バルセロナでは、ちょっとした「エネルギーの助言」が暮らしを変える
(※本記事は『reasons to be cheerful』に2025年6月13日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

スペイン全土で物価の高騰が続く中、バルセロナでは「エネルギー・アドバイス・ポイント(Energy Advising Points)」が市民に“エネルギーの権利”を行使する手助けをしている。
2018年、ロマン・トレセンス・ガリャールさんは悪夢のような瞬間を迎えた。電気料金の明細を開いたときに、それは起きた。新しく入居したアパートの月々の電気代が100ユーロを超えるという内容だった。
「本当にとんでもない額でした」と語るガリャールさんは、電話越しに怒りを抑えきれない様子だった。
現在74歳のガリャールさんは、バルセロナの公営住宅で一人暮らしをしている。家族の支援はなく、収入は最低限の年金のみ。彼が語るには、3〜4人家族の家庭よりも高額だったというその請求書は、生活を破綻させかねないレベルだった。
どうすることもできずに市の福祉窓口に駆け込んだ彼は、約570万人が暮らすこの街で新たに始まったある制度について知らされる。それが「エネルギー・アドバイス・ポイント」だった。

自宅から徒歩7分の場所に、その制度の一環である「Punto de Asesoramiento Energético(エネルギー相談所)」のひとつが設置されていた。
「スタッフの方々はとても親切でした。このサービスは“本物の金”のような価値があります」とガリャールさんは振り返る。
経験豊富な「エネルギーアドバイザー」が常駐するバルセロナの「エネルギー・アドバイス・ポイント」には、複数の目的がある。エネルギー貧困の実態把握、住宅のエネルギー効率の改善、市民の暖房・照明・お湯のアクセス保障、失業者の雇用支援、そして市民により大きな自立を促すことだ。
この施設では、エネルギー代を減らすための一般的なアドバイスを気軽に受けられるほか、個別相談を予約して料金プランの変更や電力会社の切り替えについてサポートを受けることもできる。さらには、市の職員による家庭訪問も依頼可能だ。
ガリャールさんのケースでは、日常生活のほんの些細な習慣を変えるだけで大きな成果があった。使っていない家電の電源を切ったりプラグを抜いたり、シャワーを浴びる時だけ給湯器をつけるようにするなどのアドバイスがあった。
こうした行動の変化により、彼の光熱費は75~80%も削減された。
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