東京科学大発elleThermo シリーズAで8.3億円調達、未利用熱を電力に

東京科学大学発スタートアップのelleThermo(エレサーモ、東京都港区)は2026年8月26日、シリーズAラウンドで総額8億3000万円を調達したと発表した。第三者割当増資によるもので、累計調達額は約12億円となる。

同社は、未利用熱による発電システムを開発する企業。「半導体増感型熱利用発電(Semiconductor-Sensitized Thermal Cell、STC)」という、色素増感太陽電池の原理を応用した熱エネルギー変換技術を用いる。化学系太陽電池である色素増感型太陽電池の「色素の光励起」を「半導体の熱励起」に変えて発電するものだ。

調達した資金は、STCセルの要素技術向上やスケールアップ、商用プロトタイプ開発などの研究開発費、パイロット生産設備への投資、研究開発・エンジニア・事業開発部門の人材採用に充てる。2027年度までにパイロット生産向けの試作ラインを立ち上げる計画だ。

STCは熱から直接発電できる点が特徴で、約30〜60℃の中低温域を対象とする。日本の未利用排熱の多くはこの低温域に集中しており、これまで回収手段が乏しかった領域にあたる。工場排熱やデータセンターに加え、温泉・地熱、家電、太陽光熱、モビリティなど幅広い熱源への適用を見込む。

elleThermoでは社会実装に向けた検証も進めている。2025年5月にはKDDIと協力して、データセンターで用いるサーバーの液浸冷却システムの排熱をSTCで電力に変換する実証実験に成功した。現時点の発電出力は単セル当たりミリワット級だが、今後はセルの積層化・大面積化でワット級を実現し、50W級の「サーモパネル」の商用化を目指す。

今回のラウンドはSpiral Innovation Partners(森ビルイノベーションファンド、KRAFTIA Innovation Fundを運営)がリード投資家を務めた。既存投資家として慶應イノベーション・イニシアティブ、ヒューリックスタートアップ、環境エネルギー投資、みずほキャピタル、KDDI Green Partners Fund、Sony Innovation Fundが追加出資し、新規にJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、タクマが加わった。

Spiral Innovation Partnersは「データセンターを一例とした電力需要の高まりも受けて、電力創出における未利用熱活用はエネルギー領域における重要テーマとなりつつある」とコメントを寄せている。