学校ICT環境整備で教育の質を高める

西宮市教育委員会は2015年度、公立学校の普通教室等の無線LAN環境の整備と、4800台の教育用タブレット導入を行った。タブレット等のICTを活用した新たな授業スタイルにより、教育の質を高めることが狙いだ。

タブレットを活用して算数の授業を行っている

「ミラーリング」でフレキシブルな授業が実現

西宮市教育委員会は関西圏でいち早くICT環境の整備に取り組んできた。2009年度に市内全校の校内LANを完成させ、全職員に校務用パソコンを配備。2012年度には全中学校、翌年には全小学校に指導者用デジタル教科書を導入。出席簿・通知表・指導要録・健康診断票等の電子化も完了している。

そして2014年度に、校務用パソコン2614台を更新。2015年度には、普通教室など1415カ所で無線LAN環境を整備し、教育用タブレット4800台を導入した。

同教委学校教育部長兼学校情報システム課長の星川雅俊氏は、「校務用パソコンの更新時期を迎えたこともあり、ICT環境をさらに高度化し、教育の質を高める方法を検討していました。縁あって地元に本社を置く古野電気の関連企業から提案を受け、性能面や保守面、予算面などについて総合的な検討を重ねた結果、フルノシステムズ社製の動画対応アクセスポイントを採用しました」と経緯を話す。

星川雅俊 西宮市教育委員会 学校教育部長 兼務 学校情報システム課長

導入したアクセスポイントは、タブレット端末の画面を、そのまま無線経由で大画面テレビや電子黒板などに写せる「ミラーリング」という機能をもつ。教師は立ち位置がパソコン設置場所に制約されず、タブレットを手に教室内を自由に動きまわれるようになる。また、生徒たちは従来、ノートや作品などを手に大画面テレビ付近に設置されている書画カメラ(実物投影機)まで移動していたが、ミラーリングでその手間が省ける。生徒への個別指導を充実させ、協働学習を加速することで、教育の質が高まるといった利点が期待できる。

大規模一斉整備が肝心に

非常に大規模なICT環境の整備を行った西宮市教育委員会だが、星川氏は「全市一斉に、共通の仕組みをつくることが大切です」と言う。「教職員の異動も多いため、学校によりICT環境に大きなズレがあっては、その都度多大なストレスを抱えさせてしまう原因にもなりかねません。予算を確保した上で導入するからには、しっかりと活用しなければいけない。モデル校を指定している自治体は多いですが、モデル校以外では活用が進まないという状況に陥らないようにすることが大切です。また、最新のICT環境を充実させる前に、まずは教職員のICTスキルをしっかりと高めることが先決。西宮市ではそこに早くから取り組んでいたため、今回の大規模なICT環境の変化にも自然に順応いただき、円滑な利用につながっていると思います。」

こうしたインフラ面の整備に加えて、デジタル教科書をはじめとしたコンテンツを充実させることなどハード・ソフトの双方をバランスよく整えることが最も大事だと言う。また、導入後は子供たちがICT機器を自主的に管理するよう促す工夫も必要。西宮市では、タブレット本体と充電式専用クレードルに、地元ゆかりのイラストを施した管理用シールをペアにして貼ることで、子供たちが絵合わせのようにして楽しみながら、機器の準備、片付けができるように工夫し、教員の管理負担軽減につなげている。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り1%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。