香蘭社 伝統を基盤に新たなクリエイティブを生む

佐賀県有田の地で、約330年の歴史を誇る有田焼の老舗である香蘭社。高級陶磁器メーカーとして知られるが、ファインセラミックス事業など工業系でも存在感を発揮している。代表取締役社長として同社を牽引する深川祐次氏に、同社の事業変革と現在の経営戦略、今後のビジョンを聞いた。

深川 祐次(株式会社香蘭社 代表取締役社長)

江戸中期に始まった陶磁器事業
一気通貫の製造・販売が強み

香蘭社の歴史は、今からおよそ330年前、1689(元禄2)年に初代深川栄左衛門が、肥前有田で陶磁器に関する事業を起こしたことに始まる。やがて幕末から明治の激動期にかけ、当時の選りすぐりの陶工、絵付師、陶商たちを束ね、八代深川栄左衛門が1875年に合本組織香蘭社を設立した。有田焼の海外輸出にも尽力し、世界各国で行われた多数の万国博に出品。フィラデルフィア万国博覧会での褒状受賞、パリ万国博覧会での金賞受賞をはじめ、その後も数多くの栄誉に輝き、海外での評価を高めるきっかけとなった。

香蘭社の美術品事業部で製造される、美しさと実用性を兼ね備えた陶磁器。有田焼の伝統を受け継ぎながら、時代の感性に合うものづくりを続ける

国内でも磁器製造の高い技術力が認められ、1870年には明治政府の要請を受け、国産第1号となる磁器製の碍子(電柱などに取り付ける白い器具)の開発に成功。通信・電力事業の発展に大きく貢献した。1879年に現在の株式会社にあたる合名会社として設立され、九州で最初の法人企業とも言われている。

有田焼は伝統的に分業制の上に成り立っている。焼き物の型をつくる生地屋、それを焼く窯元、焼き上がったものに絵を付ける絵付師など、工程が細分化され、それぞれを別の職人が担当して作り上げるのが一般的だ。だが香蘭社では、製造から販売までの全工程を自社で担っている。原料元になる粘土さえ、今でこそ外注しているが、設立当初は自分たちで作っていたほどだという。

「製造工程はもちろん、販売までも含め、全てを自社で担っていることが最大の強みです」と同社代表の深川祐次氏は胸を張る。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り79%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。