時事テーマから斬る自治体経営 「数字」の注意点
EBPMが重視される中、統計データを政策の根拠とする機会は増えた。だが、数字の定義や集計対象を確認しなければ、地域の実態を見誤る。自治体経営において実際に数字を扱う際の注意点を解説するとともに、連載最終回として、生成AI時代に求められる「問いを立てる力」について考える。
日々、筆者は地方自治の現場に足を運んでいる。そこで出会う首長や議会議員、自治体職員は、地域の可能性を信じ、明るい未来を切り拓こうと真摯に取り組んでいる。その姿勢には、いつも敬意を抱いている。しかし、厳しいことを言えば、真摯に取り組むことと、成果を生み出すことは別問題である。どれほど熱意を持って取り組んでも、成果につながらなければ、地域の未来を変えることはできない。
だからこそ、現在の取り組みが本当に正しい方向に進んでいるのか、客観的な視点から検証することが欠かせない。時には、当たり前とされてきた考えを疑い、取り組みの前提を問い直す必要もある。本連載では、こうした政策立案における「注意点」に着目し、多くの事例を取り上げてきた。
今回は「数字」を活用する際の注意点である。とりわけ強調したいのが、統計データの「定義」を正しく理解することの重要性である。定義を確認せずに数字だけを追いかければ、地域の実態を見誤り、政策の方向性を誤る危険性がある。数字の定義を正しく理解することが、政策の質を高める第一歩となる。
学力テストの順位の注意点
文部科学省は、全国学力・学習状況調査(以下「学力テスト」という)を実施している。全国の小学6年生と中学3年生を対象とした調査である。都道府県別の順位を目にした読者もいるだろう。筆者が気になったのは、学力テストの成績が高い都道府県ほど、大学進学率も高いという関係が必ずしも確認できないことである。もちろん、学力テストと大学進学率は測定時点も対象も異なるため、両者を単純に比較することには限界がある。
筆者は、十分な検証には至っていないが、問題提起として言及する。学力テストの成績が高くても、大学進学率が低く、いわゆる難関大学への進学者も少ない地域がある。この背景には、世帯所得の格差に加え、大学への地理的なアクセス、進学に伴う経済的負担、地域の進学文化や進路選択の違いなどの要因が考えられる。これらに加え、筆者は学力テストの調査対象に着目する必要があると考えている。
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