愛媛県宇和島市の宇和島プロジェクト みかんブリが国内外でファン獲得し輸出急伸
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年3月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
愛媛県は瀬戸内海と宇和海に面しており、魚類養殖生産量は45年連続で全国一を誇る。入り江の多いリアス式海岸が続く宇和海では、風や波の影響を受けにくい温暖な環境から海面養殖が盛んだ。2010年に設立された宇和島プロジェクトは、宇和海水産物の生産から加工・販売までを一貫して手がけている。木和田権一社長は「愛媛・宇和島の漁業を根底から支えたい」という思いを胸に、魅力ある商品開発に挑戦するとともに、水産業全体の競争力を高めていく構えだ。みかんの皮を餌に混ぜて育てた「みかん魚」のオリジナル商品を開発し、全国各地や海外への販路拡大を推進。小売りからも高い評価を受け、大手チェーン始め多くの量販店、飲食店に展開している。中国が2023年8月に日本産水産物輸入を停止した後に、国の支援で北米シフトを進めたことも功を奏した。2026年9月期の業績予想では、売上高は前期比27.4%増の52億円、海外への輸出比率は前期の15%から31%に急伸すると見込んでいる。
餌にみかんの皮混ぜる 海の幸と山の幸コラボ
「みかん魚」には、ジュース工場で廃棄していたみかんの皮や搾りかすを養殖魚の餌に混ぜて与えている。愛媛県の研究機関が魚の鮮度劣化を防ぐ狙いで、試験的に養殖して同社に持ち込んだのがきっかけとなり、2012年に「みかんブリ」が誕生した。ほのかな柑橘系の香りがつき、魚特有の臭みが苦手な女性や子どもにも受け入れられた。翌13年以降に「みかん鯛」、「宇和島サーモン(みかん銀鮭)」も商品化している。みかん魚の開発事業で、「第7回フード・アクション・ニッポン アワード2015」最優秀賞を受賞した。宇和島プロジェクトは地元漁業協同組合の下部組織として2004年に発足。2010年に合同会社宇和島プロジェクトとなり、2012年9月に株式会社に移行した。創業者である木和田社長は、漁業とみかん栽培という「半農半漁」の家の長男に生まれた。幼い頃から豊漁時には早朝手伝い、みかんがなる11~12月には休日も収穫に追われた。「それが嫌で地元の漁協職員になった」と苦笑いしつつも、みかん魚の誕生によって「海の幸と山の幸をコラボできたらという願いがかなった」と話す。地域資源を最大限に活用することが地域創生につながると説く。
北米へ積極的に販路開拓 日本食人気が追い風
宇和島プロジェクトの輸出金額は現在、95%をブリ(ハマチ)関連で占めている。ブリはマグロ、サーモンと並んで「三種の神器」といわれる。サーモンはノルウェーが北欧の海で養殖して世界に供給しているのに対し、ブリは事実上、日本でのみ養殖できるのが強みだ。「ブリは海水温30度以上になると餌を食べなくなる一方、10度以下になると死んでしまうから」と、木和田社長は説明する。ブリに経営資源を集中させる輸出戦略を進めており、3年ほど前に約5%だった輸出比率が2026年9月期は3分の1に達すると見込んでいる。ALPS処理水の海洋放出を理由として、中国が日本産水産物の輸入を禁止したのを契機に、北米中心に販路を転換した。今期の輸出先はアメリカが3億2900万円で最も多く、全体の55%を占める見通し。次いでアジア(38%)、カナダ(4%)、その他(3%)と続く。海外からの訪日客が日本食を体験し、帰国後も日本食を求めるなど海外市場で和食食材の需要が高まっている。ラスベガスやハワイ、ボストンでのシーフードショーなどに積極的に参加したり、様々な商談の機会を利用したりして海外販路を開拓している。みかんブリへの評価が高く、大量受注に結び付いているという。木和田社長は「ジェトロ(JETRO)などの支援を受けてアメリカに舵を切ったおかげで、中国市場の再開がなくても持続的な販路ができた」と、手ごたえを感じている。ブリ、鯛を中心にブランド価値を確立した「みかん魚」の生産には、宇和海の養殖業者11業者に委託しており、「まだまだ増える」と力を込める。
漁船で直接搬入OK 新本社工場、供給能力アップ
2022年に本社工場が完成し、供給能力が強化された。宇和島港の岸壁に隣接しており、トラックによる搬入に加えて漁船での直接搬入にも対応できる。本社1、2階にある加工場で、高い鮮度を維持したまま加工される。大容量の原魚一次ストック(冷蔵庫)をはじめ高性能な機器や設備の導入によって、安心・安全・高品質な生産体制を実現している。3階がオフィスになっている。
従業員は「若い・女性・国内外からの移住者」特徴
宇和島プロジェクトの従業員92人のうち、半数以上は20歳代、30歳代の若手中心だ。また、水産業は男性のイメージが強いが、従業員の7割を女性が占める。木和田社長は「実際の購入者は女性が多いため、商品開発では男性目線中心からの転換も必要」と話す。実際、みかんブリの開発も、男性には不評だったのに対し、女性は「絶対に世に出すべきだ」と肯定的だったという。さらに、従業員の3分の1は愛媛県外や海外からの移住者となっている。水産業界で活躍する女性の姿を象徴するのは、2019年からイベントでマグロ解体ショーを実演する「サバキ女子」による活動だ。干物店を営む家業を継ぐため、水産の実務や経営を一から学ぶために県外から入社した女性など4人で構成する。アメリカや国内各地のイベントに招かれ、ダイナミックな包丁さばきを披露している。また、インドネシアから技能実習生のほか日本語が流暢な高度人材も働いている。イスラム教徒への配慮として、ハラール認証を取得し、本社には祈祷スペースを設けた。
地元の高校水産科と連携、宇和島を盛り上げる
本社の対岸に校舎がある愛媛県立宇和島水産高校は、2024年度に創立80周年を迎えた。水産・海洋関連産業の担い手として多くの人材を輩出してきた。学校で水産缶詰や冷凍食品を製造し、アメリカなどへ輸出している。「フィッシュガール」と呼ばれる女子生徒が国内外でマグロ解体ショーを実演している。宇和島プロジェクトのサバキ女子は、同校のフィッシュガールが卒業後に社内で手を挙げて始まった縁もある。同校は2027年4月に統合によって宇和島南高校水産科となる。歴史ある校名は消えるが、2025年度から本格的に全国募集を始めた。それに合わせ、宇和島市と地元経済界で他の県立高生を含む84人収容の宿舎を整備している。木和田社長は宇和島商工会議所副会頭の立場で携わり、「この宇和島では水産好きな人を募集しながら教育の場をつくっていき、地域の活性化や人手不足の解消につながっていけばいい」と期待している。木和田社長は、企業理念である「食品を通じた当社のビジネスにかかわる人々との出会いを大切にし、そこにかかわり合うすべての人々の気持ちや生活を豊かにすることで、地域・産業・社会の発展に貢献する」ことを大切に、実践していく考えだ。
【企業情報】
▽公式サイト=https://www.project-u.jp/company/▽代表者=木和田権一社長▽従業員数=92名(2026年1月現在)▽資本金=2800万円▽創業=2010年
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