既存顧客を失っても改革を遂げる 愛犬家が殺到する旅館

愛犬と泊まれる宿として高い人気を集める伊豆長岡温泉の旅館「八の坊」。愛犬家にフォーカスしたリニューアルを断行し、コロナ禍からのV字回復を成し遂げた。次のターゲットは愛犬連れ訪日外国人宿泊客「イヌバウンド」の開拓だ。

望月 敬太(八の坊5代目、小松屋専務)

愛犬ファーストな宿へ
団体客依存から脱却

静岡県・中伊豆に位置し、1300年もの歴史を持つ伊豆長岡温泉。周辺エリアには、2022年に放送されたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公、北条義時ゆかりの地「願成就院」や世界文化遺産「韮山反射炉」、富士山を望む「伊豆パノラマパーク」などの観光スポットも多数存在している。大河ドラマ特需に沸く伊豆長岡温泉だが、エリア全体の旅館数はピーク時の60軒から半減している。

「当館がある温泉場出逢い通りでは、旅館は7軒から3軒に減少しました」と話すのは、この地で大正2年に創業し、今年110周年を迎える温泉旅館「八の坊」の専務で5代目の望月敬太氏。バブル崩壊後の急激な旅行客の減少や、団体客から個人旅行者へのシフトで、団体客が中心だった旅館の多くは厳しい経営状況に。さらに、2020年以降のコロナ禍が大打撃を与えた。廃業を選ぶ旅館は多く、日本全体の旅館の数は25年前から4割以上減少している。

望月氏は2015年の入社以降、料理長を入れ替えるなどの改革により、料理とおもてなしが名物の高品質な宿づくりに取り組んできたが、コロナ禍の影響は想像以上だったという。さらなる改革に向けて、各部署選抜メンバーを集めた「Runner会」を発足させ、膝を突き合わせて議論を行ってきた。「その結果、仕事で一番楽しいときは、愛犬連れの個人客を接客している時だと皆が気づいたのです」

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