冷凍物流の課題を価値へ転換 自動化とネットワークで描く次世代サプライチェーン

2011年、「その課題を、価値へ。」を理念に創業した霞ヶ関キャピタル。同社の物流事業を率いる杉本氏は、冷凍倉庫市場の構造的課題を起点に、自動化倉庫の開発、地域との共創モデル、グローバル展開へと事業領域を拡げている。課題発見から価値創造へと至る事業展開のプロセスと、成長戦略について話を聞いた。

 

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杉本 亮(霞ヶ関キャピタル 取締役副社長 COO)

賃貸型冷凍倉庫の空白
市場の歪みに事業機会を発見

コンサルティング型デベロッパーとファンドマネジメントを融合したビジネスモデルで、ホテル、ヘルスケア、物流領域での不動産開発などを手掛ける霞ヶ関キャピタル。その中でも物流事業は、同社の中核を担う存在へと成長している。

杉本氏が霞ヶ関キャピタルに参画したのは2020年。前職では財閥系不動産グループや外資系企業で不動産投資に携わり、冷凍倉庫のリノベーション事業などを手掛けていた。

「当時から賃貸用の冷凍倉庫は市場にほとんど存在せず、空室もほぼゼロという状況でした。テナント企業は移転を希望しても選択肢がない。そこに大きな事業機会を見出しました」と杉本氏は振り返る。

この知見を活かし、冷凍倉庫の開発を条件に同社へ参画。LOGI FLAGブランドとして冷凍特化型、常温・チルド・冷凍の複合型など、多様な温度帯に対応する賃貸型倉庫の展開を開始した。確実な需要と成長性がある冷凍領域に経営資源を集中させる戦略的判断が、事業拡大の礎となった。

労働環境と顧客ニーズ
自動化が新たな価値を創出

冷凍倉庫事業を展開する中で、杉本氏は二つの着眼点を得た。一つは労働環境だ。「マイナス25度という特殊な環境で働く方々に、より良い働き方を届けたいという思いがありました」と杉本氏は語る。もう一つは顧客ニーズへの柔軟な対応である。賃貸型倉庫は一定の面積単位で貸し出すのが一般的だが、営業現場からは「500坪だけ借りたい」「100坪で十分」という声が多く寄せられていた。

同社の自動化倉庫「LOGI FLAG TECH」は、この二つの課題を同時に解決する。冷凍フロアを完全自動化し、マイナス25度での人の作業を不要にすることで、労働環境を改善した。同時に、倉庫空間をバーチャルに区切って必要な分だけ貸し出す仕組みを独自開発し、「500坪だけ」「100坪で十分」といった多様なニーズにも対応可能にした。実際に、所沢エリアで稼働中の施設でも、すでに着実な成果を上げている。

 

logi flag tech所沢外観_正面
LOGI FLAG TECH 所沢 Ⅰ


logi flag tech所沢モニター
logi flag tech所沢ラック_クレーン
LOGI FLAG TECH内部のモニターや自動化された設備の様子

「クラウドのような物流」
ネットワーク化で描く未来

杉本氏が描く将来像は、「クラウドのような物流」の実現だ。

「データの世界で実現できることを、リアルの世界でも実現したいと考えています」。

クラウドに保存した写真は、どのサーバーにあるかを意識せずに世界中どこからでも取り出せる。物流においても、メーカーが「保管してほしい」「出荷してほしい」と指示するだけで完結する世界を目指すという。

この将来像を実現するには、二つの要素が鍵となる。一つは自動化倉庫のネットワーク化だ。各地の自動化倉庫をシステムで接続し、在庫情報を一元管理することで、最適な拠点から出荷できる体制を構築する。もう一つは倉庫と輸送の連携だ。GPSでトラックの位置情報を倉庫側にリアルタイム共有し、到着時刻を予測して事前に荷物を準備する。これが実現すれば、倉庫の省人化や業務効率化が進み、現在平均2時間に及ぶ荷待ち時間の大幅な短縮も可能になる。物流関連法改正により荷待ち時間の記録・報告が義務化される中、同社の取り組みは社会的要請にも応えるものだ。

函館から全国へ
地域との共創モデル

物流事業の拡大と並行して、杉本氏は地域との共創モデルを構築している。その象徴が、函館市との連携協定に基づく「(仮称)ファクトリー&ロジスティクスパーク」だ。

函館市は食の宝庫として知られ、豊かな資源と高いブランド力を持つ。そういった魅力を全国へ届ける基盤整備において大きな可能性を秘めており、新たな産業と雇用の創出に強い意欲を持っていた。

「(仮称)ファクトリー&ロジスティクスパーク」では、賃貸型工場と自動化倉庫を隣接して整備する。原材料の保管から製品の出荷までを一体的に効率化し、企業の初期投資負担を軽減しながら、地域に新たな産業基盤を創出する。建築費が高騰する中、賃貸型という選択肢は多くの企業にとって魅力的な参入機会となる。

2025年9月の連携協定発表以降、複数の自治体から問い合わせが寄せられている。行政との協業を通じて地域の可能性と事業機会を結びつける共創モデルへの関心は高く、全国への展開が期待される。

 

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霞ヶ関キャピタルと函館市の「地域活性化」に関する連携協定締結式の様子
(左から、霞ヶ関キャピタルの堀内新規事業部長、杉本取締役副社長 、河本代表取締役、
函館市の大泉市長、氣田経済部長,小林経済部次長)

挑戦を支える組織文化
前向きな人材が未来を創る

冷凍倉庫から自動化、地域連携へと事業が拡がってきた背景には、霞ヶ関キャピタルならではの組織文化がある。

「やりたいという人にやりたいことをやってもらう。それが人の成長につながります」と杉本氏は語る。同社の海外事業部は、社内公募で手を挙げた社員全員で構成された。進出先も彼ら自身が調査・検討し、マレーシアへの投資を決定。現在はベトナムやインドネシアへの展開を視野に入れている。

毎年開催される新規事業コンペで発表されたアイデアから始まり、新たな事業として具現化した例もある。「困りごとがあれば解決する。それを続けていけば事業は大きくなり、面白い会社になる」と杉本氏は力を込める。

物流業界が大きな変革期を迎える中、同社は自動化・省人化によって人の力を最大限に活かす事業モデルを追求する。課題を発見し、解決策を考え、ひらめき、実践する。「その課題を、価値へ。」という創業理念を体現し続けることが、同社の成長の源泉だ。

杉本 亮(すぎもと・りょう)氏
霞ヶ関キャピタル株式会社 取締役副社長 COO