田川産業 伝統の漆喰技術からイノベーションを生み続ける
2024年に創業100年を迎えた田川産業は、原料石の窯から最終製品に至るまでの一貫した製造設備を持ち、国内で自給可能な石灰資源の応用と漆喰の技術開発をコアテクノロジーとして革新的な製品を送り出している。100周年の節目に4代目社長に就任した行平史門氏に、事業変革と今後の展望を訊いた。
行平 史門(田川産業 代表取締役社長)
多機能な「漆喰」に
手軽さとデザイン性を付加
日本は石灰資源に恵まれており、国内で完全自給できる資源の1つである。日本の伝統的な建材である漆喰は、調湿・消臭・抗菌・不燃性といった特性を持ち、古来より、城郭や土蔵など、重要な建築物の壁に使われている。近年では、住宅や商業施設等でエコ素材として使われている。
福岡県田川市は福岡県中央部の筑豊地域にあり、かつては炭鉱が多く、石炭を多く産出して日本の産業を支えていた地域だ。石灰資源も豊富で、田川産業も年間1800トンの漆喰製品を製造し、国内トップシェアを誇っている。同社の漆喰製品は、大阪城、熊本城、小倉城、旧グラバー住宅(長崎県)をはじめとする200件以上の重要文化財や歴史的建造物の修復にも採用されている。
2024年に4代目社長に就任した行平史門氏は、同社の歴史をこう語る。
「創業は大正13年(1924年)、私の曾祖父にあたる行平七郎が、警察官として赴任した田川の地で事業を興したことがきっかけでした。漆喰は、元々は建築現場で、左官職人が原料である消石灰を水や糊の役目を果たす海藻などを混ぜて作っていました。これはとても手間暇がかかり、高度な技術が必要です。当社は、創業当初は漆喰の原料となる石灰や、ゴム産業に用いられる軽質炭酸カルシウムを製造する素材供給事業が中心でしたが、祖父の代に日本で初めての既調合漆喰『城かべ』を開発し、工業製品を手にしたことが大きなターニングポイントになりました」

漆喰の原料となる石灰の粉で全てが白く染まった田川産業の工場
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