サツドラホールディングス 地域をつなぐビジネスで北海道を活性化

医薬品などを販売するサッポロドラッグストアーとして1972年に創業した、サツドラホールディングス。「健康で明るい社会の実現に貢献する」をミッションに、地域の生活総合グループへ進化することを目指している。同社代表の富山浩樹氏に、現在の成長戦略と今後のビジョンを聞いた。

富山 浩樹(サツドラホールディングス株式会社
代表取締役社長 CEO)

小売×地域マーケティングで
ヒト・モノ・コトをつなぐ

「札幌市西区(現、手稲区)で創業した当初、サッポロドラッグストアーはスーパーの一角、わずか15坪に店舗を構えるいわゆる“パパママ薬局”でした。しかし、1970年代後半に化粧用品や日用品も扱うアメリカ型のドラッグストアが上陸し、当社もその流れに乗り業態転換をしました。食品販売にまで手を拡げ、一気に店舗の大型化、多店舗化を進めました」とサツドラホールディングス代表の富山浩樹氏は語る。

サツドラの店舗。北海道内を中心に約200店を展開

富山氏は日用品卸商社を経て、2007年に父が創業したサッポロドラッグストアーに入社。営業本部長を務めていた2013年に子会社のリージョナルマーケティングを設立し、小売だけでなく、地域マーケティングにも注力し始めた。

その第一歩が、北海道共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」の導入だ。提携企業を拡大しながら店舗への集客や利便性向上に努め、6月末現在の加盟者は約211万人、提携店舗は道内890店に上る。

このほかに、電子マネー決済サービス「EZOマネー」や、道民参加型ソーシャル・コミュニティ「EZO CLUB」の運営など、幅広い事業を手掛けている。小売と地域マーケティングの2軸体制を強化する狙いもあり、富山氏はサッポロドラッグストアー代表に就任した翌年の2016年、純粋持株会社のサツドラホールディングスを設立した。

地域マーケティングにいっそう注力していく姿勢は、2019年に新たに掲げたビジョン「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」にも表れている。

「地域に関わるあらゆるヒト、モノ、コトをつなぐことで、未来を豊かにしたいと考えています。ただし、表層的なCSRではありません。『地域コネクティッドビジネス』と、あえて『ビジネス』をつけたのも、事業としての成長を重視するためです。こうした多角化への挑戦が可能なのも、50年以上かけて築き上げた200店舗あまりのドラッグストアチェーンの基盤があるから。当社の最大の資産は、地域の方々と直接つながる場を持っていることです。店舗やEZOCAを介し、個々のお客さまのデータベースを生かすことで、ここまで成長できました」

3つの成長戦略で
地域の生活総合グループへ進化

富山氏が地域にこだわる背景の1つに、道内の人口減少がある。特に地方部では著しく、2025年には約半数の市町村の人口が5000人を割り込むと予測されている。

そうなれば、多くの生活関連サービスの存続が難しくなるのは間違いない。ビジネスモデルの抜本的な変革が不可避だが、富山氏は「裏を返せば、地域には新たなチャンスが溢れている」と意気込む。

同社では、2021年6月に策定した中期経営計画において、「地域の生活総合グループへの進化」をテーマに掲げた。グループの経営資源を最大限に活用し、独自のポジションを確立するため、3つの成長戦略を立てた。

「1つ目は、店舗の生活総合化戦略です。小さな商圏でも成り立つ店舗づくりを目指し、オンライン診療をはじめとしたオンラインサービスの窓口となるなど、店舗がライフコンシェルジュの役割を果たすイメージです。2つ目が、地域プラットフォーム戦略。EZOCA 経済圏の拡大やビッグデータを活用した地域通貨導入など、地域経済活性化につながるモデルを構築したいと考えています。3つ目は、こうした戦略を推進する上でも重要になるコラボレーション戦略です」

コラボレーション戦略の例を挙げると、道南の江差町とはすでに独自の「江差EZOCA」を設けている。江差EZOCAを使って全道のサツドラで買い物をすると、購入額の一部が町に還元されるスキームを導入し、日常の買い物が地域の活性化に貢献する仕組みを構築した。

「江差EZOCAの町民の加入率は90%を超え、マイナンバーカードの交付率を遥かに凌ぐ勢いです。さらに江差EZOCAのデータを生かし、町役場とともに新たなモビリティサービス『江差マース』の実証実験を行うなど、生活サービス向上を目指す新たな取り組みに挑戦しています。今後は他の自治体とも、このような取り組みを行っていきます」

左/江差町の町民加入率90%超の「江差EZOCA」
右/2023年8月に行われた江差EZOCA還元金贈呈式

サツドラグループの基盤を活用し、
道内で新事業創造に挑む人を支援

こうした新規事業で成果を上げるため、同社は多様性のある組織づくりや人材育成にも力を入れている。D&I委員会を設置し、女性役職者比率の向上や、副業を含む多様な働き方を受け入れるほか、同社が運営する北海道最大級のインキュベーション施設「EZOHUB SAPPORO」を活用した多様な人材交流も促進している。

本社2階のインキュベーション施設「EZOHUB SAPPORO」

ここで一役買っているのが、富山氏が代表発起人となり2020年6月に設立した北海道経済コミュニティ「えぞ財団」だ。北海道を本気で盛り上げたいと願う仲間が集い、多様な事業活動を行っているが、その1つである組織越境型スクール「EZO OPEN SCHOOL」が合同社員研修の機能を果たしているという。

「サツドラの事業とは直接関係のないプロジェクトですが、当社の社員にも参加してもらっています。ほかの組織の方々と横のつながりをつくれるのが大きなメリットで、特に自治体職員の方と一緒に地域課題を話すなかで、地域コネクティッドビジネスのヒントが得られているようです」

さらに同社は2022年10月、国内外のスタートアップ企業へ出資を行うコーポレート・ベンチャー・キャピタル、S Venturesを設立。サツドラグループが持つ店舗や共通ポイントカード基盤などの資源を活用し、道内で新たな事業の構築に挑む人を支援していく。

「日本、もしくは世界中で新たな事業を生み出そうという気概のある方に、ぜひ北海道をフィールドに選んでもらいたいですね」

時代の流れの中で、現在、大きな変革期を迎えている北海道。しかし一方で、富山氏は「北海道は今、第二の開拓期を迎えている」とも語る。

「2030年度には札幌まで新幹線が延びる予定ですし、十勝の大樹町に宇宙産業のスタートアップが誕生したり、脱炭素を進めるGX投資を呼び込むコンソーシアムが設立されたり、千歳市に最先端半導体工場が建設される予定もあります。当社もこうした追い風に乗って、地域活性化への取り組みをいっそう加速させていきます」

 

富山 浩樹(とみやま・ひろき)
サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO