有機農業100万ヘクタールへ 技術開発と販路の確保が重要

生産性の向上と、自然生態系の保全を両立できるとして期待される有機農業。社会の持続可能性に注目が集まる中、日本でも有機農業の耕地を増やす取組が始まった。有機農業の技術革新、消費者の理解、流通の改善が、目標達成には欠かせない。

藤田 正雄(NPO法人有機農業参入促進協議会 事務局長)

農林水産省「みどりの食料システム戦略」は、2050年までに全国の有機農業面積を100万ヘクタールに拡大するという数値目標を打ち出した。有機農業の普及活動と、そのための人材育成などに取り組んできた有機農業参入促進協議会に、国内の有機農法の現状や普及のカギを聞いた。

公的な取組も、増えない面積

個々の農地の状況に合わせた観察に基づき、周囲の生態系を活用して展開する有機農業は、環境負荷が小さく、持続可能性が高い。日本で有機農業が注目されるようになったのは、高度経済成長期が終わった1970年代半ば。急速な近代化に伴う公害の発生から、環境汚染や食の安全への社会的関心が高まったのと同じ時期だ。安全な食を求める消費者と農家が協力し、農薬や化学肥料の使用量を減らす、あるいは全く使わない農業が各地で開始された。

その後、2006年度には有機農業推進法が制定され、自治体も地域と協力しつつ、有機農業を広めていくことになった。なお有機農業の定義として、同法では「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定めている。さらに、農水省は2014年4月、「有機農業の推進に関する基本的な方針」を更新し、有機農業の面積の割合を、方針策定当時のおよそ倍、全耕地の1%にする、という目標を立てた。

しかし、「当初、実現が楽観されたこの目標値ですが、まだ達成できていません。有機農業に取り組む農家を増やすためには、多くの課題を解決しなければならないと考えています」と有機農業参入促進協議会事務局長の藤田正雄氏はいう。

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