総合スポーツクラブの長所を生かせ 「人生100年時代」を健康で豊かに

「生きがい創造企業」として顧客に健康で快適なライフスタイルを提案するという企業理念の下、スポーツクラブを柱に事業を多角化してきたルネサンス。企業・自治体向けには健康増進プログラムも提供する。人々の健康をサポートし、地域の人々の健康を支えることを目指す。

望月 美佐緒(ルネサンス 代表取締役 社長)

スポーツクラブ事業を
基盤に多様な事業を展開

ルネサンスは1979年、大日本インキ化学工業(現DIC)の社内ベンチャーとして千葉市・幕張のテニススクールからスタート。1981年からは現在のスポーツクラブの形になった。スポーツクラブ事業のほか、介護リハビリ事業や通販事業、企業の健康経営推進、自治体のスポーツ施設の運営などの健康増進事業に領域を拡げている。

事業拡大に向けてはM&Aを積極的に実施しており、これまで行ったM&Aは21件に上る。直近では2024年3月、東急不動産の傘下にあった東急スポーツオアシスを子会社化し、今年4月に吸収合併した。これによって、直営スポーツクラブの拠点数は全国約140ヵ所に拡大。また、スポーツクラブを基盤としつつ、事業を多角化している点も大きな強みとなっている。

「スポーツは私たちのキーコンテンツですが、スポーツやトレーニングに本気で取り組みたい方はまだまだ限定的ですし、国内にはそもそもスポーツクラブがない地域もたくさんあります。そのような意味でも、私たちはB to Bで企業や健康保険組合向けにコンテンツを提供したり、自治体を通じて地域の方々の健康づくりを支援しています。また、東急スポーツオアシスのM&Aでホームフィットネス事業が新たに加わりました。自宅で気軽に健康づくりをしたい方々に向けた器具やツールを企画・販売しており、今後はこの事業も成長させていきたいです」。

ルネサンス代表取締役社長の望月美佐緒氏は、こう話す。現在は「人生100年時代を豊かにする健康のソリューションカンパニー」という長期ビジョンを掲げ、介護リハビリ事業も展開。その中心はリハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」で、スポーツクラブの豊富な運動ノウハウに科学的なリハビリの手法を加えた新しいサービスとなっている。

「介護リハビリ事業はスポーツで培ってきたノウハウに、理学療法士や看護師の知見も組み合わせて行っています。この事業は、コロナ禍でスポーツクラブを全店閉店しなければいけなかった時期も、所管官庁から継続するよう要請されました。多角的なポートフォリオで、1つの事業に依存していないところも私たちの強みだと思います」。

リハビリ特化型デイサービスの「元氣ジム」(写真)のほか、スポーツクラブに併設する形で訪問看護ステーションも運営

運動以外でも誰もが気軽に
立ち寄れるスポーツクラブに

現在、進めている「2024-2027中期経営計画」では、売上高750億円、営業利益55億円という2027年度に向けた数値目標を掲げている。また、全体的な方向性としては、①総合型スポーツクラブのリーディングカンパニーとして業界をリード、②フィットネス業界の枠を超えた中長期成長ドライバー創出、という2つを挙げる。

総合型スポーツクラブはジムだけでなく、スタジオやプール、温浴施設、テニスコートなどの設備も備えている。これらの設備を活かし、「より多くの方々に利用してもらえるような価値を訴求していくことも重要です」と望月氏は言う。

総合スポーツクラブの強みである様々な設備を活用し、利用者を増やす考えだ。最近はサウナ関連設備の充実を図っている

「スポーツクラブは運動をしに行く場所だと思っている人が多いですが、もっと気軽に利用していただきたいです。フィットネスは体の状態を整えること全体を指します。例えば、仕事帰りに温浴施設でゆっくりしたり、マッサージチェアで肩こりをほぐし、すっきりした状態で帰宅していただくのもフィットネスだと思います」。

さらに、スポーツクラブは会員同士のコミュニケーションの場にもなっていることから、ただ知り合いと話をするために行く、という使い方もできる。このような目的でも利用しやすいように、ラウンジなどの周辺施設もより充実させようとしている。そして多様な目的で来店の頻度を高めてもらうことで、会員に「月会費以上の価値」を感じてもらうことを目指している。

「日本のフィットネス参加率は約4%と低い。これに対し米国では24%以上になっています。日本では大半の人が『健康のために運動した方が良い』と思っているものの、なかなか実行できません。近所に施設がないことも原因の1つだと思いますが、義務感を伴うイメージが心理的なハードルになっている可能性もあると感じます」。

スポーツクラブをより身近な存在にするため、今後は「地域開放デー」のようなイベントを全社的に展開するなど、誰もが気軽に施設に立ち寄って体験できる機会を増やしたいという。また、新たに加わったホームフィットネス事業では、家具調でインテリアになじむステッパーなど、住宅向けにデザイン性を高めた商品を開発。多様な販売チャネルで「フィットネス市場の外」でも、生活に運動習慣を提案している。

インテリアになじむデザインのステッパー。自宅でトレーニングしたい層向けの人気商品となっている

幹部の育成では6年前から
ビジネスリーダー塾を開講

2025年4月に代表取締役社長に就任した望月氏は、これまでフィットネストレーナーやインストラクター、商品開発、人材育成など様々な業務を経験してきた。そして会社の成長と共に、財務などの専門知識を大学院などで学び、経営者に必要なスキルを身につけてきた。その一方で、望月氏は「会社の成長に合わせて必要な知識やスキルを学べば間に合った最後の世代かもしれません」とみている。

プライム市場の上場企業となり、事業が拡大した現在、このようなやり方では間に合わないという。管理職が日常業務の中で経営全般の知識を体系的に学ぶことには限界があるため、6年程前から「ビジネスリーダー塾」を開講している。

ビジネスリーダー塾は経営に関心のある社員が自ら手を挙げて参加する選抜型の研修で、取締役らが講師となり、財務やマーケティング、組織開発といった経営の根幹を教える。その目的はリーダーシップの醸成と経営のための知見の習得で、定員を大幅に上回る応募があるという。今後は塾のあり方を見直し、必須研修への組み込みや、より若手から挑戦できる機会の創出も検討していく方針だ。また、他社の経営者を講師に招くなど、社内にとどまらない視野を養う機会も設けている。

望月氏は「運動は人の成功体験を生み出し、その成功体験が希望になる」と考えており、今後も顧客1人ひとりが小さな成功体験を積み重ね、自己肯定感を高められる事業を展開していきたいという。この想いを持続的に実現していくためも、次世代リーダーの育成に力を注いでいく。

 

望月 美佐緒(もちづき・みさお)
ルネサンス 代表取締役 社長