社会起業家を支える SIMIが進めるインパクト投資の人材育成

「社会的インパクト」を中核に置いた事業運営が、企業や金融機関ほか様々な組織に求められている。この変化を起こす一端を担ったのが、2016年に設立された社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)。2022年からは、金融機関や資金提供者を対象に「インパクト・アナリスト研修」を開催している。

一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)代表理事 今田 克司氏

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)は、国内の多様なセクターに所属する人たちが「社会的インパクト」を共通言語として理解し、インパクト志向によって社会課題を解決するまでのプラットフォーム(共創基盤)の確立を目指し、2016年6月に設立された。よりよい社会をつくるための活動をビジネスの枠組みを生かして拡大する、社会的起業家が増え始めたことが背景にある。国内外でNPOマネジメントに関わってきたSIMI代表理事の今田克司氏は、「国内では人口減少・高齢化が進展し、課題がますます複雑化、多様化しています。社会的インパクトを可視化することで人材、資金を呼び込み、より良い日本社会への変革のチャレンジを促したいと考えています」とSIMIの役割を説く。

SIMIの事業の柱は、2016年以来毎年開催しているソーシャルインパクトデー。2023年2月に開いたソーシャルインパクトデーでは、「新しい社会経済の形、インパクト・エコノミーの社会実装」をテーマに、「インパクト・エコノミーは、従来の私的な経済的利益追求型の資本主義に対するオルタナティブ(代替)になりうるのか。そのために、誰が、何をしていくのか」について議論を深めた。「毎年参加者が増えており、インパクト志向が広く関係者に浸透しつあることを実感しています」と同氏は語る。

理念を重視したアナリスト研修
WHYとWHATをまず学ぶ

社会課題解決に本来業務で携わるアクターが、従来の行政機関や非営利組織に加えソーシャルベンチャーや大企業へと拡大していくにつれ、そのための資金調達が課題となっている。フィランソロピーや助成金に加え、金融機関などからの借入(デットファイナンス)、新規株式発行による投資家からの資金(エクイティファイナンス)を中心に、社会的インパクトの考え方を踏まえた資金調達の促進、すなわち「インパクトファイナンス」の定着が不可欠だ。中でもインパクト投資は、新しい基準で企業の将来的な価値や可能性を判断することになるため、金融機関・投資家の教育や情報提供が必要になる。

金融庁でもこうした時流をとらえ、金融・市場関係者及び行政のインパクト投資への理解を深める目的で、「インパクト投資に関する勉強会」を2020年から実施している。委員として参加した今田氏が、その中で得た気づきも含め2022年からSIMIで取り組んでいるのが「インパクト・アナリスト研修」だ。「金融関係者は実務家が多く、インパクトをどう評価、測定するかをすぐ考えてしまいがち。HOWの前にWHYとWHATを学ぶことが大切だと考え研修プログラムをつくりました」と経緯を語る。

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