業務の中で自然に使われるAI テックタッチの「新・行政DX」
政策と共通基盤をめぐる前段の議論を受け、テックタッチの中西直貴氏が登壇。生成AIの「導入」は進む一方で「実装」が滞る行政現場の課題を整理し、既存システムを刷新せずにAI化する進め方を提案した。
テックタッチ株式会社
公共・公益事業部 中西直貴氏
AIの「実装」を阻む3つの課題
テックタッチ株式会社は2018年設立、企業のシステム活用を支援するデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)を提供。大手民間を中心に600社超の導入実績をもつ。
中西氏はまず自治体の現状を整理した。総務省の調査で生成AIの導入率は都道府県で約9割、指定都市で9割を超えるが、活用はあいさつ文の作成や議事録の要約にとどまる。業務そのものを変える「実装」段階に進んでいるとはいえない。
要因は大きく3つだ。第1に、職員向けにChatGPTなどのチャット型AIやAIエージェントを設けても、業務システムとは別画面で使う手間から、利用が定着しない。第2に、生成物の正確性や機密情報流出への懸念、導入効果の不透明さから、業務の効率化・自動化が進まない。第3に、AI活用をリードできる人材が不足している。
「システムへの財源や人手不足で、再構築を求めるのは現実的ではありません。既存システムをそのままAI化するという方法で、AI実装を進めていくのが望ましいといえます」。
業務画面にAIを埋め込む
そこでテックタッチが提案するのは、Webシステムの画面上に操作ガイドを重ねるDAP「テックタッチ」と、既存システムを改修せず生成AIを画面内に組み込む「テックタッチAI Hub」だ。いずれも後付けで導入でき、システムの再構築を伴わない。
画面の文脈を自動で読み取るためプロンプトは不要で、入力支援や規程との照合、問い合わせ文の自動作成までを業務画面の中で完結させる。設定はノーコードで現場職員自身が行えるため、情報システム部門への丸投げにならず、作成したガイドやプロンプトは組織内で横展開してノウハウとして蓄積できる。
システム刷新の余力がないという制約を回避しつつ、チャットボットが使われない・効率化が進まない・人材が足りないという3つの課題に応える。
「AIを別画面へ『使いに行く』のではなく、業務の中で自然に『使われる』状態。これが我々の目指すAI実装の姿です」。
迷わない、つまずかない行政運営へ
公共・民間の導入事例も紹介した。川崎市の電子申請では申請不備率が最大81.7%改善。磐田市の財務会計では問い合わせと返戻がそれぞれ約3割減り、年間約8900時間の業務時間を削減、職員の約96%が翌年度以降も必要と回答した。
民間企業では、大手食品メーカーが通勤費申請の入力を「テックタッチAI Hub」で支援している。1件あたり7割以上の時間短縮を見込む。
「業務システムにAIを埋め込む『テックタッチAI Hub』のアプローチは、すでに浸透し始めている既存のチャット型AIとは役割が異なります。競合するのではなく、チャット型AIではかなわないことを補完します」。
中西氏は、ガバメントクラウド上のシステムにとどまらず、閉域網にある住民基本台帳や税システムなどでもDAPを「使いこなし基盤」として活用できるよう調整を進めていることにも触れながら、職員が操作に迷わず、住民も手続きでつまずかない次世代の行政運営を全国へ広げたいと展望を語った。
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