東京都・小池百合子知事 世界で一番の都市・東京に向けて
「2050東京戦略」を掲げ、子育てや女性活躍の支援など、「人」を中心に据えた成長を図る東京都。「SusHi Tech」をはじめとするスタートアップ育成や中小企業等への支援、DXやAXの推進、脱炭素の取組など、日本を牽引する先駆的な取組を通じて、「世界一の都市・東京」の実現を目指している。

小池 百合子(東京都知事)
「人」中心の成長と成熟で
幸せを実感できる世界一の都市へ
――現在推進中の基本計画「2050東京戦略」で特に注力されている取組についてお聞かせください。
中東情勢の混乱や、激甚化・頻発化する災害など、世界は今、非常に不安定となっています。不確実な時代だからこそ、都のグランドデザインである「2050東京戦略」で描いた「『成長』と『成熟』が両立した、世界で一番の都市・東京」という未来に向け、東京の成長力を育み、日本全体を牽引していかなければなりません。昨今、生成AIの発達は目覚ましく、AIが人を操るのではないかと真剣に語られるまでになりました。そうした中でも、やはり成長のカギを握るのは「人」です。一人ひとりの自己実現を応援する「人」への投資を一層進めてまいります。
出会いから子育て期まで
ライフステージを通じサポート
少子化は非常に由々しき事態です。国家的な最大の課題だという思いで、この10年間「チルドレン・ファースト」の都政を進めてきました。もちろん、結婚や子育ては、個人の意思です。問題は、選択肢があまりにも狭すぎて、その意思に繋がらないことです。様々な調査を見ますと、多くの方は、結婚をして2人、3人と子どもを育てたいと考えています。結婚したい、子供を持ちたいと望む方が、安心して一歩を踏み出せるように、出会いから結婚、妊娠・出産、子育て期と、ライフステージを通じて、シームレスにサポートする施策を多面的に展開してきました。こうした取組は多くの共感を呼び、都内の約9割の子育て家庭に「東京は子育てしやすい」と実感いただいています。出生数も10年ぶりにプラスに転じました。
また、都では様々な出会いの場を創出しており、婚姻数は2年連続で大幅に増加しています。令和8年は、「八」が末広がりや、横にするとインフィニティ(∞、永遠)など、おめでたい意味を持つことで、「結婚のきっかけにしたい特別な1年」と位置付け、結婚おうえんキャンペーン「TOKYO 八結び」を展開しています。8が3つ重なる令和8年8月8日には、東京全体で結婚を応援する取組を広げる気運醸成イベント「TOKYO結婚おうえんフェスタ」を開催しました。この日提出された婚姻届は7,650件で、昨年8月の1カ月間で提出された婚姻届の速報値である7,274件を上回る結果となりました。結婚への関心や祝福の輪が大きく広がってムーブメントになっており、今後もこうした機運をさらに高めてまいります。
働き方の面でも大きな変化がありました。育児休業という言葉がありますが、育児は「休み」ではなく、「大切な仕事」であるというマインドチェンジのため、2022年に愛称「育業」を発表し、育業を社会全体で応援する取組を進めてきました。都内の男性の育業取得率は、2016年は7.4%でしたが、2025年は61.2%まで増えています。都庁では、男性職員の育業取得率は99.3%です。育業を取ることは、若い世代では当たり前になりつつあります。育業する人だけではなく、家族や職場の同僚、上司など育業を支える人を含めて、育業そのものを応援する「育業界隈」の輪を広げる。そして、望む人、誰もが育業できる社会の実現に取り組んでいきます。
女性の自己実現も全力で応援しています。人口の半分を占める女性は、持続可能な成長を実現するゲームチェンジャーです。女性が働きやすい職場は、男性にとっても働きやすい職場であり、多様なアイデアが生まれることで、事業全体で見てもプラスとなります。実際に女性活躍が進んでいる企業ほど、高い業績を上げているという報告もあります。全国初の「雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例」や、改定した男女平等参画推進総合計画を具体的なアクションに繋げ、誰もが輝ける社会の実現に向けた取組をさらに加速してまいります。
人が支え合い、一人ひとりが自己実現に向かっていきいきとしている。そういう東京だからこそ、世界一になれるのだと思っています。
世界へ飛躍する
イノベーション創出を支援
――スタートアップ支援についてお聞かせください。
世界の流れはあまりにも早い。産業の変化は、凄まじいスピードで進んでいます。重要なことは、スピードです。議論するだけではなく、いかにアクションに繋げ、効果を出すかだと思います。東京こそが、そのベースを引き上げていかなければなりません。都は、イノベーション創出に向けた生態系を整えており、「スタートアップ戦略2.0」の下、世界に飛び出すスケールアップ企業を育てる取組を展開しています。
そのためのプラットフォームの一つが、アジア最大級のグローバルイノベーションカンファレンス「SusHi Tech Tokyo」です。「Sustainableな都市をHigh Technologyで実現する」をコンセプトとし、略して「スシテック」。世界では様々なスタートアップ関連のイベントが開催されていますが、海外の方々にも「スシテック」という名前が覚えやすく、面白そうと興味をもっていただいております。4回目を迎えた今年は、過去最多の起業家、大企業、投資家、海外都市が集い、世界中から798社のスタートアップが出展し、約6万人の方々にご参加いただきました。多くの商談も行われ、まさに新たなビジネスを生む起爆剤へ成長したと言えます。特に強調したいのは、3日目に開催したパブリックデイです。多くの親子連れに来場いただき、子どもたちがロボットと一緒に楽しそうに遊んでいました。こうした子どもたちが、将来は自分でスタートアップをやってみたい、そういう夢や希望が持てる場にしていきたいと思っています。来年は、5月20日から22日に開催しますので、SAVE THE DATE、ぜひともご来場ください。

アジア最大のグローバルイノベーションカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2026」の様子(2026年4月27日~29日開催)
そして、常設のスタートアップの支援拠点が「Tokyo Innovation Base(TIB)」です。TIBでは、これまで50万人以上の方々にご利用いただいており、全国の自治体や大学など多様なプレイヤーと連携したイベントを数多く開催しています。たとえば、様々な地域のスタートアップがプレゼンを行い、新しい投資家との出会いが生まれるなど、日本全体、そして世界中のプレイヤーを繋ぐイノベーションの結節点となっています。
グローバルな展開を支援するため、世界のスタートアップ支援機関との連携も強化しています。今秋から、シンガポールの支援機関と連携して、東南アジアへの本格展開を目指す企業の現地派遣プログラムを開始しました。さらには、官民の様々なファンドからなる「SusHi Tech Global Funds」を形成し、スタートアップの研究開発や、海外展開を牽引する大きな資金の流れを創り出していきます。今後も、スタートアップの海外市場への挑戦を力強く後押しし、世界に勝てる産業を育てていきたいと思います。
700万利用のアプリとAIで実現
スピーディで便利な行政サービス
――東京都のDX、AXの取組についてお聞かせください。
都政の重要課題の一つにDXを据え、都や区市町村のDXを技術面から強力にサポートする一般財団法人GovTech東京を立ち上げました。オール東京でDXを推進しています。行政手続のオンライン化は、現在9割超で実施済みとなり、申請や給付をデジタルで完結できるようになりました。
都の公式アプリ「東京アプリ」は700万ダウンロードされています。「都庁をポケットに」がコンセプトで、このアプリを取得することで、都民はスマホ1つで行政と繋がり、都の様々な取組を確認できるほか、イベント等に参加することでキャッシュレス決済サービスのポイントなどに交換できる東京ポイントを貯めることができます。
そして、昨今のAIの驚異的な進化は歴史的な転換点と言えます。想像を超えるスピードで進む変革の中で、東京のポテンシャルを高めていくためには、AIによる変革、「AX(AIトランスフォーメーション)」を強力に進めていく必要があります。今年4月には、業務に活用するAIアプリを職員が自分で開発・利用できる生成AIプラットフォーム「A1(えいいち)」の運用を開始しました。「A1」は、業務に有用な様々なアプリをノーコードで開発でき、開発したアプリは組織内で共有できるほか、他の自治体でも再利用が可能です。AXの推進で、都民サービスの質向上や業務の生産性向上に繋げるとともに、これらの知見や人材を自治体の垣根を超えて共有し、日本全体の行政AXを東京が牽引していきます。
中小企業等の持続的な成長を支援
東京の産業基盤をより強固に
――中小企業などの産業支援では、どのような取組に注力されていますか。
東京には多くの企業が集積しており、国際競争が激化する中、原材料費の高騰や調達難、人手不足など多くの課題に直面しています。地域の経済と雇用を担う中小企業をしっかりと支え、未来の競争力を高める産業へ積極的に投資することで、東京の産業の持続的な成長に繋げていく必要があります。
中小企業の生産性向上や経営力強化に向けて、デジタル技術の活用やAIの導入など、DXの推進を総合的にサポートしているほか、サプライチェーンの強化や再構築、設備投資等による業務改善や新市場・新分野への進出を支援しています。
中東情勢を踏まえた対応としては、中小企業の事業継続をサポートするため、制度融資のメニューの創設や拡充によって資金繰りなどを迅速に支援しています。また、海外に依存する資源やエネルギーは、我が国のアキレス腱であるとかねてより訴えてきました。今回の状況を、むしろチャンスと捉え、足らずを補うだけではなく、未来を切り拓くイノベーションによって、持続可能な社会に向けた新たな一歩としていきます。石油のみに依存しない、新たな技術や素材の開発に取り組む事業者を支援するほか、スタートアップと連携し、石油代替素材などの新技術の社会実装を推進します。
技術の進化を戦略的視点から先読みし、将来の経済をリードする新しい産業を重点的に支援することも極めて重要です。新産業の種でもあるディープテックの事業化に向けて、製品化や生産方法の確立など、社会実装に必要な取組を支援し、最大で30億円の助成を行っています(今年度の募集は終了)。
東京が持つ優れた技術やノウハウを磨き上げることで、産業の競争力を活性化してまいります。
日本を牽引することは首都の責務
エネルギー構造を転換
――気候変動や脱炭素への取組についてお聞かせください。
ネパール・中国の土石流など、世界では気候変動によって自然災害が激甚化しており、日本各地でも豪雨による大きな被害が生じています。かつて、アメリカのアル・ゴア元副大統領がドキュメンタリー映画「不都合な真実」で警鐘を鳴らしましたが、今ではそれが「不都合な現実」となっています。
都は脱炭素に向けて、再生可能エネルギーの基幹化や、次世代型太陽電池「Airソーラー」の普及促進、水素の社会実装の推進など、エネルギー構造の転換に向けた先駆的な取組を進めています。これらは、エネルギーの安定確保にも資する取組です。
気候変動のみならず、我が国を取り巻く状況は厳しさを増しております。少子高齢化、資源・エネルギーの確保、デジタル化の後れなど、いずれも長年議論されてきた国家的な課題です。現状を打破し、我が国の成長を牽引することは、首都である東京の責務です。持続可能な未来を見据えながら、東京をその先の高みに導く先駆的な施策を展開し、「世界で一番の都市・東京」を実現してまいります。

- 小池 百合子(こいけ・ゆりこ)
- 東京都知事