2018年3月号

ランナーズ・ヴィレッジ レポート

地域の道を、走りたくなる道へ 新潟県三条市の取り組み

月刊事業構想 編集部

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新潟県三条市下田地域が取り組む「ランナーズ・ヴィレッジ」プロジェクトは、農山漁村ならではの景色や体験を提供する着地型観光の一つである。廃校になった地域の小学校に集う若者と、地域の事業者が中心となって、下田らしさを前面に出した観光事業を構想する。

ランコースに利用する三条市下田地域の道。夏には一面に緑が広がる

新潟県の中央部に位置する三条市下田地域(旧:下田村)は、2005年に三条市と合併した自然豊かな里山地区だ。産業は主に農業が占めており、高齢者の多い、典型的な農山地区である。

2017年の7月、地域で農業体験などを提供するNPO法人ソーシャルファームさんじょう(下田郷SATOYAMAみらい協議会構成団体)の若者は、100年後のあるべき姿をバックキャストして地域活性化のためにどのようなことができるか考えた結果、農林水産省の農山漁村振興交付金を活用し、「ランナーズ・ヴィレッジ」を提唱する事業構想大学院大学をパートナーに、同プロジェクトを立ち上げた。

 

 

地域の魅力に気付き、活かす

「ランナーズ・ヴィレッジ」のコンセプトは、「何気ない道を、走りたくなる道へ」。日本全国900万人と言われるランニングを趣味とする人を対象に、地域の特色を生かしたランニングコースと宿泊をセットにしたスポーツツーリズムを推進し、観光客の増加と消費の拡大を行う。

既存の道をコースに活用するためハード整備が必要なく、マラソン大会などのスポット的なイベントではないため道路封鎖などを必要としないことが特徴だ。

下田地域は道路が幅広く整備されており、車の交通量は少なく、信号機も少ないため、地域内外のランナーやサイクラーから好まれている。また、全国棚田百選に指定された北五百川の棚田や、景勝八木ヶ鼻などの自然景観もあり、豊富な自然、湧水で生産される米などの食も有している。

これらの資源は地域住民にとっては当たり前だと思われているが、都市部で生活する人にとっては訪れる価値のある観光資源となっている。

下田地域には日本棚田百選に認定された棚田がある

廃校をランニングの拠点に

NPO法人ソーシャルファームさんじょうが入居している旧荒沢小学校は、2013年に廃校となり、現在は同団体や地域住民が利用している。

廃校とはいえ清潔感があり、家庭科室や体育館など、そのまま活用できる施設が整っているため、活用の幅は広い。現在は高齢者に人気の整体やアウトドア観光を学ぶ授業なども行っており、下田の住民にはなくてはならない場所だ。ここをランニングの拠点として、駐車場やシャワーなどを提供する(シャワーは事前連絡が必要)。

宿泊や食事については、民間事業者と連携して提供していくが、今後の布石として農家民泊を地域として開始する計画も立っている。近くには温泉施設や笹団子の製造販売所などもあるため、ランニングコースのゴール地点や立ち寄り所などにすることで、地域一体となって観光地域づくりを行う。

地元住民への呼びかけも重要で、走っているランナーに手を振るような地域にしたい、という思いもあり、住民の意識付けができるよう、地元のメディアを通じて、下田をランニングの聖地へ、という広報も行っている。

ランニングの拠点となる旧荒沢小学校

ランコースの設計は専門家のアドバイスのもと行う

地域の若者を
観光のエキスパートへ

観光事業を立ち上げ、継続していくには、地域の人材が観光のエキスパートとして成長することが重要だ。下田地域のプロジェクト担当者は、事業構想大学院大学でランナーズ・ヴィレッジの特別講義を通して、観光・マーケティングの構想計画を立てるための知識を習得。観光・インバウンド・ランニングの講師らが講義を行う10のカリキュラムを経て、実施計画・マーケティンング計画をつくりあげた。

また、同時並行で下田地域ではプロジェクト担当者と事業構想大学院大学の講師が中心となって半年間にわたり地域関係者とワークショップを開催。講師は外部視点で観光資源の発見とランニングコースの設計を支援し、必要に応じて地域住民を巻き込み、アイディア出しやテストマーケティングを実施しながら地域のプロジェクトが自走できるようサポートをする。

2020年、NPO法人ソーシャルファームさんじょうには下田を「体験合宿の聖地にする」という目標がある。そのために今後取り組むべき課題も明確だ。やるべきことに一つ一つ取り組み、地域を大きく変えていく。

ランナーズ・ヴィレッジ公式サイト

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