改正物流効率化法、企業の7割が「内容知らない」 荷主の認知不足浮き彫りに
株式会社帝国データバンクは、全国2万3,083社を対象に、2026年4月1日に全面施行された「改正物流効率化法」に関するアンケート調査を実施した。有効回答企業数は1万538社で、回答率は45.7%である。調査期間は2026年4月16日から4月30日にかけてインターネット経由で行われた。本調査により、同法の認知度や企業が重要と考える物流改善対策において、運送側と荷主側の意識に大きな乖離があることが判明している。
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全面施行も進まぬ認知、主要荷主では2割以下にとどまる
2026年4月1日に全面施行された改正物流効率化法では、一定規模以上の特定事業者に対して中長期計画の作成や定期報告が義務付けられている。これに先立ち、2025年4月にはすべての荷主および物流事業者に対して物流効率化に向けた取り組みが努力義務として課されていた。
しかし、同法の認知状況を尋ねたところ、制度の内容を含めてよく知っているは2.8%、制度の内容を含めてある程度知っているは14.0%にとどまり、これらを合わせた『内容を知っている』企業は16.8%と2割に満たない低水準であることが判明した。一方で、名前は聞いたことがあるが制度の内容は知らないが33.7%、知らない(名前も聞いたことがない)が35.9%となり、合計すると『内容を知らない』企業は69.7%と7割近くに達している。
前向きな動きとして、機械製造業者からは改正物流効率化法を規制への対応ではなく、持続可能で効率的なサプライチェーン構築に資する取り組みと捉えているという声や、出版・印刷業者からは法律の内容に対する理解を深めるとともに自社で納品可能な体制や分納の仕組みづくりが必要という意見が寄せられた。その一方で、実務を担う運輸・倉庫業者からは、適正な運賃での取引が実現していないにもかかわらず制度だけが先行しているという指摘や、現場の実態とかけ離れており机上の空論に感じるという厳しい声も上がっている。
企業規模別で『内容を知っている』割合を見ると、取り扱う貨物量が比較的多い傾向にある大企業は23.9%と全体を7.1ポイント上回った。業界別では、トラック運送など物流事業者が多くを占める運輸・倉庫が61.8%と突出して高い。他方で、原材料調達から出荷まで物流依存度の高い荷主側である製造は20.2%、卸売は18.7%と全体を上回ったもののいずれも2割前後にとどまっている。また、主に着荷主として物流との接点が多い小売は9.2%と全体を下回り、認知の低水準さが顕著となった。小売業者の中には、初めて知ることだったので今から自社で何ができるか検討したいという声もあり、荷主の間でも特に着荷主中心の業界で認知が進んでいない実態が浮き彫りとなっている。
重要な対策は「事業者間の連携」が最多、運送側と荷主側で意識差
働き方改革に伴う2024年問題やドライバー不足による物流停滞が懸念される中、重要と考える対策や取り組みにおいて、関係事業者間での連携の強化が39.3%でトップとなった。運輸・倉庫、製造、卸売のいずれの業界でも4割に達しており、物流課題は自社単独では解決しにくいとの認識が広がっている。次いで、混雑日時の回避、発送量や頻度の見直し、復荷などを含む配送・運行計画の最適化が24.4%、リードタイムの確保が23.5%と、物流量やタイミングを調整する運用面での対応が続いた。さらに、これらを支える手段としての側面を持つデジタル技術の活用による業務の効率化も21.7%と上位に位置している。
具体的には、建設・一般管工事を営む企業から取引先との納品期日の確認については今まで以上に詳細に取り決めていきたいという方針や、電気機械製造業者から運送会社に対して早い段階での輸送計画を立てられるよう専用のアプリを用いて情報共有を実施し、同時に顧客へはトラックの待機時間1時間以内への協力を要請しているという先進事例が報告された。また、飲食料品・飼料製造業者からは、トラック輸送から鉄道・船舶へのモーダルシフトを強化し、配送の大口化や共同配送、拠点倉庫への送り込みロットの見直し、パレット導入、納品リードタイムの変更などにより、配送コスト削減とドライバー負荷軽減をすでに進めていることが報告されている。
一方で、物流に関する責任者の選任は5.3%、輸送用器具の活用による効率化は7.3%、荷役作業が円滑に行える環境整備は9.8%にとどまり、組織体制の整備や現場における荷役作業の効率化に関する項目はいずれも低水準であった。
物流事業者である運輸・倉庫と、主要な荷主である製造、卸売、小売の荷主事業者を比較すると、運輸・倉庫では多くの項目において重要とする割合が相対的に高く、課題意識の高さが幅広い分野で見られる。なかでも、運輸・倉庫の割合が荷主事業者すべてを10ポイント以上上回ったのは、繁忙期と閑散期の平準化、荷役作業が円滑に行える環境整備、社内教育体制の整備であった。一方で、リードタイムの確保のみは荷主事業者を下回っており、物流事業者と荷主事業者との間で重要と考える対策に違いが生じている。
食料品卸売業者からは、着荷主が午前中のみの受け入れとするなどの課題があり改善が必要という意見が上がったほか、運輸・倉庫業者からも、発送量や納入量の適正化、適切なリードタイムの確保、発荷主と着荷主の意識改革を求める声が複数聞かれた。さらに、運送料金を引き上げて従業員の賃金改善につなげることや、物流現場の実態を踏まえて積極的に労働ができる環境づくりに向けた法整備を進めるべきだという指摘もあり、ドライバー確保や労働環境の改善に向けた取り組みの重要性も浮き彫りになっている。
2030年問題を見据えた全社的対応と意識改革の必要性
同改正法では、一定規模以上の貨物輸送量や車両数を有する企業に対して義務が課される一方、それ以外の企業には努力義務にとどまっている。そのため、回答企業の85%が中小企業である本調査では、法改正に対する認知が十分に進んでいない結果になったと考えられる。
しかし、2030年には国内で輸送される9億トン超の荷物が運べなくなるとされる、いわゆる物流の2030年問題が懸念されている。このような事態を回避するためには、企業規模を問わず、物流に関わるすべての企業が対応を進めることが不可欠である。さらに、こうした取り組みは企業にとっても、配送コストの削減やサービス品質の向上といった効果が期待される。
今後は、デジタル技術の活用による自動化や効率化に加え、物流事業者におけるドライバー確保に向けて賃上げ原資を確保するための価格転嫁を進めやすい環境整備の強化など、多岐にわたる取り組みが重要となる。また、物流事業者と荷主の連携強化とともに、消費者側でも配送に関する買い物習慣の見直しといった意識改革が求められている。