編集部総論・数字で見る 価格上昇と人口減が生む新事業

都内ではマンション価格が高騰する一方で、郊外や地方では人口減少、空き家が問題になっている。不動産業界では人手不足と競争の激化が同時に進行する。今回の特集では、豊かで楽しい暮らしを不動産を通じて実現するために、さまざまな角度からこれらの課題に取り組む企業、制度の動きを紹介する。

住宅の新規供給が続く一方で、既存住宅地では空き家が増えている。写真はイメージ
(Photo by Eisuke Sato/Adobe Stock)

上昇する路線価と建物価格
観光や産業立地も上昇要因に

国税庁が毎年7月に発表している、その年の1月1日時点の路線価。主要道路に面した土地1平方メートルあたりの標準価格で、相続税や贈与税の算定基準になるものだが、不動産価格の推移を見る指標としても活用されている。この路線価で、2025年は東京都の標準宅地の平均上昇率が全国1位の8.1%となり、東京の不動産価格の高騰を裏付けるデータとなった。首都圏の他の都市でも路線価は上昇しており、再開発が進むさいたま市の大宮駅前の上昇率は11.9%と、県庁所在地の最高路線価地点で最も上昇率が高かった。令和に入ってから、主要都市中心部の路線価は上昇傾向が続いている(図1)。

図1 上昇する路線価


国税庁が発表している路線価の推移。2018年と比べて2025年は、東京・表参道で+27%、福岡・博多中央街で+63%となった

出典:国税庁

 

不動産経済研究所によると、2024年度の東京23区の新築マンション平均価格は前年度比11%アップの1億1632万円、住宅ローンで家を買って住みたいと考える実需層には手が届かない価格にまで高騰している。その背景には、地価の上昇に加え、人件費や資材価格、エネルギー価格の全般的な上昇がある。短期間に転売を繰り返し利益を稼ぐ、投資マネーも流入している。東京都千代田区では、2025年7月に不動産事業者の業界団体である一般社団法人不動産協会に対して、区内の投機目的でのマンション取引を制限するための要請を出した。一極集中による人口の流入も、東京都心部及び都心へのアクセスが良い近隣の都市の地価を押し上げる要因となっている。

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