埼玉発 歩行用装具から航空宇宙まで展開するUCHIDA軽くて強いCFRP製品成形で日本初を次々創出

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年4月14日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

鉄より10倍強く、重さは4分の1。それが、炭素繊維と樹脂の複合材料CFRP(炭素繊維強化プラスチックCarbon Fiber Reinforced Plastics)だ。株式会社UCHIDAは、国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)と共同で、CFRP製の二足歩行アシスト装具を開発して、2016年に仏パリで開催された複合材料業界の世界最大の見本市「JEC World2016」でINNOVATION AWARDを受賞。2025年3月に月面に到達した株式会社ダイモンの月面探査車YAOKIにも技術提供した。日本最先端の技術でCFRP成形を行っている会社で、内田敏一代表取締役兼CEOは「高精度、高耐熱、高品質を提供することにこだわり続けてきました。これからも軽くて強くて美しいものづくりを通じて社会に貢献したい」としている。

社屋の前に立つ内田社長(右)と落合取締役
社屋の前に立つ内田社長(右)と落合取締役

多分野で少量・高品質の試作開発に特化

UCHIDAは1968年、「内田工芸」の社名で、主にガラス繊維を使った繊維強化プラスチック(FRP)でマネキンなどを製作する会社として始まった。その後、自動車のバンパーやエアロパーツ、バイクの部品、デパート屋上の遊具などを手がけ、1990年代からCFRPを使った製品開発を始めた。一般への販売よりも試作開発に特化しており、少量、高品質のものづくりを重視。自動車や航空宇宙、防衛関係の製品のほか、アート作品も幅広く手がけている。

たとえば二足歩行アシスト装具。落合隼平取締役COOは「障害者向けの装具というと動きを補助するパワースーツなどが一般的ですが、私たちの製品はあくまでリハビリをサポートする装具です。これまでの装具は主に金属製で、重たくて扱いにくいことが難点でした。その点、CFRPで作ると、軽くて丈夫。利用者にとって使いやすいものになっています。2021年開催の東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火リレーでもこの装具を装着した人が歩き、世界へ発信することができました」と語る。

パリで開催された「JEC World 2016」で、INNOVATION AWARDを受賞。和服姿で賞を受け取った内田社長
パリで開催された「JEC World 2016」で、INNOVATION AWARDを受賞。和服姿で賞を受け取った内田社長
CFRPの特性をいかした二足歩行アシスト装具
CFRPの特性をいかした二足歩行アシスト装具

また、三浦医工デザイン株式会社(埼玉県東松山市)と共同で、子供の足の変形矯正などのために使われる短下肢装具も開発。落合取締役は「これまでの素材は主にポリプロピレンで、使用しているうちに割れてしまうことが多かった。その点、CFRPは薄くて軽く、強度が強い。医師の処方に従い、ユーザーそれぞれの足に合わせたオーダーメイドで生産しています。樹脂といっしょに着色塗料を入れるので、塗装するよりも安く、ユーザーの希望する色にできます」という。

子供の足の変形矯正などのために使われる短下肢装具。利用者に合わせてオーダーメイドで作られる
子供の足の変形矯正などのために使われる短下肢装具。利用者に合わせてオーダーメイドで作られる

月面探査車YAOKIのボディ製造を担当

YAOKIには、開発したダイモンから、計画への参画を持ちかけられ、2021年に業務提携契約を締結した。大きさ15センチ×15センチ×10センチ、重さ498グラムという、手のひらに乗せられるほど超小型で超軽量、高強度の月面探査車で、UCHIDAはボディ部分の製造を担当した。2025年2月にアメリカの民間企業インテュイティブ・マシーンズが打ち上げたミッションで月面に運ばれた。ダイモンは、月面基地建設を目指すNASAのアルテミス計画との連携を目標としている。「私たちが関わった製品が今も月面にいる。大きなロマンを感じ、月を見る目が以前とは全然違っています」と落合取締役は感慨深そうに語った。

ダイモン社が開発したYAOKI
ダイモン社が開発したYAOKI

子供向けに、走る楽しさを感じられるよう、カーボン製のインソール「BAKU SOLE(バクソール)」も製造。こちらは自社でネット販売している。「きっかけはコロナ禍でした」と落合取締役。「私には中学生から保育園児まで4人の子供がいますが、コロナ禍でみんな家にいて、運動ができませんでした。そんな子供たちに笑顔になってもらいたかった。子供たちは足が遅いので、走るのをアシストするインソールをCFRPでできないか、と思ったのが開発のきっかけです。埼玉県立大学の協力も得て開発しました。カーボンの反発力で効率的に走りをサポートします」

作業自動化や素材再生利用で、最先端のものづくりを

今後、力を入れていきたいことについて落合取締役に尋ねると「主に3点を重視していきたい」と答えた。

まずは製品の型を3Dプリンターで作ること。一般的にCFRP製品の製造には、石膏ボードで型を作っているが、「原材料が値上がりしてコストがかかるうえ、使ったあとは再利用できず、埋め立て廃棄するしかありませんでした」と落合取締役。そこで今後は3Dプリンターを使って型を作ることを主流としていく計画だ。素材は樹脂ペレットで、使用後も再利用可能。製造にかかるコストも時間も大幅に短縮できる。

型を作る大型の3Dプリンター
型を作る大型の3Dプリンター
熱と圧力で製品を硬化させる「オートクレーブ」の前に立つ落合取締役。直径3メートル、奥行き6メートルと国内最大級の大きさだ
熱と圧力で製品を硬化させる「オートクレーブ」の前に立つ落合取締役。直径3メートル、奥行き6メートルと国内最大級の大きさだ

次に仕上げ作業の自動化。磨きなどの最終的な仕上げは人の手で行っていたが、今後はロボットで自動的に行えるよう設備と人材を増やしていく考えだ。

3点目は電気自動車のF1とも言われる「フォーミュラE」。クラッシュしたボディの再利用化に取り組んでいく。「フォーミュラEで使う車のボディは、クラッシュすると廃棄するしかありませんでした。素材であるCFRPから炭素繊維を取りだし、それを再生利用すれば、フォーミュラEが大切にしているサステナビリティの精神にもつながります」

従業員45人ながら、軽くて強いCFRPの特性をいかして、自動車、バイクから医療、防衛、航空宇宙関係まで幅広い分野で、唯一無二の製品を開発・製造している。「これからも『日本初』にこだわり、最新技術でものづくりをリードしていきたい」と落合取締役は話している。

【企業情報】
▽公式サイト=https://UCHIDA-k.co.jp ▽代表者=代表取締役兼CEO 内田敏一 ▽従業員=45人 ▽資本金=5000万円 ▽創業=1968年10月

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