豊田市 官民共創の水道DX 実証実験が生む横の「つながり」

愛知県豊田市は、市の戦略「ミライ実現戦略2030」と「つながる社会実証推進協議会」を土台に、多くの企業やスタートアップと積極的に連携し、様々な実証実験を重ねる。

豊田市上下水道局 企画課 主幹 岡田俊樹氏

「チェンジとチャレンジ」のインフラ対策

豊田市上下水道局企画課主幹の岡田俊樹氏は、「チェンジ!チャレンジ!で水道クライシスに挑む」と題し、同市の水道DXを紹介した。高度経済成長期に各地で整備された多くの水道管は老朽化が進んでいる。

水道管の場合、地中に埋まって傷みが見えにくい。ところが漏水すれば復旧に時間がかかる上、断水による生活への影響は計り知れない。

こうした中、豊田市は、第9次豊田市総合計画「ミライ実現戦略2030」で掲げられる「チェンジ(変化)とチャレンジ(挑戦)によって、しなやかに変化し続けるまち」の方針で水道インフラへの対応を進めてきた。

2016年に設置された「豊田市つながる社会実証推進協議会」は先進技術の実証・実装を通じて地域課題を解決するプラットフォームで、会員は117団体、実証は80件を超える。トヨタ自動車の本社を擁し、都市部3割・山間部7割で「日本の縮図」とも言われる同市が全国に先駆けて試みる意義は大きい。

「豊田市つながる社会実証推進協議会」を通じて、岡田氏らは水道分野でも多様な企業と組み、実証を重ねてきた。

地道に根気よくパートナーを探す

市は、交流拠点「STATION Ai」に相談窓口「はじめるとよた」を設置している。「はじめるとよた」を訪れた企業と始めたものも含め、豊田市の側から積極的にパートナーを探して挑む実証をきっかけに、組織や分野の壁を越えた「横」のつながりが生まれている。

ただし、岡田氏によれば、パートナー探しは容易ではなかったという。

「プラットフォームとはいっても、協議会に課題を投げれば企業が応えてくれる仕組みが整っているわけではありません。水道局の側から課題を把握し、講演会などに足を運び、有望なスタートアップを探して説得する。『一緒に育てて次につなげたい』と志を共有できる相手を根気よく探してきました」。

スタートアップのほか、中部電力や豊田高専、JAXA系のベンチャー、日本損害保険協会等との連携の実績をもつ。

実証は、水道インフラに対して多様なアプローチで行われてきた。水道業界で初めてAIを使った「AI水道管劣化予測診断」は、それまで勘に頼って判断していた破損確率を5段階で評価し、交換の優先順位を可視化した。

人工衛星「ALOS-2」で地下の漏水を絞り込む「漏水エリア特定診断」では、全域を歩けば5年かかる調査が7か月に短縮され、漏水の発見件数は大幅に増えた。ほかにも、水道使用量のデータから空き家や将来の給水人口を読む予測や、世界最小級ドローンによる下水道点検等、試みは次々と広がる。

「横のつながり」の出発点としての実証

水道管、道路、マンホール等、分野の異なる設備をまとめて判定する技術実証実験も進めている。車に載せた赤外線センサーで路面温度をAI解析し、水道管の漏水、道路の空洞、マンホール周りの傷みを一度に判定する。

「実証を重ねることの意義は、技術の高度化や精度の向上だけではありません。上水道・下水道・道路という別々の分野を一つの実証で束ねることで、縦割り行政では生まれにくい横のつながりが生まれる。実証実験はその『手段』であり、これは国が推進する『群マネ』の入り口になります。さまざまな関係者がつながり、成果を国内外へ広げて『持続可能な社会の実現』に貢献する姿を、豊田市は引き続き目指します」。