総合容器メーカーの東洋製罐GHD 包装技術で社会に貢献

創業から100年以上の歴史を持つ東洋製罐の理念は「容器を通じて人類の幸福繁栄に貢献する」。時代ニーズに応えた包装容器を供給し続けてきた同社は、2021年からは中期経営計画2025を始動。「くらしのプラットフォームへ向けた持続的な成長」を基本に、次の100年に求められる事業の創造に挑む。

大塚 一男(東洋製罐グループホールディングス 社長)

金属、プラスチック、ガラス、紙と、あらゆる素材を扱った総合容器メーカーとして、世の中の変化に応じた様々な包装容器を供給してきた東洋製罐グループホールディングス。

グループ会社には東洋鋼鈑を中心とする素材メーカーを持ち、2011年には製缶機械大手の米・ストーレマシナリーカンパニーを買収。素材から製缶機械(エンジニアリング)、容器製造までの一貫体制を構築している。

総合包装容器メーカーの強みで
素材を組み合わせた展開が可能に

東洋製罐グループホールディングスの社長の大塚一男氏は「あらゆる素材を扱う総合容器メーカーというのが我々の強みだと思っています。包装容器で培った技術・ノウハウを活かし、包装容器の枠を越えた新たなチャレンジをしていく。生活のあらゆるシーンになくてはならない製品を提供する総合容器メーカーとして、持続可能な社会に貢献していきたい」と話す。

二酸化炭素(CO2)削減、プラスチックごみ問題などがクローズアップされるなか、製造業ではサステナブルな社会へ向けた取り組みが不可欠となっている。

東洋製罐では、アルミ缶の内側と外側の両面にポリエステルフィルムをラミネートした「aTULC」を開発。通常のアルミ缶製造工程では、アルミ板を加工する際、大量の潤滑油と洗浄用の水を使う。「aTULC」は、アルミ缶にポリエステルフィルムをラミネートすることで、潤滑油と洗浄を不要とし、水の利用量をゼロにしたほか、廃棄物の大幅な削減を可能にした。

「アルミ・スチールへのラミネートは、総合容器メーカーとして金属加工の技術とプラスチックの技術を両方持っていたからこそ実現した技術です」と大塚氏は言う。

さらに、設備をコンパクト化し、飲料メーカーの工場内で製缶から充填まで一体的に行う事を可能とする、缶の輸送が不要な設備を開発した。少量多品種生産に向けて、シンプルで環境負荷の少ないシステムを作り上げている。

このような技術は、包装容器以外でも活用できる。例えば、現在、世界で開発が進められているフレキシブルに曲がる太陽光パネルに、同社のプラスチックフィルムが注目されている。食品包装用フィルムの10万倍の水分バリア性のあるフィルムで、これも包装容器から生まれた技術。2022年の商品化を目指して、開発を進めているという。

容器から社会課題の解決に挑戦

2021年から5カ年計画でスタートした「中期経営計画2025」では、①食と健康、②快適な生活、③環境・資源・エネルギー領域で、新規事業を創出し、新たな社会基盤の創造を目指している。

次の新しい100年を創造するべく、包装容器で培ってきた技術やノウハウを活かすとともに、社会課題解決のための新しい仕組みを創出し、社会実装を推進する同社。2019年からは、容器から日本の様々な社会課題の解決に挑戦する、社長直轄型のイノベーションプロジェクト「OPEN UP!PROJECT」を開始。その第一弾として立ち上げた新しいサービスが、イベント訪問型日本酒充填サービス「詰太郎」だ。

缶への充填機をレンタルするサービス「詰太郎」。小規模な酒蔵でも缶入りの日本酒を生産できる。利用者は祭りやイベントなどとコラボして地域の活性化につなげている

日本酒で一般的な瓶詰は、地方の祭りやイベントでお土産として販売するには、重くて不便だった。東洋製罐では、手軽に持ち運べる日本酒の缶を昔から提供してきたが、導入はどうしても大量生産の工場がメインで、地方の小さな酒蔵では使えなかった。そこで、1合サイズの日本酒用アルミ缶専用の移動式簡易充填機をレンタルするサービス、「詰太郎」構想を発想した。

もう1つ、①食と健康の分野で「OPEN UP!PROJECT」から生まれた新発想のプロダクトがある。減塩豆腐容器「ソルトーフカップ」。1日の塩分摂取量が世界基準の約2倍と言われる日本。塩分摂取量を制限されている人も多いが、計量の手間や難しさから具体的な対策が難しい。そこで、東洋製罐が目をつけたのが容器による計量。容器で計量できるようにしたり、豆腐自体に1、2、3のくぼみを作り、それぞれ1cc、2cc、3ccが入るよう設計した。また、1ccの醤油をかけると柄がくっきりと見える和柄のくぼみを作る容器も作った。容器の力で減塩に貢献するというアイデアだ。

容器により豆腐にくぼみをつけ、醬油をかけるだけで塩分量を把握できるようにした「ソルトーフカップ」

同社の中期経営計画では「くらしのプラットフォーム」を掲げているが、「こうした1人ひとりの暮らしの多様なニーズに応えていくことが、将来のプラットフォームへと繋がっていくと考えています」と大塚氏は分析している。

新しい発想ができる風土づくり

総合容器メーカーとして、プラスチックも扱う東洋製罐。「脱プラ」の話題が出る一方で、プラスチックが便利なことも紛れのない事実だ。

「それぞれの素材の良さがあると思います。大事なのは、消費者のニーズがどこにあるかだと思います。ただし、当社が扱う包装容器は、中身が入っている時は価値がありますが、使い終わればごみになる。これは、サステナブルな社会の実現のために答えを見つけなければならない課題となります」。

今後は、包装容器をどう資源化していくかが重要になる。CO2削減も含め、同社ではバリューチェーン全体で環境負荷を低減していくプラットフォーム作りを推進。次世代環境配慮型飲料缶システムの構築などについて、取引先なども含め、検討を開始している。

2050年を見据えた長期経営ビジョン2050「未来をつつむ」の策定には、次代を担う20代~40代の意見も取り入れた。新しい展開を生み出すべく、スタートアップ企業との連携にも積極的だ。例えば現在、シンガポールの培養エビ肉ベンチャーとも協業している。その窓口の役目も担うシンガポール支店のスタッフは、社内公募で手をあげた社員から選出した。

2021年からの中期経営計画を3カ年ではなく5カ年にしたのも、3年で結果を出すとなると、チャレンジしにくく、従来の発想から出ることができないと考えたからだ。

大塚氏は、自社の新規事業については、「5年というスパンで、ある程度時間を取ることで、チャレンジしやすい仕掛けを作っています。今後は、社会の多様なニーズに柔軟に応えていきつつ、これまでのモデルである大量生産もDX時代に合わせブラッシュアップしていきます」と話した。既存の大量生産と、多様化に合わせた多品種小ロットの両面で、バランスの取れた事業展開を進めたいと考えている。

 

大塚 一男(おおつか・いちお)
東洋製罐グループホールディングス 社長