NTT西日本「つながる教室」 ICTで地域の教育を変える

地域の学校をICTで隣町の学校とつなぎ、まるで一つの教室にいるような合同授業を実現。2015年10月から展開されているNTT西日本の企業広告「つながる教室」が話題を集めている。ICTを起点とした提案で教育や過疎化という地域課題に応える、NTT西日本の新たな挑戦とは。

NTT西日本の企業広告「つながる教室」。地域の学校を舞台に、NTT西日本社員と自治体職員らが遠隔授業実現のために奮闘し、教室に笑顔が生まれるまでを描く

2015年春、事業戦略を大きく転換をしたNTT西日本。主力商品である光回線「フレッツ光」を、これまでのコンシューマー向け直接販売から、より多くのプレイヤーに光を普及することができる卸売りモデルへと大きくシフトさせた。

他の事業者や自治体などと一緒になり、光回線を、その利活用方法までを含めて販売していく。メインテーマは「その挑戦をご一緒に」。地域の活性化や様々な社会的課題の解決に、共に取り組み、挑戦する、アライアンスパートナーを目指す。

地域の“教育”を変える

遠隔オフィスの技術を学校に応用した発想と、合同授業に湧く生徒たちの生き生きとした姿がインパクトを与える企業広告「つながる教室」。制作を手がけたNTT西日本広報室長の秋山貴之氏は、元高知支店長としての経験も踏まえ「地方創生をテーマに、地域がいま抱えている課題を等身大に描こうと心がけました」と話す。

秋山貴之 NTT西日本広報室長

中山間地や離島など、過疎化の進む町や村にとって、大きな課題の一つが教育だ。

小中学生合わせて20人に満たないような地域では、子どもが多様な価値観に触れあう機会が少ないという課題があり、教科ごとの教員が必要となる中学・高校では、生徒の数より多い教員を配置しなければならないといった場合もある。

学校の統廃合や、中学・高校から都会へ出すといった方法はあるが、中学から村や町を離れてしたまった子どもたちは、地元へ戻る確率が下がる。過疎化の進む村や町にとって、学校の存続は死活問題だ。

教育の質を落とさず、教師や学校への負担も最小限にしながら、町や村の学校を存続させる特効薬はないものか。そうした中で取り組んだのが、地域の学校と近隣の学校とをつないで行う、合同授業という広告設定だった。

地方創生は三位一体で

「つながる教室」実現の背景には、2015年4月に行われた学校教育法施行規則の改正がある。これまで授業は対面で行うのが大前提だったが、高校では今年度から、都市部にある大規模学校などの授業をインターネット回線でモニター画面に写す「遠隔授業」が認められるようになった。高校3年間で必要な74単位のうち、36単位まで、この遠隔授業で取得することができる。

秋山氏が「遠隔授業の可能性を拡げる法改正がなされたのであれば、光回線を使って何かお手伝いができるかも...」と思っていた矢先、ある技術メーカーの二画面プロジェクターと出会ったという。

実際の教室と同じ臨場感を出すために、プロジェクターは教室の角を囲むように配置した。そうすることで、黒板と教員は前に、隣町の学校の生徒たちは横に写し出され、一つの黒板を共有しながら、横並びに並んだ他校の生徒たちと共に授業に臨める。

「こうした地域創生への取り組みは、私たちの技術だけでは実現できません。同じ志を持つ技術メーカーがいて、自治体や学校の理解があり、住民の熱意があって、初めて可能になるのです。どれか一つが欠けても成功しません。事業者と自治体と住民が三位一体となることが重要です」

「遠隔教室」法改正のポイント

  1. 学校教育法施行規則の一部改正により、2015年4月から、全日制・定時制課程の高等学校等での遠隔教育が可能に
  2. 高等学校の全課程の修了要件である74単位のうち36単位までを上限として実施することができる

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り45%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。