柚りっ子 捨てられていた柚子を「宝の山」に変え、独自のゆずみそを開発
一般事務として定年まで勤めながら3人の子どもを育てあげた後、経営の経験が一切ないなかで66歳のときに突如として起業した三澤澄江氏。そのきっかけは、徳島県のどの家庭でもつくられるゆずみその原料である柚子が、産業廃棄物として捨てられている実態を知ったことだった。
徳島では一般的なゆずみそ
独自の工夫を加えて評判に
農薬不使用の徳島県産柚子だけを使い、砂糖や味噌の原料である米・大豆も国産100%にこだわったゆずみそ「柚りっ子」。2007年に製造・販売が始まり、その数年後には徳島県物産協会が主催する「阿波の逸品」選品会で「特選」に、その後徳島県が認定する「とくしま特選ブランド」に認定され、県の特産品の1つになっている。
創業者の三澤澄江氏の経歴は異色だ。3人の子どもを育てながら県食糧卸協同組合で定年まで働き、それから10年が経過した66歳のときに株式会社柚りっ子を立ち上げた。
「定年後は好きだった歌を楽しむために歌声喫茶を立ち上げ、数十人集め毎月歌っていて、あるとき1000人で歌う歌声喫茶を企画しました。大ホールの会場を借りて、コーラスグループにチケットを売ってもらうのですが、そのお礼に私がつくったゆずみそを差しあげていたんです。味噌と砂糖を炊き合わせて柚子を混ぜて簡単につくれるので徳島の家庭ではどこでもつくっているものです」
ただ、三澤氏のつくるゆずみそは一般家庭のそれとは一味違った工夫が施されていた。通常はすり下ろしたり刻んだりしたゆず皮と、味噌と砂糖を混ぜてつくることが多いが、そこに柚子の果肉と果汁も入れた。
「果肉は使わずにゴミになってしまうのがもったいないし、食物繊維も取れていいと思っていました。種を取るのが面倒だからやる人はいませんが、果肉をすりつぶしてペースト状にして混ぜてみたらおいしかったんです」
その差別化が評判を呼ぶ。高齢で食事を満足に食べられなくなった人も食べられる、風邪を引いたときにおかゆに乗せて食べたら体調がよくなったなど、多数の声が三澤氏の元に届いた。とはいえ、それがすぐに起業に結びついたわけではなかった。
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