済産業省へ入省し、2015年から3年間、地方創生人材支援制度により長門市役所に勤務。温泉街の再生プロジェクトに携わり、2020年に現職に就いた。

「私は2011年の東日本大震災時に原子力の安全規制を担当していましたが、避難を強いて皆さんの故郷を奪うような形になってしまったというのが、ずっと心の中にありました。それもあり、いつか地域の活性化に関わる仕事をしたいと思っていたところ、長門市とのご縁をいただきました」

長門市は2015年、長門湯本温泉の再生のため、廃業したホテルの跡地へ星野リゾートを誘致するプロジェクトを立ち上げた。木村氏はその担当として同市へ着任し、誘致に取り組むことになる。

「しかし、誘致を進めていく中で、その敷地に星野リゾートの宿ができたとしても、点としてそこが良くなるだけでは限界があるという話になりました。星野リゾートとしても、温泉街全体が元気になる持続可能な計画でなければ意味がないということで、温泉街の面的な再生に視点を変え、連携して温泉街を元気にしていこうという形になりました」

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