進化する老舗石鹸メーカー ベンチャー型事業承継で成長

大正13年創業の老舗石鹸メーカー「木村石鹸工業」。確かな技術を持ちながらも、厳しい値下げ交渉などにより、経営環境は悪化していた。そのような中、事業を承継した木村祥一郎氏は、新規事業・ブランドづくりを推進し、会社を成長させている。

職人が油脂を煮固める「釜焚き製法」にこだわって石鹸の製造を行っている

大阪府八尾市に本社をかまえる木村石鹸工業は、今もなお、職人が手作業で「釜焚き製法」によって石鹸を製造。高い品質基準、安全基準が要求される生協・コープ向けの洗剤・化粧品といった家庭用品や、クリーニング店等で使われる業務用洗浄剤などの業務用品を自社で企画開発から製造まで担っている。海外進出にも取り組んでおり、近年では急成長している中国EC市場を通じた輸出も手掛けている。

同社を率いるのは木村祥一郎氏。学生時代にIT企業イー・エージェンシーを創業し、副社長として18年間経営。2013年に家業である木村石鹸工業に入社し、2016年に代表取締役社長に就任した経歴の持ち主だ。OEMを中心とした不安定な経営環境を改善するために、新規事業・自社ブランドを立ち上げ、社内に新風を吹き込んでいる。

木村 祥一郎(木村石鹸工業 代表取締役社長)

「毎年値下げを要求され、売上が落ちていく中、新規事業・新しい販路が必要でした。今の会社の規模ではドラッグストアやホームセンターのように大きな市場では戦えません。そこで、今の規模で対応でき、手間がかかるため大手が敬遠する雑貨屋・インテリアショップ向けのブランドを開発しました」

新ブランドの名前は「SOMALI」。植物オイル100パーセントの純石鹸から作られたハウスケアアイテムであり、台所用石鹸、バスクリーナー、トイレクリーナー、洗濯用液体石鹸、衣類のリンス剤の5つのハウスケアアイテムからなる。

挑戦する社風づくり

新ブランドの立ち上げについて、「プロジェクトメンバーは、私と開発担当者、ネット担当者の3人でした」と小規模のプロジェクトであったことを木村氏は明かす。「社員にいきなり協力してもらうのは無理なので、最初は凄く少人数のチームで動き、小さな成功でも良いので社内にきっかけを与えるようにしました。その時、責任の取れる人がやることが重要です」新規事業に前向きな社員が揃うベンチャー企業とは異なる風土を持つ中小企業から新規事業を生み出す難しさがうかがえる。

そのような事情もあるからか、「SOMALI」のサンプルができた段階で社内の営業担当者に見せたところ、一般に流通する商品よりも数倍値段が高いことなどが理由で、非常にシビアな反応だったという。

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