東日本大震災からの復興を機に実現させた、持続可能なカキの養殖

宮城県南三陸町戸倉地区におけるマガキの養殖が元気だ。県漁協のカキ生産部会は2016年に日本初の「ASC認証」を取得し、産業としての成長と環境配慮の両立を目指した取り組みを進めている。カキ生産部会会長の後藤清広氏に、東日本大震災からの復興の道のりと、今後のビジョンを聞いた。

後藤 清広(宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉出張所カキ生産部会 会長)

震災で余儀なくされた再出発
悪循環からの脱出を図る一歩に

志津川湾の南部に位置する宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉出張所は、ギンザケ、ワカメ、カキ、ホタテ、ホヤなどの養殖業を中心に、東日本大震災前は約12億円の水揚げがあった。だが、震災で南三陸沿岸の水産業は文字通り壊滅的な影響を受けた。戸倉出張所のカキ生産部会では、養殖設備も全て津波で流され、一時は再開が危ぶまれたが、ここで同部会は大胆な策に出た。震災前の状態を目指すのではなく、養殖施設の数を大幅に削減しようという決断だった。

「実は、南三陸のカキ養殖は、震災前から多くの課題を抱えていました。年々身入りが悪くなり、出荷できるサイズ(約10グラム)に成長するまでに3年もかかるようになっていたのです。カキは比較的高く売れていたため、どうしても生産を増やしたくなり、養殖いかだが過密状態になります。そのため成長に時間がかかるようになって、もっといかだを増やそうという悪循環にはまっていました」と後藤氏は振り返る。

震災前は、漁場の過密さには気づきつつも、30名以上の生産者を抱えるカキ生産部会での意識合わせは難しく、改善には至らなかった。そこで震災後、後藤氏は「どうせ復興を目指すなら、思い切って養殖いかだの数を減らそう」と提案。だが、漁業権という既得権益が絡んでいることもあり、合意形成は容易ではない。「台数を減らしても身入りが良くなるとは限らない」「生産量が落ちては生活が立ち行かない」など、不満の声も少なくなかった。

「話し合いを何度行ったかわかりません。何とか長い議論を経て、試しに1年だけいかだの数を減らしてみよう、それでダメならもう一度考えるようということで、納得してもらいました」

ようやく合意を取り付け、以前は5〜15メートルしか取っていなかったいかだの間隔を約40メートルに拡大し、いかだの数を震災前の3分の1の350台にまで削減した。

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