食品加工の現場課題に応える 山本ビニターの高周波解凍装置が品質向上と省人化を実現
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年7月9日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

ものづくり日本大賞とは──
「ものづくり日本大賞」は、
我が国の産業・文化の発展を支えてきたものづくりを次代へ継承し、さらに発展させていくことを目的に、ものづくりの第一線で活躍する優れた人材やグループを顕彰する内閣総理大臣表彰です。製造・生産現場の中核を担う人材、伝統的・文化的な技を支える熟練人材、今後を担う若年人材など、ものづくりに携わる各世代の中から、特に優秀と認められる取組が表彰されます。
本特集では、第10回ものづくり日本大賞で近畿経済産業局長賞を受賞したメンバーにお話を伺いながら、取組の背景や開発の歩み、ものづくり日本大賞を受賞してからの今後の展開について紹介します。
今回は、第10回ものづくり日本大賞において、高周波誘電加熱技術を活用した食品解凍装置の開発により近畿経済産業局長賞を受賞した山本ビニター株式会社 社長 山本泰司さん、商品開発センター 次長 井口健治さんにお話を伺いました。
受賞概要
案件名:コールドチェーンの一翼を担う、解凍革命『高周波急速解凍装置の開発』
受賞者:山本ビニター株式会社 山本 泰司さん、今堀 敏弘さん、児玉 順一さん、井口 健治さん、古川 浩己さん、吉田 浩二さん、松井 仁司さん
山本ビニター株式会社は、高周波誘電加熱技術を強みに、製造業の顧客の現場で生じる加熱に関するさまざまな「困りごと」に向き合ってきた企業です。ビニールシートの溶着用途から始まった技術は、木材、医療、食品などへ応用範囲を広げ、現在では顧客の課題に応じた加熱装置を提案する「ソリューションビジネス」として展開されています。
顧客の相談から始まった食品分野への挑戦
まずは、「なぜ食品分野に?」という観点から同社の取組の背景をお伝えします。
食品分野への展開は、30年ほど前の顧客からの相談をきっかけに始まりました。欧米製の解凍装置を導入していた食品加工メーカーで、冷凍原料の解凍に課題があり、商社を通じて同社に相談が寄せられたことが出発点でした。特に、冷凍ハンバーグなどに使われる大きな肉ブロックでは、従来の電子レンジ型の技術では均一な解凍が難しく、解凍ムラやドリップロスが課題となっていました。
同社は、こうした課題を解決するため、高周波誘電加熱技術を活用した装置の開発に取り組みました。
当時から変わらない同社のものづくりの姿勢について、山本社長は以下のようにお話しになりました。
「お客様から寄せられる様々な加熱に関する困りごとに対して、自社の高周波誘電加熱技術で解決できる可能性があれば挑戦する。その積み重ねが、食品分野への展開にもつながりました。」
同社の高周波誘電加熱は、食品の内部までエネルギーを届けることで、大きな冷凍原料でも短時間で解凍できることを可能にします。解凍ムラやドリップロスを抑えられる点が、品質を重視する食品加工現場で大きな価値となっており、同社の技術は食品分野でも十分に活躍する技術だったのです。
約30年にわたる改良を支えた部門横断の連携
一方で、現在の装置の完成に至るまでには、約30年にわたる改良・改善の積み重ねがありました。今回の受賞メンバーは7名ですが、営業、技術開発、商品開発、機械設計、制御プログラム、製造、試験評価など、複数の部門が関与しているだけではなく、その背後には、退職者を含め、長年にわたり多くの社員のたゆまぬ努力がありました。
「受賞メンバーとして名前が出ている人だけでなく、実際には長い年月の中で多くの社員が関わってきました。営業が拾った現場の声を、技術や製造が形にしていく。その連携があって今の装置があります。」
同社の開発の歴史を現場、そして経営の立場から見てきた山本社長はそのように振り返りました。
市場環境の変化が高める解凍技術への期待
さて、「高周波解凍装置」自体は、開発当初から広く受け入れられたわけではありませんでした。以前は、冷凍原料は自然解凍すればよいという考え方も強く、高額な設備を導入する意義が十分に理解されづらい時期もありました。しかし近年、フードロス削減、品質管理、衛生管理、省人化などの観点から、解凍工程の重要性は高まっています。
「食品加工の現場では、品質を落とさず、短時間で、誰でも扱いやすく解凍できることが求められています。解凍工程を改善することは、現場全体の効率化にもつながります。」
山本社長の言葉には、同製品の「役割」そのものが表現されています。社会的な変化の中で、同社は、この装置を「単なる設備」ではなく、「食品加工現場の工程改善を支えるソリューション」と位置付け、その価値を提供してきたのです。
海外展開と、誰でも使える装置への進化
同社は、中国、タイ、韓国、台湾、香港、シンガポールなど、アジア地域での展開も視野に入れています。食料自給率が低く、冷凍原料を輸入に頼る国・地域では、冷凍原料の解凍工程が食品加工の重要な課題となるためです。
こうした展開と併せて、今後の技術開発で同社が目指しているのは、「誰でも簡単に使える装置」です。食品加工現場では、パート・アルバイトや外国人労働者など多様な人材が装置を扱うため、細かな条件設定に頼りすぎない使いやすさが求められています。
これからの展開について、井口さんは次のようにお話しになりました。
「最終的には、ボタン一つで最適に解凍できる装置を目指しています。食品の重量や形状、過去のデータをもとに、機械側が最適な条件を判断できるようにしていきたいと考えています。」
現在のVシリーズでは、センサーを活用して食品の重量や形状を把握し、過去のデータベースをもとに機械側が適切な設定を行う方向で改良が進められています。将来的にはAIも活用し、食品の種類や状態、加熱中のデータをもとに、より自動的に最適条件を判断できる装置を目指しています。
参考:Vシリーズの自動化レベルについては、同社コーポレートサイトのVシリーズ紹介ページもご参照ください。
ものづくり日本大賞受賞がもたらした誇り
今回の近畿経済産業局長賞の受賞について、同社では、技術者や社員が自分たちの仕事を社会的に評価され、広い立場から認められたことを大きな励みとして受け止められています。顧客から評価されることに加え、公的な表彰として認められることは、社員にとって特別な意味を持つものとなりました。
社外からも、取引先や協力会社などから祝意が寄せられ、ものづくり日本大賞を知る関係者からもお祝いの胡蝶蘭を多数いただいたと、笑顔でお話しくださいました。
「今回の受賞は、社内にとって大きな励みになりました。社外に技術を伝えるうえでも後押しになった出来事だと感じています。」
今回の受賞は、顧客の困りごとに向き合い、部門を越えて改善を積み重ね、社会的な課題にも応える技術として育ててきた同社メンバーのものづくりの姿勢そのものが評価されたものといえます。
山本ビニターは、これまで培ってきた高周波誘電加熱技術を生かし、食品加工現場の品質向上、省人化、衛生管理、フードロス削減といった課題に向き合っています。今回の受賞対象は食品分野における高周波解凍装置ですが、同社の技術は、もともとの出発点であるビニールシート溶着をはじめ、木材、医療など多様な分野にも応用されています。約30年にわたる食品解凍装置の改良の積み重ねと、分野を越えて培ってきた誘電加熱技術の知見を生かし、今後もさまざまな現場の課題解決に貢献していくことが期待されます。
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- 近畿経済産業局 公式note