東洋エンジニアリング 新事業と既存事業「両立」の本音と本質
事業構想大学院大学の「事業構想トップセミナー」に、東洋エンジニアリング常務執行役員CTO・戦略コーポレート本部長の富永賢一氏が登壇。祖業であるEPC事業の「深化」と新規事業の「探索」を好循環させるための人財・組織開発について、経営戦略と現場のリアルの両面から語った。

東洋エンジニアリング株式会社 常務執行役員
CTO(ChiefTechnologyOfficer)
戦略コーポレート本部長 富永賢一氏
両利きの経営×人財育成
行動から戦略が生まれた
東洋エンジニアリングは1961年、三井化学の前身企業の工務部門から独立したエンジニアリング専業会社だ。石油精製、石油化学、肥料、FPSO、発電などのプラントで、Engineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)を一括して担うEPC事業を岩盤の収益基盤として成長してきた。
前中期経営計画(2021〜2025年)では、EPCの強靭化に、新規事業開拓を並べて掲げ、既存事業の「深化」と新規事業の「探索」の両輪を追求。「探索」としてはまず、挑戦の「場」を設計した。新規事業創出人財育成プログラム「WILL」は、テーマをもった社員が自ら手を挙げ、会社が専門家の支援や部門横断を後押しし、新規事業の開発と実装を目指す。個人の「意志」を起点にしたプロジェクトだ。現在、沖縄でのトマトの周年栽培と、建設現場の会話を分析するAIソリューション「HibikiAI」の2件が進む。
「実績に加え、試行錯誤という『正しい失敗』を許容し、挑戦のプロセスそのものを評価します。エンジニアリング会社としては想定外のアイデアが出てくるのは『WILL』ならではだと思っています」。
「WILL」で新規事業が生まれる「場」を整えるのと同時に、新規事業を構想できる「人」を育てるため、同社は事業構想大学院大学の「プロジェクト研究」を導入した。「そもそも何をやるべきか」と自ら問いを立てる姿勢は、体制が確立されたEPC事業のなかではなかなか根づきにくい。「プロジェクト研究」で着想からフィールドリサーチを経て事業構想計画をつくるまで、「自ら考え」「自ら動き」「自ら形にする」プロセスを通して、「構想力」が培われることに眼目を置く。
一方、新規事業を構想する人財を受け入れ、支えて「動ける」組織開発にも着手した。制度や体制といった「ハード」に加え、「人と人の関係性」を形作る「ソフト」の側面に着目。「どういう組織を実現したいか」という問いをめぐって対話を繰り返しながら関係を構築していく「対話型組織開発」を実践した。「続ける中で、当事者意識の高まりや、心理的安全性の担保など、探索型組織として望ましい変化がみられるようになりました」と富永氏。
人づくりと組織づくりを統合
人財・組織戦略「Base and Beyond」
こうした動きを踏まえ、2026年から5年間の新中期経営計画では、統合的な人財・組織戦略「Base and Beyond」を掲げた。BaseはEPCで培った専門性と実装力、Beyondは共創による構想力と価値創造。両者を二項対立にせず、BaseがあるからこそBeyondが可能になり、Beyondで得た構想力が次のBaseとなる。その循環が成長エンジンとなる姿を描く。
「WILLは挑戦の場、プロジェクト研究は人づくり、対話型組織開発は組織づくり。それぞれ別の目的と文脈で始まった取り組みでした。しかし、実践を重ねる中で共通する方向性が見えてきた。それらを経営として意味づけ、今回の人財・組織戦略につなげています。行為が先にあり、戦略が生まれた、ということです」。
ただし、経営戦略として打ち出されたとしても、深化と探索の両輪を回すのは現実には簡単ではない。
「経営トップの判断に加え、ミドルマネージャーの理解と調整力がカギになります。そして現場では、横断的にナレッジを分かち合い、協働していくことが不可欠です。その意味で、『新規事業』か『既存事業』かで部署やチームを峻別するのではなく、両方を行き来する人財に活躍してもらえるようにしたい。試行錯誤を繰り返しながら、人財育成と組織開発を一体で進めます」。

「深化」と「探索」を両立させるための組織づくり
