国交省が示す「群マネ」 メンテナンスからマネジメントへの転換
国内の道路や橋、水道等が一斉に老朽化の時期を迎えている。国が推進する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)の基本的枠組みと考え方について、国土交通省の中村幸一郎課長補佐が解説した。
国土交通省総合政策局 公共事業企画調整課
課長補佐 中村幸一郎氏
老朽化と担い手不足
1960〜70年代に整備された道路や橋、水道等の構造物は今後、一斉に更新の時期を迎える。例えば、国内の道路橋の中で建設後50年以上経過するものは、2023年の約37%から2040年には約75%へと加速度的に増えることになる。損傷による事故のリスクが全国どの場所でも差し迫っている今、損傷が拡大してから大規模な修繕等により機能回復を図る「事後保全」から、軽微な段階で予防的な修繕等により機能保持を図る「予防保全」への転換が急がれている。
一方、インフラの約7割は市区町村が管理するが、調査によれば、道路や橋にあてる予算はピーク時の約6割に、土木部門の職員数はこの約30年で約26%減った。技術系職員の数や予算も著しく不足するなか、自治体が老朽化に歯止めをかけることは困難だ。
連携して補完し合う「群マネ」
そこで国が示す処方箋が「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)だ。複数の自治体や複数分野のインフラを一つの「群」としてまとめて管理・メンテナンスにあたる。県と市区町村が連携する広域連携と、道路・河川・公園といった異分野を束ねて民間に委託する多分野連携がある。受注する側も、複数の事業者がJV(共同企業体)を組んで対応する。
国は2025年10月、先行事例を集めた「群マネの手引きVer.1」を公開。群マネの概念や期待される効果のほか、先行事例、実施プロセス等を解説し、導入検討から実践までサポートする姿勢を打ち出した。
「まずは自治体ごとにインフラの状況、職員の状況、人口等についての情報を可視化することが必要になりますが、このプロセスを経て管理者も住民も現状を把握し、危機感をもつことが大きな一歩だとお伝えしています」
新潟県三条市の道路、河川、公園等の民間委託における多分野連携、奈良県の広域連携による橋梁点検といった先行事例では、発注する自治体職員の業務効率化と負荷の軽減が報告されている。加えて、自治体や分野を超えた交流の中で、職員が技術的なノウハウを習得できるようになった。一方で事業者の側も一括で受注でき、効率的な対応が可能になる上、小規模事業者にも収益機会が生まれる。対応のスピードが上がれば、早期に住民の安心・安全を確保することができるという好循環が生まれた。
メンテナンスからマネジメントへ
ただ、現状、「群マネ」の実施・検討は、全国自治体の部署・機関の約1割にとどまる。予算や縦割り行政の壁、責任の所在の不明瞭さ等がボトルネックになっている。国土交通省や地方整備局では、実施のメリットや財政・技術的・人的支援の具体的な内容を明確に伝え、浸透させていく考えだ。
「群マネ」の実施を推奨しながら、中村氏は最後にこう強調した。
「受発注の効率化はあくまでも『ステップ』です。そこで生まれたリソースを使って新たな技術も学びながら、計画的な『予防保全型』メンテナンスの仕組みを構築するのが『群マネ』を推進する本当の目的です。その中で、『メリハリ』の推進、『見える化』徹底、それを通じた『モーメンタム』醸成、担い手の地位向上等を進め、様々なインフラ分野主体間の連携・協同などを踏まえ、それらを統合的に『マネジメント』し、最適化する、すなわちインフラメンテナンスからインフラマネジメントへの戦略的転換が目指す姿です」。