公文教育研究会 ソーシャル・インパクト・ボンド活用、事業者の利点

「公文式」で全国に教室を展開する公文教育研究会は、国内でいち早くSIBによる事業に取り組んできた企業だ。公的資金の有効利用、行政コスト削減効果が強調されるSIBだが、民間事業者側にもメリットがある。高齢者の脳機能向上と、少年院出院者の再犯防止に向けたプログラム事例を見てみよう。

公文教育研究会ライセンス事業推進部部長の三好 健太郎氏(左)、
同学習療法センター普及サポート部部長の橋口 健氏

公文教育研究会は、「公文式」の学習法で教室をフランチャイズ展開している企業として知られている。児童・生徒の学力に応じた学習法は、国内だけでなく海外にも広がっている。同社はまた、国内でいち早くソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)利用に挑戦した企業でもある。

SIB は行政が民間資金を活用して事業を行う点、成果連動型である点に特徴がある。社会的インパクトのある事業を実施したい組織にとっては、資金調達の手法の1つといえる。SIBのスキームでは、民間の資金提供者の資金を集めて、公的な社会課題解決型の事業に用いる。国や自治体はその事業の成果に連動した委託費を支払い、それに連動した償還を資金提供者が受ける。通常の公共事業では、国・自治体は前例がない取組や新しい挑戦に対しては資金投入をためらいがちだが、SIBを導入することでリスクが分散され、チャレンジへのハードルを下げられる。報酬支払いに際し事業評価が入るため、事業の実施者は得られたフィードバックやデータをサービス改良に役立てられる。

SIBでプログラムの質向上、拡大
エビデンスデータ収集も成果

公文教育研究会がSIBに出会ったのは、2015年度の経産省「成果報酬型ソーシャルインパクトボンド構築推進事業」に、高齢者を対象とした「学習療法」と「脳の健康教室」という2つのプログラムで参画したことによる。「学習療法」は認知症の進行抑止・改善を、「脳の健康教室」は認知症の予防を目指したプログラムであり、20 01年の共同研究から始まったもの。スタート当初から、認知症の高齢者が学習療法により、認知機能が改善し、要介護度が下がるという成果が出ていた。一方で、要介護度が高い利用者を受け入れればより高い介護報酬が得られるという介護保険制度の下、介護施設にとっては、学習療法を導入し、認知機能の改善に努力し、要介護度が下がれば介護報酬も下がってしまう、という制度的矛盾が課題になっていた。「そこでSIBの枠組みを使えば、エビデンスに基づく社会的インパクトを可視化でき、成果指標の達成を目指して事業の質が磨かれ、量的拡大も図れるのではないか、と考えました」と、公文教育研究会学習療法センター普及サポート部部長の橋口健氏は振り返る。

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