BOI 第1フェーズを総括 100のブルーアクション創出に向けて
海洋プラスチック、水産資源の枯渇、ブルーカーボン。待ったなしの海洋課題に共創で挑む一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブ(BOI)が3年間の第1フェーズを終了し、2026年3月13日に事業構想大学院大学で活動報告会を開催。30超の共創アクションを総括し、第2フェーズの全体像を共有した。
聞き手 : 小宮信彦 事業構想大学院大学 特任教授/電通 シニアイノベーションディレクター
海の課題解決へコミュニティ拡大
産官学民金の共創基盤が整う
BOIは2022年12月に設立されたブルーアクション・プラットフォームだ。海洋プラスチック問題や水産資源の枯渇、気候変動対応など、危機的状況にある「海」の課題解決に向け、産官学民金のあらゆるステークホルダーが共創する場として誕生した。
代表理事はサラヤ株式会社取締役の代島裕世氏、理事をシブサワ・アンド・カンパニー創業CEOの澁澤健氏、笹川平和財団理事長の角南篤氏、事業構想大学院大学の田中里沙学長、電通シニア・イノベーション・ディレクターで同大学特任教授の小宮信彦氏が務める。
設立当初12社だった会員数は3年間で114企業・団体に拡大。全体・分科会を合わせたコミュニティミーティングは30回以上を重ね、1回あたり平均100名が参加した。
第1フェーズ最大の節目は、2025年9月に大阪・関西万博のブルーオーシャンドームで開催した「BOIウィーク」だ。1週間の独自プログラムで約120人が登壇し、各分科会の共創アクションを国内外に発信した。
また、長崎県対馬市との連携協定に基づく「対馬未来フォーラム」には225名が参加し、フィールド拠点としての関係を深めてきた。
代島代表理事は報告会の冒頭挨拶で、着実に成果を上げてきたことを評価するとともに、「海のことだったらここ、と注目される団体にさらに成長していきたい」と意気込みを語った。
海の課題を包括的に捉え、多角的にアプローチする
技術・制度・意識変容まで
多角的なアプローチで現場から変革
BOIはテーマ別に分科会を設け、技術開発からコミュニケーション設計まで多岐にわたるアプローチで会員の相互連携による共創アクションを推進してきた。
海洋プラスチック分科会では、プラスチックのバリューチェーン全体を学ぶ勉強会を通して知識の底上げを図りながら、複数の共創アクションを生み出した。ダイフクとピリカが連携し、ロボットやAI技術を活用した河川漂流プラスチックごみの回収・調査を推進。海洋プラスチックがサーキュラーエコノミーの循環の外に置かれているという現状への強い問題意識を踏まえ、回収から再資源化・再製品化へとつなぐ仕組みの構築を急ぐ。
水産資源管理分科会は、過去50年間で生物多様性が73%低下したという現実を起点にアクションを展開。コールドチェーン分野では、サラヤとフィッシャーマンジャパンが急速冷凍機を用いた漁獲物有効活用の実証を実施。フルチェーントレーサビリティ分野では、北海道・歯舞漁協や石巻のマルカ高橋水産と連携し、水産物のトレーサビリティの世界標準規格であるDGSTに準拠したトレースの実証実験を今年2月に行った。養殖飼料の天然魚依存を解消する「無魚粉餌」の研究も継続課題として位置づけている。
32企業・団体が参加する最大規模のブルーカーボン分科会では、北海道から沖縄まで10〜15のプロジェクトが同時進行する。大阪湾では住友大阪セメントとレンゴーらが生分解性プレートおよび生分解性種糸を活用した藻場再生実証を展開し、大阪府が推進する「大阪湾MOBAリンク構想」の一翼を担う。対馬では使用済コーヒー麻袋に栄養塩を包んで投入し磯焼けを防ぐ地域資源循環の取り組みが進む。壱岐では五洋建設とアクアサウンドが水中音響技術で食害魚を遠ざけ藻場保全に挑んでいる。
海業・観光分科会は、廃漁港施設の貸し借りをつなぐ海業マッチングサービスがローンチ済みのほか、自然環境をビジネス視点から体系的に学ぶ「ネイチャーポジティブ・アカデミー」のオンライン講座も開講された。4月以降は「海業」を軸に据え、観光を含む海を起点とした地域活性化をより包括的に展開する。
ソーシャルコミュニケーション分科会は、「Thank Blue」「ありがとうを、めぐらせよう」をスローガンに、一般市民が海の問題に関心を持つ「入り口」づくりを重視する。海ごみ由来素材を使ったお守り「UMI-EMA」は住吉大社でも販売され、2,000人以上が手にした。「デザインにもこだわった。可愛い、楽しいという入り口から興味を持ってもらい、行動を変えるきっかけを作っていく」という。
次世代を見据える第2フェーズ
100のブルーアクション創出へ
第1フェーズ報告会の後、2026年4月から2030年にかけての第2フェーズの目標や体制について、小宮業務執行理事から発表があった。パーパスを「海の保全と開発を両立する、サスティナブルな未来社会を次世代に」とし、「次世代に」という言葉を今回新たに加えた。

第2フェーズのテーマごとのグループディスカッションも行われた
「サスティナブルな海の環境を我々が作るだけでなく、次の世代にしっかりバトンタッチすることを、より強く意識したい」と小宮理事は強調する。「SDGs14」「海の豊かさを守ろう」と「国連海洋科学の10年」が示す課題解決に貢献する100の「BOIブルーアクション」を生み出し、新たな海のエコシステムを構築することを目指す。
海の課題に関するより多様なアプローチを効果的に連携させていくため、第2フェーズでは、従来の分科会の上位に「テーマ」を設定する。海洋プラスチック、水産資源、ブルーカーボン、海業+デジタル+グローバル、ソーシャルコミュニケーションの5テーマのもと、ビジネス・地域・金融・アカデミア・メディアの各セクターが得意分野を持ち寄る共創スキームを構築する。

全国から参加者が集結し、分科会ごとの成果を共有した
また、共創アクションの進捗を可視化する「BOI ACTIONソーシャル・インパクト・チャート」を導入し、活動インパクトのエビデンス化と社会への発信を強化。「ブルーアクション」「ブルー共創拠点」「ブルーイベント」の新・3本の矢で、アウトカムを最大化する。
2026年は環境省が主催する里海関連イベントや大阪・関西万博のレガシーとなる海洋イベントの開催を予定しており、第2フェーズにふさわしい発信の機会が続く。小宮理事は「2025年の万博を通じて、世界から日本がものすごく期待されていることを改めて感じた。産官学民のオープンな共創と前例にとらわれないアプローチで、事業性と公益性を両立させたブルーイノベーションを起こし、世界をリードしていきたい」と力強く展望を語った。