マネーフォワードホーム 金融サービスの民主化を通じて 人生が豊かになるプラットフォームへ
家計簿アプリの枠を超え、1,700万人以上が利用する金融プラットフォームへと成長した『マネーフォワード ME』。2024年8月に設立し、同年12月、三井住友カード株式会社との合弁会社としてのスタートを切ったマネーフォワードホーム株式会社 は、今年8月、新たな経営体制を迎えた。同社代表取締役社長に就任した金坂直哉氏に合弁事業でのシナジーとして生み出した、「ポイントが貯まる家計簿」の意義と金融サービスとしての構想を聞いた。
CFOから事業経営へ
「世界で成功した会社は1つもない」を覆した11年
マネーフォワードホーム株式会社・代表取締役社長・金坂直哉氏が株式会社マネーフォワードに入社したのは2014年7月。同社CFOとして資金調達を担当していた当時、投資家から繰り返し言われたのが「 『マネーフォワード ME』のような事業形態で成功した会社は、世界に1つもない」という言葉だった。しかし、それから11年。金坂氏は、マネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社「HIRAC FUND」の代表パートナーを務めながら、マネーフォワード・グループCSOを経て、2025年8月にマネーフォワードホームの社長に就任した。「『マネーフォワード ME』は入社前から10年以上使い続けてきたサービス。更なる価値提供を目指し、就任を決めました」と金坂氏は語る。
事業は現在34億円 を超える売上高(2025年11月期第1-3四半期合計)となり、課金ユーザー数は61万人を超えた。「正直、良い意味で期待を裏切るような成長を遂げたと感じています」と語る金坂氏。UIや機能等でサービス向上を着実に行いながらも、飛躍の背景の一つには、2020年に完了した銀行とのAPI連携という追い風もあった。
「銀行口座に関して、当時はウェブスクレイピングで情報を取得していましたが、2018年の銀行法改正を受けてAPIが開放され、ユーザーの認証情報をお預かりしないで済む形になりました。より安心してお使い頂ける形になり、当時の投資家たちも、驚くような結果となりました」と説明する。
成長を加速するアライアンス構想が実現
これまでにない「ポイントが貯まる家計簿」
2024年7月、マネーフォワードは三井住友カードとの資本業務提携を発表。金坂氏自身 、株式会社マネーフォワード 創業者であり、代表取締役社長グループCEOの辻庸介氏らと共に、『マネーフォワード ME』や個人向け事業を今後どのように成長させていくのか、約5年以上前から長く議論していた。その中で、ユーザーの金融体験を変える革新的なサービスを展開している三井住友カードと合弁会社マネーフォワードホームを設立し、新たな船出を迎えた。金坂氏は三井住友銀行を20年近く利用し、2023年3月開始の『Olive』も初日から使う熱心なユーザーであった。
注目すべきは、データを活用した新しい金融体験だ。「例えば、現在300万円を借りると金利として10%前後(法定上限は15%)を要求されますが、『マネーフォワード ME』のデータを『Olive』のアプリ内で連携させて申し込むと、優遇金利で融資が受けられるなど、2つのサービスの特長を掛け合わせることで、新しい金融体験をお届けできる可能性があると考えています」と語るように、アプリ内データを信頼度を反映する指標として活用することで、ユーザーへ、思いがけないメリットを提供出来ないかと考えている。
また、合弁会社化により実現したのが、「ポイントが貯まる家計簿」だ。アプリ内のアクションを通じて、Vポイントをためることができる。「家計簿アプリ」というと、淡々と日々の金銭の記録を取るイメージだが、マネーフォワードホームは、このサービスを単なる家計簿ではなく、新たな金融体験の一つとして位置付け、「使っていると資産が自然に増えるサービス」に進化しようとしている。
デザインの優位性をユーザーの日々の体験に
AI導入も人にとって使いやすい形に
金坂氏が重視するのはUI・UXである。元々、『マネーフォワード ME』のアプリ自体も使いやすさとデザイン性を基軸に、利用者を広げていったという背景があるが、新たな体験として「ユーザーのQOL向上」の為に様々な施策を取り入れている。例えば、今年8月リリースの「Prime Coupon」では、課金ユーザーに向けて、課金額相当もしくはそれを上回る割引などが利用できるクーポンを配布しているが、提供するクーポンにもこだわっている。金坂氏が、直接選定にも携わり、QOL向上に役立つ製品などを細やかに選定していくことで、『マネーフォワード ME』との親和性強化とユーザーへの価値貢献向上を行う。また、ビジネスモデルとしても、パートナー企業からは対価を受け取らない形で行っており、提携を拡大する体制が整っている。
金融サービスと家計簿、クーポンやポイント機能など、あらゆるお金の管理が一体化したサービスであり、ユーザーの意思決定に関わるUI・UXの重要性は高い。今後、金坂氏はお金だけでなく、「時間を生み出すサービス」として、アプリ内にAIを取り入れる構想を語ったが、ユーザー体験を大切にし、細心の注意を払うという。たとえば、日用品としておむつを買うようになった人に対して、いきなり「子供が生まれましたね」という通知やそれに関連するレコメンドは不快な気持ちになる方もいらっしゃるかと思います。ユーザーに気持ちよく使って頂く上で、アルゴリズムやレコメンドシステムは重要なポイントです」と金坂氏は強調する。
企業型DCとの掛け算で広がる資産形成
可視化による安心感と納得感の付与
個人向けサービスのイメージが強いマネーフォワードホームだが、2025年8月には、中小企業を中心とした企業型DCの導入支援を行う株式会社アーリークロスとの業務提携が発表された。これにより、アーリークロスによる企業型確定拠出年金(DC)制度の導入の一環で、福利厚生として『マネーフォワード ME』のプレミアムサービス スタンダードコースを提供することが可能になる。
「これは私が10年前から実現したかった構想の一つです」と金坂氏は力を込める。「確定拠出年金は給与から天引きされるため、従業員は収入が減ったように感じます。しかし『マネーフォワード ME』で管理していれば、天引きされた分が可視化され、積み上がっていることが確認できます」。この積み上げの効果の可視化は、企業型確定拠出年金の納得感を得る上で重要で、実際、この拠出年金を利用する『マネーフォワード ME』の20代から50代のユーザーでは、平均30%を超える含み益を確保しているという。
「失敗を恐れない」組織文化で挑む
2028年度、売上100億円を目指して
現在、マネーフォワードホームは約80人の組織である。組織内人材は多様化しており、三井住友カードからのメンバーやベトナム・ホーチミンの開発チームの人材もいる。金坂氏が重視するのは、スピード感ある意思決定だ。「とにかくアイディアを阻害しないこと。可能な限り迅速に意思決定を行い、PDCAを回して新しい挑戦ができる環境を整えることが重要だと考えています。失敗するかもしれないけど、どんどん新しいことをできる環境づくりを行っています」と語る。IRでも、2028年に向けて、売上100億円という目標を設定しており、成長環境の組織構築を目指す。
金坂氏の言葉には、CFO時代に培った戦略性と、10年以上のユーザーとしての実感、そして「失敗を恐れず、新しいことに挑戦していく」という経営者としての覚悟が融合している。「お金だけでなく、『マネーフォワード ME』を通じて生活や人生をより豊かにする。お金のプラットフォームを通じて、一人ひとりの人生をもっと前へ進める支援をしていきます」と語る金坂氏。 個人向け金融プラットフォームが描く未来は、一人ひとりの暮らしに、そして社会全体に、どのようなインパクトをもたらすだろうか。
