第4回自治体DX全国首長アンケート 住民サービス向上・産業振興へのDX
月刊「事業構想」は全国都道府県・地区町村の首長を対象に、第4回目となる自治体DXに関するアンケート調査を実施した。今回は、住民サービスの向上や地域の産業発展に向けたDXについて調査。全国の自治体が注力している領域は何なのか、最新の動向を明らかにした。
■ 調査サマリー
○DXに関する全体方針の策定は、90%以上が策定済もしくは策定の意向がある。
○DX推進の専門部署を設置している自治体はおよそ60%。未設置の自治体の主たる要因は人員不足による。
○自治体による住民へ向けたDXとして、デジタル化に対応した情報発信へと移行している傾向がみてとれる。
○自治体による産業向けDX支援では、人材不足への対応や生産性向上に対して、積極的に取り組む方針がみてとれる。
■ 調査の概要
○調査名:第4回自治体DX全国首長アンケート
○調査内容:自治体DX推進計画等の策定状況、DX推進体制、住民・産業向けDXの最新状況について
○回答対象:都道府県・市区町村の首長(送付数:1788件)
○回答数:492件(2025年3月18日時点)
○回答方法:郵送およびWEBを利用したアンケート調査
○実施期間:2025年1月8日~1月31日
○調査主体:学校法人先端教育機構 月刊「事業構想」、NTTコミュニケーションズ株式会社
1) DX推進に関する方針等の整備状況について

2) DX推進に関する専門部署について

3)外部人材活用の状況について

4)住民向けDXの取組について

5)産業向けDXの取組について

■ まとめ
▶ DX推進に関する全体方針を策定している自治体は7割に迫っており、着実に増加している。2021年9月に実施した第1回の調査では、「策定済」の割合はわずか13.2%あった。また、「全体方針未策定であり、検討を始めたいが策定時期も未定」との回答は54.4%を占めていた。今回の調査では「全体方針未策定であり、検討を始めたいが策定時期も未定」との回答は15.3%であり、「策定済」は69.5%であった。
また、「今後策定予定及び検討を始めたい」と回答した自治体の63.2%は全体方針の策定体制において外部機関のアドバイス、外部専門機関を活用すると回答している。外部専門機関から得たい協力形態としては、民間企業等から自治体に派遣された専門人材の協力が最も多く、公民連携が進んでいると評価できる。
▶ DXを推進する専門組織を設置する自治体が約6割に達するその一方で、設置をしていない4割の自治体うち96.4%は専門部署を設置する予定がない。またDX推進の専門部署の設置及び予定がなく、外部人材活用の意向もないと回答する自治体も一定数存在するが、人員を受け入れる体制がないなど、受け入れ側の人材不足もその要因となっている。その多くは小規模自治体が占めており、高齢化や人員不足が進む社会においては、住民に対する自治体の役割がより一層重要になるであろう。ここにこそ、民間や外部機関によるデジタルの力を活用した支援が期待されるであろう。
▶ 住民向けDXの取組では、領域として「防災・子育て・健康・交通」に集中していることがアンケート結果から見て取れる。自治体が抱える行政課題は幅が広いにもかかわらず「その他」の領域が比較的に少ないことから、自治体がデジタル化による解決を期待し取り組んでいるものは、主にこれらの領域であると捉えてよいだろう。
住民等への情報発信については、インターネットやスマートフォンの普及拡大により住民の情報獲得手段が多様化してきている状況に応じ、従来型の広報手段に留まらず、積極的にSNS等の活用を進めていることが見て取れる。なお、社会のデジタル化が一層進む中で住民サービスの向上を図るには、一部の自治体が取り組んでいるように、市販のSNS活用だけではなく、様々なサービスを一元化するような汎用的な自治体アプリの普及が期待されるところであるが、まだまだ開発やリーチなどの問題があるため、今後はこの領域における好事例の蓄積が望まれる。
地場産業向けのDX支援については、人材不足対応や生産性向上の面で、積極的に取り組む自治体が増加していることは評価できる。この点、特に地域の中小企業においては、DXに割ける経営資源が不足していることから、デジタル社会の進展に地場産業が乗り遅れないよう、企業のニーズに応じたより一層の支援策の展開が望まれるところである。
▶ 2021年の本調査開始時に比較し、DX推進方針策定や専門部署設置をする自治体は年々拡大し、自治体DXの取組は着実に進んできていることは、国や自治体の継続的な努力の賜物であろう。また、民間専門家の派遣・活用等の公民連携の取組が従来よりも一般的になってきていることも良い傾向であろう。
また、デジタル社会でのライフスタイルや産業構造の変化に応じ、住民とのコミュニケーション手段としてのSNS等のデジタル活用や地場産業へのデジタル化支援に取り組む自治体が拡大してきていること、地場産業へのDX支援を積極的に行う自治体が増加していることも評価できる。
その一方で、地方部の小規模自治体などで人材不足等の理由によりそのような取組が推進できず二極化が進んできてしまっていることは、デジタル社会における我が国が解決すべき大きな問題である。人口減少や少子高齢化が一層進む状況では、それらの小規模自治体及び当該地域こそDXによる効率化が必要であろう。国や都道府県、大企業においては、これまでの地域DXを一律に拡大・推進する方向に加え、地域の状況・ニーズに応じた柔軟な支援策の検討・提供が望まれるところである。
(事業構想大学院大学 教授 河村昌美)
【調査内容に関するお問い合わせ】
学校法人先端教育機構
自治体DX全国首長アンケート事務局
Mail:media-survey@sentankyo.ac.jp
【記事内容に関する自治体からのお問い合わせ先】
NTTコミュニケーションズ株式会社
ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部 地域協創推進部門
連絡先:support-municipal-sales@ml.ntt.com
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