人的資本経営から、イノベーション創出と創造的な組織づくりへ

人的資本経営に関する日本企業の取り組みが加速している。有価証券報告書での情報開示の義務化に対応するだけでなく、取り組みをイノベーション創出や創造的な組織づくりに昇華させるためにはどのような取り組みが必要なのか。

有価証券報告書での人的資本情報開示の義務化に伴い、日本企業での人的資本経営への取り組みが加速している(写真はイメージ) Photo by Dick Thomas Johnson

人的資本経営ブームの背景

人的資本経営とは、個人が持つ能力や知識、スキルを「資本」と捉え、人的資本に最適な投資を行うことで最適なリターンを生み出す経営のことを指す。個人のスキルは消費するものではなく投資対象であり、社員一人ひとりの活性化や活力化を通じて本人の能力を最大に引き出すことが、企業価値向上に繋がるという考え方だ。

人的資本経営は、日本でも大きな注目を集めるようになっている。そのきっかけは、2018年12月に国際標準化機構が「ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)」を制定したこと。そもそも、世界の機関投資家はESG投資を重視するようになっており、環境問題や社会課題、企業統治への取り組みを、企業の長期的な成長可能性を評価する重要な判断ポイントと位置付けている。人的資本はESG投資のための判断要素のひとつであり、ISOが制定された要因でもある。ISO30414ではコンプライアンスと倫理、コスト、ダイバーシティ、組織文化、スキルと能力など11領域に関する指標を定めている。

こうした世界的な動きを受けて、日本では2020年9月に経済産業省が「人材版伊藤レポート」を公表した。一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏が座長を務める「人的資本経営の実現に向けた検討会」の報告書であり、人的資本経営の推進のポイントを提示、大きな反響を呼んだ。

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